マツダ RXエボルヴ(1999年東京モーターショー)→RX-8(2003年)

マツダRX-8については、往年の人気テレビ番組「プロジェクトX」でも取り上げられたほど、マツダにとっては特別な存在である。件の番組では、フォードグループの一員にマツダがなった時点で、ロータリーエンジンがまさに「存亡の危機」となり、エンジニア有志が、「ヤミ研(ヤミ研究の略で、会社には黙って独自に開発を進めることらしい)」を続けているなか、マツダの社長として1999年12月に赴任したマーク・フィールズ現フォード北米担当社長から、正式にゴーサインが出た様子が描かれていた。

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フォードとの関係のなか1999年の東京モーターショーで出展されたRXエボルヴは、2003年にRX-8として市販化されたのであった

ロータリーエンジン史の流れを汲み開発

マツダRXエボルヴ 内装| 日刊カーセンサーRX-8の原型となったコンセプトカー「RXエボルヴ」は1999年の東京モーターショーに出展された。全長4285×全幅1760×全高1350mm。654㏄×2水冷直列2ロータリーエンジンは、280馬力を発生。タイヤサイズはなんと20インチを採用。薄型HIDヘッドランプなどで、コンセプトカー風ないでたちとなっているが、市販前提とも思える完成されたプレスラインをもっている。

当時の某雑誌では「市販化度50%」としていた。プレスラインはほぼ量産レベルだったので、ショーでの来場者の反応次第で市販するということだったのかもしれない。

RXと聞いて40歳以上の人なら「RX-7」をまず連想するはず。1972年に12Aロータリーエンジンを搭載した、初代サバンナGTが「RX-3」と呼ばれていた頃、マツダは「フルラインナップロータリー」と言わんばかりに、ファミリアクーペやサバンナワゴンなど、当時のマツダ車ほぼすべてにロータリーエンジンを設定した。

しかし、その後のオイルショックでロータリーエンジンは影を潜める。そして1978年に一般的には「SA」と呼ばれる初代RX-7がロータリーエンジンを搭載してデビューする。その後1985年に2代目となる「FC」になり、1991年に3代目となる「FD」が登場した。RXエボルヴは、そんなロータリーエンジンの歴史を受け継ぎながら開発されたコンセプトカーであった。

RX-7の後継ではないRX-8

マツダ RX-8 エンジン | 日刊カーセンサー2002年にFDの生産が終了し、約1年後にRX-8がデビューした。

スペックは全長4435×全幅1770×全高1340mm。塔載される13B-MSP 654㏄×2ロータリーエンジンは250psを発生。ちなみにロータリーエンジンの排気量は「654×2=1308㏄」ではなく、自動車税などの課税に関しては、「654×2×1.5=1962㏄」と係数をかけて換算するので、一般的には2Lクラス車扱いとなる。しかしRX-8は、単純にRX-7の後継とは呼べない。

RX-7が2ドアクーペであるのに対し、RX-8は4ドアスポーツクーペとなっているからだ。一見すると2ドアクーペ風なのだが、フロントドアの後ろには、逆ヒンジタイプのリアドアが存在する。このあたりはフォードが市販にゴーを出す際の、「妥協の産物」なのではないかと当時は思った。

現在世界で量産車にロータリーエンジンを搭載しているのはマツダだけ。ロータリーエンジンを「マツダの顔」と表現する人もいるが、現在ロータリーエンジンの搭載はRX-8のみで、RX-8のノウハウがほかのマツダ車に直接影響を与えている印象はない。ただし世界市場ではRX-8の存在が影響しているようで、「スポーティなマツダ」という一致したイメージをもたれている。事実デミオからアテンザ、MPVまでマツダの車はスポーティなイメージが強い。

デビュー後なかなか試乗する機会に恵まれなかったのだが、2008年のマイナーチェンジモデルになって初めて試乗した。運転操作は特別な印象は受けなかったが、車内に入り込むロータリーエンジン独特のエンジン音は、特別なものを感じさせた。冒頭で記した「プロジェクトX」の少々ドラマチックにすぎると思える演出も、このエンジン音を聞いていると、自然なものに思えてくるから不思議である。

いまやロータリーエンジンは「水素ロータリーエンジン」の時代を迎え、「スポーツエンジン」から「環境対応エンジン」へ大きく変わろうとしている。そして、経営面においても、フォードの持ち株比率が1996年には33.4%まで上昇したが、2008年には13.8%となった。フォードとの協力関係も、時代の状況とともに変化している。