スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

ドラマから映画の流れはもはや定番。せめてあと少しだけ映画愛の注入を!

HERO|映画の名車
(C) 2007 フジテレビジョン・東宝・J-dream・FNS27社
『HERO 特別限定版(3枚組)』(DVD・発売中)2007年・日 監督:鈴木雅之 出演:木村拓哉/松たか子/大塚寧々/阿部寛/勝村政信/小日向文世/八嶋智人/角野卓造/児玉清/松本幸四郎/森田一義/中井貴一/綾瀬はるか/国仲涼子/香川照之/岸部一徳ほか 販売:東宝 ¥8,190(税込)
テレビドラマから映画への流れはもはや定番になった(最近はマンガ→ドラマ→映画の流れも多いが)。高視聴率を上げたドラマを映画化するのだから、すでに固定ファンは相当数おり、一定の集客が見込める間違いのないコンテンツとして配給会社も重宝している。この流れは10年前に公開されてメガヒットを飛ばした『踊る大捜査線 THE MOVIE』から。それまで暗い暗い冬の時代を何年も過ごしていた日本映画界にとって、突然の光明が『踊る~』だったのだ。以後、『ケイゾク』『トリック』『スカイハイ』『木更津キャッツアイ』『アンフェア』…と、数多のドラマがスクリーンに登場することになるのはご存じのとおり。今年も『クロサギ』『花より男子』『相棒』の劇場版が大ヒット。来年も『ROOKIES』『SP』というデカいタイトルが控えている。

昨秋公開された木村拓哉主演の検事モノ『HERO』は、2001年1月から3月にかけてフジ系月9枠で放送された連続ドラマの映画化だ。他の作品のように人気絶頂期に劇場版を製作したのではなく、6年も経ってから公開するというのは異例なことだった。ただ、一作年にスペシャル版を放映してワンクッション入れ、そのストーリーを少しだけ引き継ぐ形をとっている。もともと平均視聴率34%(関東地区)というオバケコンテンツ。映画も当然メガヒット。興行収入は80億円を超え、2007年の日本映画で首位を奪取した。

6年ぶりに山口から東京に戻ってきた久利生公平(木村拓哉)。東京地検・城西支部の面々は相変わらずである。ある日、自らの離婚調停中で忙しい芝山貢(阿部寛)の代役として、とある傷害致死事件の公判検事を任されることになった久利生。容疑者の梅林圭介(波岡一喜)も自供しており、簡単に解決すると誰もが思っていた。だが、裁判時に梅林が一転して無罪を主張したことで事態は急変する。梅林を弁護しているのは刑事事件無罪獲得数日本一の辣腕弁護士・蒲生一臣(松本幸四郎)。この傷害致死事件は、大物代議士の収賄事件が密接にリンクしていたのだ…。

正直に告白すると、筆者はこのドラマの門外漢。全くサラの状態で劇場版を見たのだが、それでもストーリーは独立しているし、キャラクターの個性を説明する台詞が随所で挿入されるので、戸惑うことはなかった。出世に興味のない無頼の茶髪検事が、結婚を目前に控えていた新郎を殺された花嫁のために、なんとしても犯人=梅林を有罪にすべく奔走。一方、大物代議士を助けるべく見え見えの傷害致死をなかったことにしようとするヤリ手の弁護士・蒲生は存在感あふれるヒールだ。この対立構図がハッキリしているだけに、法廷モノとしてなかなか楽しめた。

とはいえスタッフもキャストもほぼドラマ版を踏襲しているので、多分にテレビ的。ドラマシリーズから引き継いでいるのであろう意味不明な細かいギャグの数々には目をつぶるとして、一番の「?」は微妙な関係を続ける久利生と雨宮(松たか子)が事件のカギとなる車を探しに韓国へ飛ぶ一連の場面。「一介の検事がここまでするか!? 」という点でまずリアリティが薄まっていくのだが、ここまでは許容範囲。いただけないのは、もったいぶって登場したクセに、ほとんどマトモに機能していないイ・ビョンホン演じる韓国の検事カン・ミンウだ。ほんの短時間、久利生と雨宮に接しただけで意味深な言葉を残して去っていくことになるのだが、これが本当にとってつけたような感じ。友情出演とはいえ、もう少しちゃんと物語に絡ませないと、クライマックスのアレも効いてこないと思うのだが。だいたい誰との“友情”で出演なんだかなぁ…キムタク!? さらには大物ゲストとして登場するタモリも不要だったと思う。タモリが登場するだけで、映画ではなくテレビの世界に観客が強引に引き戻されるからだ。

こういった蛇足の積み重ねが実にテレビ的。まあ、ドラマの熱狂的ファン以外はわざわざ劇場でこの作品を観ることもなかっただろうが、仮にもシネスコで撮って“映画”として世に送るのならば、テレビ的な尺度だけで製作するのは避けてほしかった。個人的にはドラマの映画化にそれほど目くじらを立てているわけではなく、むしろ普段劇場に足を運ばないような人をもあの暗がりに招待してくれると歓迎はしているが、「これならテレビのスペシャル版でいいじゃん」と思われては本末転倒。「また映画館に来たい!! 」と思わせてくれなければ困るのだ。今後もまだまだドラマの映画化は続いていくことだろう。製作サイドはスクリーンを目一杯使って、もっともっと観る者を楽しませてほしい。

映画に登場する車たち

サンヨン コランド

サンヨン コランド|映画の名車
キムタク演じる久利生と松たか子演じる雨宮のコンビが傷害致死事件の証拠を探しに釜山に向かった際に登場するのが、イ・ビョンホン演じる韓国の若手ナンバー1検事カン・ミンウ。雨宮が謎の男たちに拉致され、車で連れ去られそうになった際に、ゴツい車でビシッと道を遮り颯爽と降りてくるシーンは、さすが韓流四天王のひとりビョン様、貫禄たっぷり。このカン検事の愛車がチラリとしか登場しないわりになかなかの存在感。調べてみたところ、これは韓国のSUVメーカーであるサンヨン製のコランドという4駆だった。もともとは軍用に開発・生産されていたものを一般用におろしたので、非常に頑丈。エンジンはM・ベンツ製の2.3Lを搭載している。現在は後継車のアクティオンが発売されてコランドは生産を中止しているうえ、日本でも正規輸入はしていないので、なかなかお目にかかることのできない希少車だ。
なお、正規輸入は行われていないが、並行輸入で日本に入ってきていることがあるので、下の検索窓に「サンヨン コランド」と入れて探してみてほしい。
 


Text/伊熊恒介