仕事に余裕を家族に自由をもたらしたのは、CONTAXのフィルムカメラのような2代目ステップワゴン
2020/08/25
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
マイカーの必要性は切実だった
様々なファッション媒体や著名人のポートレート撮影などで活躍中のフォトグラファー、玉村敬太さん。彼が仕事グルマ兼自家用車として稼働させている2代目ホンダ ステップワゴンを購入したのはつい最近、今年6月のこと。
だが3年前にフォトグラファーとして独立した頃から、「自分の車」は強烈に欲しいと思い続けていた。
クオリティの高い写真を撮るために必要な撮影機材を「でも車がないから」という理由で持参せず、そのせいで、時に写真のクオリティが限定されてしまう場合もあることに、我慢がならなかったからだ。
だがマンション敷地内の駐車場にまったく空きが出ず、やむを得ず、いわば断腸の思いでカーシェアを利用していた玉村さん。
そうこうするうちに妻・栞さんは第一子を出産し、その後第二子も授かった。仕事だけではなく病院通いにもカーシェアを使うようになり、その費用は月間約3万円に。だがそのお金以上に、「状況を自分自身でコントロールできないこと」こそが、玉村さんにとっては真の問題点だった。
「カーシェアって便利ではあるのですが、希にトラブルもあるんですよね。シェア開始時刻になっても前の人が戻ってこなかったり、いきなりの故障で貸し出し不可になったり。それでも現場には行かなくちゃなりませんから、あわてて友人に頼み込んで、その友人の車を急きょ貸してもらったりとか……まぁいろいろありました」
そのため父として夫として、そして仕事人として、いよいよ「自分の車」の必要性を痛感していた玉村さんだったが、先日ようやく駐車場の空きが発生。ソッコーで中古車を購入した。
まるでCONTAXのカメラのような車
選んだのは2001年式の2代目ホンダ ステップワゴン。デジタルではなくフィルムだった時代のCONTAX製カメラによく似た色合いのボディカラーと、19年前の車ならではの、古風とも言うべき角張った造形が決め手となった。
「デザイン的には、最初は昔のボルボがいいなと思ってました。でも整備の問題を考えると非現実的かも――ということで最近の、いわゆる売れ筋のミニバンを探したのですが……あの丸っこい形がどうしても好きになれない。あれを買うのって、僕としてはなんと言うかこう『あきらめて、妥協して買った』みたいな感じになってしまうので、それだけは嫌だったんですよ」
最近のミニバンは買う気になれない。だが仕事用としても家族用としても、ミニバンが必要であることは間違いない。ならば――ということで、それまでは『2・3年落ちまで』としていた検索範囲を『20年落ち』まで広げてみたところ、いきなりこのステップワゴンに出合った。
角張った形と、まるでCONTAXのチタンボディのようなボディ色が玉村さんにとっては「ドンピシャ」な、19年前のミニバンに。
このような形でやってきた、ちょっと古い年式のホンダ ステップワゴン。それはフォトグラファー玉村敬太に、そして私人・玉村さんとそのご家族に、どのような影響を与えたのだろうか?
「すべてにおいて『壁がひとつなくなった感じ』と言えばいいでしょうか? 仕事に関して言えば、車があるとかないとかいう“自分の都合”で写真のクオリティが落ちてしまうことがなくなりましたし、妻や子供にとっても、たぶんいいことしかないのではないかと思います。行きたい場所へ行きたいタイミングで行くのって、今の僕らみたいな家族形態だと、車がないと実はけっこう大変なんですよね」
1歳3ヵ月の長男がいて、さらに第二子が妻のお腹の中にいるとなると、外出するにあたっては「お昼寝の場所はどう確保する?」「ていうか、そもそも行けるのか?」等々のことを事前に検討しなければならない。だがステップワゴンという“基地”があれば、ほぼすべてのことを車内で済ますこともできる。
そうであるからこそ、この19年落ちのステップワゴンは玉村家にとって、そして「フォトグラファー玉村敬太」にとって、かけがえのない道具あるいは相棒になっているのだ。
子供たちにも“車の記憶”を残してあげたい
「子供は全部で3・4人は欲しい」と言う玉村さん。「この先、仮に貧乏になったとしても(筆者注:そんなことはたぶんないと思いますが……)、家族がたくさんいれば、それだけでもう十分楽しいじゃないですか? そういったことこそが、人間にとっての“本当の財産”だと思うんですよね」
玉村さんには、幼少期の「車の記憶」がけっこうあるという。
父が運転する車。家族はいつも後部座席を選んで座っていたが、玉村少年のお気に入りは助手席。そこで、運転中の父と様々なことを話し、カセットテープに吹き込まれた音楽を聴き、後方へ流れていく風景を眺める。
玉村さんはそんな“車の記憶”を、自分の子供たちにも与えてあげたいのだという。ちょうどいいことに「純正カセットデッキ」が付いている、この19年前のミニバンで。
玉村敬太さんのマイカーレビュー
ホンダ ステップワゴン(2代目)
●購入金額/40万円
●年間走行距離/約10000㎞
●マイカーの好きなところ/形がシンプルなところ シートアレンジが豊富なところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/燃費が良くない
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/家族がいる人、荷物が多い人
インタビュアー
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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