スクリーンを飾ったあの名車、少ししか映らなかったけれど忘れがたい車…
そんな映画に登場した“気になる車”をカーセンサーnetで見つけよう!

デンゼル・ワシントンがイカついアメ車を乗り回す悪徳ポリス役を怪演!

トレーニング デイ|映画の名車
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DVD『トレーニング デイ』(発売中) 2001年・米 監督:アントワーン・フークア 出演:デンゼル・ワシントン/イーサン・ホーク/スコット・グレン/トム・ベレンジャー/クリフ・カーティスほか 販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ 1,500(税込)
デンゼル・ワシントン演じるドラッグ専門のベテラン黒人刑事と、イーサン・ホーク扮するピカピカのルーキー刑事がタッグを組んだポリス・アクション!! このキャッチを読む限り、ほとんどの方は万人受けするお決まりのストーリーが頭に浮かぶことだろう。“ベテラン刑事の汚いやり方に難色を示していた正義感あふれる青年刑事が、行動を共にするうちに彼の真意に触れ、数々の事件に巻き込まれながら大きく成長、最後はがっちり握手して名コンビ誕生!! ”なんてね。

この『トレーニング デイ』も、序盤は上記のようなベタなストーリーを漂わせるが、徐々に雲行きが怪しくなっていき、とんでもない展開が待ち受ける。ここまでの300字弱で興味をひかれ、「いっちょDVDをレンタルしてみようか」という気になったアナタは、微弱なネタバレを含む以下のテキストをひとまずスルーしてほしい(観終わった後に読んでね)。

舞台はロサンゼルス。念願の麻薬捜査課に配属されたジェイクは、大物麻薬王を摘発しまくっている憧れのベテラン捜査官のアロンゾの部下として配属された。ポリスカーではなく、自前のアメ車(シボレー・モンテカルロ)に乗り込み、「ここが俺たちのオフィスだ。この車、セクシーだろ!? 」と初っ端からかますアロンゾに気圧されるジェイク。その後もアロンゾはジェイクの正義感をからかうような発言を繰り返し、あまつさえ、学生から押収したマリファナを吸引するよう強要する。「麻薬捜査官たるもの身体で覚えないとダメだ」と言うのだ。さすがに「それはできない」と拒否をしたジェイクに銃を突きつけたアロンゾは、「吸えないのなら、とっととデスクワークに戻れ、クソガキ!! 」と突き放す。しかたなくパイプに火を点けるジェイクを横目に、不敵に笑うアロンゾだった…。

普通の展開ならば、葉っぱを吸わせることにもアロンゾなりの潜入捜査官極意が隠され、清濁あわせ飲むくらいの覚悟でないとドラッグを取り締まることなんてできないのだ…とジェイクが気づいていくことになるのだろうが、本作は違う。その後もアロンゾは暴走を続け、さすがに何かがおかしいぞ!? と観客に思わせ、終盤のドンパチにつなげていくのだ。このあたりの脚本、演出が実に巧い!!

だが、本作が成功した最大のポイントは、デンゼル・ワシントンが悪役に初挑戦したことだろう。彼のどこか優しそうな目が「悪者であるはずがない」と観客をミスリードし、え、マジで!! そういうことだったの!? と、ハラドキを助長してくれるのだ。もちろん、その演技には文句のつけようもなく、本作で黒人として2人目のオスカー(主演男優賞)をゲットしたのも納得である。

一方、デンゼルの引き立て役に回ってしまったイーサンではあるが、実はこうした役こそが彼の持ち味を発揮しているのである。観客目線となって感情移入をスムーズにしてくれる俳優は貴重な存在であり、多様な役柄をこなせるユーティリティプレイヤーとして、今後もハリウッドで活躍し続けることだろう。考えてみれば本作のジェイクは本当に悲惨な役回り。徹底的にアロンゾに引っ掻き回され、人生最良の日をぶっ潰されたのだからたまらない。勝手に邦題をつけさせてもらえるなら『イーサン・ホークの一番長い日』ってのを提案したい。うーん、これじゃ誰も観てくれないかな…。

映画に登場する車たち

シボレー モンテカルロ

シボレー モンテカルロ|映画の名車
1970年に2ドア専用モデルとして登場したシボレー初のラグジュアリィクーペ。デンゼル・ワシントン演じるアロンゾは、1978年式をローライダー仕様で乗り回している。カラーはブラック。「セクシーだろ!? 」などと大威張りするだけあって、ピカピカに磨き上げられたモンテカルロがLAのダウンタウンによく似合う。これくらい威圧感のある車でないと、ギャングになめられてしまうということで選んだのだろう。だが、物語が進むにつれてこのモンテカルロもボロボロになっていき、アロンゾと共に悲劇的な結末を迎えることとなる。いわばモンテカルロはアロンゾの分身として描かれているのだ。主演俳優と同等の強い存在感を残してくれたモンテカルロの名演に拍手!!

Text/伊熊恒介