今なぜ輸入ディーゼル車が好調なのか?その背景を解説
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2015/08/05
輸入車の「クリーンディーゼル」が素晴らしい理由とは
首都圏を中心としたディーゼル車規制に端を発して、国内ではディーゼルエンジン乗用車がほとんど絶滅していました。一方、欧州ではディーゼルが隆盛。その欧州からディーゼル乗用車が日本に入ってこようとしています。なぜ輸入車は、こんなにも「クリーンディーゼル」が発達したのか? その理由を順を追ってご説明します。
アウトバーンを2400km走ってディーゼルの魅力を実感しました
2006年、ドイツのアウトバーンを2台のレンタカーで2400kmほど走りました。どちらもBMWの旧型3シリーズ(E90型とも呼ばれます)でしたが、1台は320i、もう1台は320d。いずれも排気量は2Lでしたが、前者は自然吸気のガソリン、後者はディーゼルターボでした。
6人が分乗したわけなのですが、「BMW=駆け抜ける歓び=ガソリン」というイメージが強く、ほとんどのクルーが320iに乗りたがったわけです。ところが2日目から変化が……。320dに人気が集中。理由は高速巡航中でもエンジン回転数が320iに比べて低いので結果として疲れにくく、車内で会話もしやすかったからです。また、ステアリングを握っても厚いトルクで運転がラク。ちなみに200km/h以上で航続することもありました。
ドイツ北部にあるアーヘンという街で、BMW正規ディーラーに立ち寄りました。営業マンが言うには、「新車販売のうち半分以上がディーゼルだ」と。多少の地域性はあったかもしれませんが、当時すでに欧州ではディーゼルが大人気であり、そのことを体感&実感したわけです。
欧州と日本、どうしてこうもディーゼルへの評価が分かれた?
欧州と日本とではディーゼルエンジンに対するスタンスが少し違いました。欧州は地球温暖化に影響する「二酸化炭素」の排出量が少ないことをメリットとして捉えたの対して、日本は光化学スモッグなどの原因になる「窒素酸化物」や発がん性物質である「粒子状物質」の排出を主に問題視したのです。この違いが、両者の規制の違いとなりました。
ディーゼル規制が厳しくなってきている欧州において、2009年にはユーロ5と呼ばれる規制が実施されました。これは、窒素酸化物は0.18g/km以下、粒子状物質は0.005g/km以下に収めよ、というものでした。ところが2005年に実施されていた日本の「新長期規制」では、窒素酸化物が0.14g/km以下、粒子状物質が0.013g/km以下にしなければならなかったのです。
そのため、欧州で人気を集めるディーゼル車の多くは、そのまま日本に持ってきても基準をクリアできなかったのです。そもそもディーゼル車はガソリン車に比べても二酸化炭素の排出量は少ないといった特徴があります。
事情が変わろうとしているのは、2014年のユーロ6と呼ばれる新規制が窒素酸化物は0.08g/km以下、粒子状物質は0.005g/km以下となったからです。これは2009年から実施されている日本の「ポスト新長期規制」(窒素酸化物は0.08g/km以下、粒子状物質は0.005g/km以下)と合致するものでした。
つまり、欧州で人気のディーゼルエンジンが日本へ上陸する土壌が整ったことになります。最近では、ボルボ・カー・ジャパンが日本におけるラインナップをディーゼル中心にすると宣言したことが鮮烈でした。
続々と上陸する最強のディーゼル軍団。日本のメーカーも迎撃態勢へ?
メルセデス・ベンツは2.2L直4ディーゼルターボなど「BlueTEC」エンジンを充実させてきている他、BMWは「5シリーズ」のディーゼルエンジン搭載車を値下げ。約60万円近く下がったグレードもあります。
フォルクスワーゲンは新生「パサート」にディーゼルをラインナップすると発表しており、ジャガーも日本デビューさせたミドルセダンの「XE」にもディーゼルを追加するとしています。
日本自動車輸入組合は先月の記者会見で、2015年の輸入車(日本メーカー車除く)販売は「30万台超えが視野に入ってきた」と述べました。その「30万台超え」を牽引するのが実はこのクリーンディーゼルなのです。
エコロジーであることは前提としながら、燃費が良いだけでなく、厚いトルクでパワフルな走りをしてくれる。これがディーゼルエンジンの新常識。クリーンディーゼルの正体です。かつての悪しきディーゼルイメージを払拭し、我々ドライバーの厚い支持をギューッと集めるのは間違いなさそうです!