▲普通に走っていると凡庸なワンボックス。だけど屋根が開いてキャンピングガーになっちゃう! 平成7年はRV百花繚乱の時代だった ▲普通に走っていると凡庸なワンボックス。だけど屋根が開いてキャンピングガーになっちゃう! 平成7年はRV百花繚乱の時代だった

世紀末感がハンパなかった

平成7年、1995年は災難続きの1年でした。

今思い返しても、こんなにいろいろなことが1年の間にまとめて起きちゃうなんて!

と信じられないくらい。

1月17日の明け方に発生し、未曽有の被害を出した阪神淡路大震災。

高速道路が倒壊しちゃうなんて、思いも寄らなかった。

全国の高速道路や橋脚、公共建築物などが耐震補強されるきっかけにもなりました。

そして地下鉄サリン事件をはじめとする、オウム真理教による一連のテロ。

この1年の世相を表す漢字は「震」(ちなみに日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」が始まったのは、この平成7年から)。

そんな悲しい記憶から、かれこれ24年です。

コギャルに野茂にEAST END×YURI

昨年引退したアムロちゃんがファッションリーダーとなり、茶髪に厚底ブーツのコギャル文化をけん引していた時代です。

メジャーリーガーになった野茂英雄投手も、テニスの松岡修造選手や伊達公子選手も現役バリバリ(伊達選手は1回引退した後に復帰したけど)だった。

この年のヒットメーカーといえば、EAST END×YURI(イーストエンド プラス ユリ)の『DA.YO.NE』……。

あまりにハルマゲドンな世相に対して、能天気な曲を歌って気を紛らわせるのは、幕末の「ええじゃないか」とも通じる気がします。

さて、その頃ワタシは、ついに学校を卒業して社会人に。

自動車専門の小さな出版社だったけど、その頃から今まで飽きもせずに同じように記事作ってるってスゴくない?(ある意味、進化がない)。

▲米が一部貿易自由化されたのが、この頃。え、その前は自由じゃなかったの? と若い世代の方は驚くことだろうだろう。今でも普通に関税かかってるけどネ ▲米が一部貿易自由化されたのが、この頃。え、その前は自由じゃなかったの? と若い世代の方は驚くことだろうだろう。今でも普通に関税かかってるけどネ

混乱する世相と相反して、この年に登場した車は大豊作。

RVブームは順調に続いていて、SUVやワゴン、ミニバンの新型ラッシュとなりました。

個人的に印象に残っているのは、日産のステーションワゴン、初代『アベニール サリュー』。

車の内容がどうこうじゃなくて、松嶋菜々子のTV-CMがとんでもないインパクトだったから。

ボディコン姿でリアハッチから乗り込んできて、シートバックを大股でまたいで、「お・ま・た」って耳元に囁いちゃう!

今ではあんな内容のCM、絶対に流せない。

さて、それでは1995年に登場した新型車のランキングを発表します。インパクト重視(CMの、ではなく)、ワタシの主観全開で選びました。

▲コンパクトデジカメが急速に普及してきたのも、ちょうどこの頃。写真を撮ることのハードルは劇的に下がった ▲コンパクトデジカメが急速に普及してきたのも、ちょうどこの頃。写真を撮ることのハードルは劇的に下がった

洗練されたスタイルは当時、画期的だった

▲今見るとゴッツイけど、当時の四駆としてはスマートな部類だった日産 テラノ。グリルガードを装着した姿はちょー懐かしすぎて涙ちょちょぎれ ▲今見るとゴッツイけど、当時の四駆としてはスマートな部類だった日産 テラノ。グリルガードを装着した姿はちょー懐かしすぎて涙ちょちょぎれ

第3位は、日産・2代目テラノ。

SUVといえば、まだまだヘビーデューティ全盛のイメージだった時代に、スマートな外観と乗用車ライクな乗り味で登場したのがテラノでした。

4WDシステムは、現代のSUVで主流となっている電子制御トルクスプリット式。

後席ドアハンドルをCピラーにブラックアウトして埋め込み(これは初代も同じ)、2ドアのように見せるなどデザイン的にも凝っています。

ちなみにトヨタの3代目ハイラックス サーフも1995年の登場ですが、個人的にはあらゆる面で、より洗練されていたテラノの方が好み。

今回選んだのは、他の記事でめったに登場しないから、という理由もあります。

2002年には生産終了してしまいましたが、その“ちょうど良さ”は今でも魅力的です。

▲テラノは海外でも人気で、北米などではパスファインダーの名前で販売されていた ▲テラノは海外でも人気で、北米などではパスファインダーの名前で販売されていたた

3ボックススタイルのSUVは今みても新鮮!

▲エスクードのシャーシーにかわいらしいボディを載せて登場したスズキ X-90 ▲エスクードのシャーシーにかわいらしいボディを載せて登場したスズキ X-90!

続いて第2位。こちらインパクトという意味で、いすゞ ビークロスにも負けてません、スズキのX-90。

同社エスクードのメーカー純正ボディ・スワップだけともいえる車だけに、構造は伝統的なラダーフレーム、4WDシステムも本格的な副変速機付き。

それでも従来の4WDとは全く違う外観は、世界初のCUV(クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル)と言っていいんじゃないでしょうか?

それにしても2シーター+トランクの3ボックス・スタイルは斬新すぎ!

街ですれ違ったら二度見しちゃうほどの個性的スタイル。

こんな消える魔球ばりの変化球的な車が平然と登場するあたりも、当時いかにRVが盛り上がっていたかが分かるでしょう。

いつでもどこでもキャンプ場になっちゃう

さあ、平成7年のインパクト大賞は……マツダ ボンゴフレンディに決定!

ぶっちゃけ中身は古式ゆかしいキャブオーバー型ワンボックスなんだけど、オートフリートップなる機構を備えたグレードを用意していたのがポイント。

これ、スイッチ操作ひとつで屋根上にテントが展開し、大人2名が余裕で横になれる就寝スペースが生まれる、という優れモノなんですよ。

テント部分には車内からアクセスできちゃう。

キャンピングカーの一様式として以前からあったスタイルなんだけど、それをメーカーがグレードのひとつとして出しちゃうところが革新的でした。

▲テント部分には車内から、よじ登ってアクセス。寝るときもアクセスホールから物を受け渡しできるなど、よくできたキャンパーだった ▲テント部分には車内から、よじ登ってアクセス。寝るときもアクセスホールから物を受け渡しできるなど、よくできたキャンパーだった

意図的に選んだワケじゃないのに、今回のトップ3はすべてRV。

他にも3代目ハイラックス サーフや初代CR-V、初代パジェロジュニアなど印象的な新型車が多数登場したのが平成7年という年でした。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、スズキ、日産、マツダ、Adobe Stock