欧州と日本におけるディーゼル事情をVW不正事件を機に考える
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2015/10/05
VWディーゼル不正事件を生んだのは世界販売台数1位への執着
自動車業界を震撼させたVWのディーゼル排出ガス不正事件。この背景には、世界販売台数1位への執着がある。
VWは中国を中心として販売を依存しており、安定した基盤で実績のあるトヨタ自動車とは対極にあった。VWは米国での販売割合を伸ばし安定した販売台数を獲得するため、「TDI」というプレミアム性を持たせたディーゼルターボを送り込んだ。大衆車でありながら米国の厳しい規制に挑んだが、結果として既存のエンジンでは規制をクリアするのは難しかったのだ。
プレミアムなディーゼルが主流な中、低価格なマツダのディーゼルは素晴らしい
そもそも欧州においてディーゼルエンジンの立ち位置はじゃっかん日本とは異なる。かつては「経済的なもの」とされていたが、現在では「プレミアムなもの」として捉えられているのだ。
欧州では日本で問題になったPM(粒子状物質)を抑える方向性で開発を進め、その後、NOx(窒素酸化物)を抑えるエンジンに移行した。日本とは全く逆の流れでディーゼルエンジンが発展したのだ。逆にNOxの規制を重要視した日本では、乗用車用ディーゼルエンジンは衰退した。
細かい説明は省くが、PMとNOxは片方を削減するともう片方が増加するというトレードオフの関係にある。この問題は高価な後処理装置を使えば解決も可能だが、本質的にはエンジンの改革が必須だった。例えば、パイロット噴射による燃焼とEGRをパラレルで用いて性能低下を防ぐ方法がある。またターボを搭載することでNOxも低減できる。
そういった中でも、代表的なのが尿素を使ったNOx低減方法だ。しかし、これを用いることができるのは車体が大きい、ないし高価な車種に限られる。メルセデスは大型モデルには尿素を使っているし、BMWにいたっては6気筒のディーゼルに尿素を使ってNOxを低減、さらに4気筒では後処理装置に高価なNOx吸蔵触媒を使い、PMにはフィルターを使って対応している。
プレミアムブランドなら、商品が高価でも売れる。そのため、高性能の触媒を使って日本のポスト新長期規制にも対応した。それらの点から、メルセデスとBMWは単純な利益よりも日本で販売を成功させることを戦略的に優先していること、ディーゼルをASEANに広げようと試みていることが推測できる。
しかし、日本にも乗用車用ディーゼルエンジンの雄はいる。そう、マツダである。価格を抑えながら厳しい規制をクリアした燃焼技術は素晴らしく、立派な牽引を果たしている。圧縮比を上げなければ自然着火しないディーゼルエンジンをガソリン並みの圧縮比で着火させ、燃焼温度を下げてNOxを規定内に収めた。まさに抜本的な見直しによって造られたエンジンなのである。
今まで日本は国々に適合させて排出ガス規制をクリアしてきた。その甲斐あってサプライヤーの技術力は世界屈指である。日本は車検制度がある厳しい国だ。だからこそ後ろ指を指されない技術を持って販売しているのだ。