買ってよかった！ 初めての愛車が僕の生活を変えた

父は運転免許をもっておらず、母もペーパードライバー。自家用車を必要としない家庭で育った千葉県在住のW.Uさん（21歳）は、学校の先生を目指して大学に通いながら免許を取得した。しかし、まさか自分のクルマを買おうとは夢にも思っていなかった。

この物語は、取材を通して聞いた実話をベースにしたもの。クルマにまつわる、人間ドラマだ。

愛車がある、今しかできない経験を

家にクルマがなかった反動なのかもしれない。免許を取ってから、友達と旅行したり、彼女と遠くにデートしたり、行動範囲がグッと広がった。クルマはカーシェアリングで必要なときに必要なだけ借りていた。

家にクルマがなかった反動なのかもしれない。免許を取ってから、友達と旅行したり、彼女と遠くにデートしたり、行動範囲がグッと広がった。クルマはカーシェアリングで必要なときに必要なだけ借りていた。

それで良いはずだった……。ところが月末に請求が来てビックリ。カーシェアリングの利用料が1ヵ月で数万円になった。

使いすぎた（汗）。とはいえ、これからもクルマで出かける回数は減らないだろう。だったらもう買った方が経済的？　いやでも学生には贅沢か？

バイトでためた貯金が少しある。自分の予算でどんなクルマが買えるのだろう？　コンビニで見つけた雑誌をキャンパスのベンチで広げてみた。

ん？ 車両価格の他に諸経費が必要なんだ。お、総額表示で並んでいるから、僕が買えるクルマはココからココまでだな。ページの角を折って眺めていたら時間が経つのを忘れていた。

雑誌がボロボロになるまで眺めるのなんて久しぶり。ワクワクがとまらない。ネットでクルマを調べて、週末には気になるクルマがある中古車販売店に行った。ミニバン、コンパクトカー、セダン……。来店して改めて同予算でいろんな選択肢があることに驚いた。

駐車場は、家の空いているスペースがあるからいいとして、税金や保険、ガソリン代など維持費を考えると、購入予算はできるだけ抑えたい。そう思ってクルマを探していたら、ピンとくるクルマを見つけた。

日産のマーチ。

これ余裕で予算に収まるだけじゃなく、デザインも良い。超気に入った！

フォルムは懐かしいのに古さを感じさせない。むしろ新鮮ですらある。内装もシンプル。北欧のインテリアみたい。言いすぎかな？　いや、そんなことない。淡いボディカラーもいい。ちょうど、こんな色のスカジャン欲しいと思っていた。

そうして手に入れた念願の愛車。初めてのドライブは彼女を誘った。大学の同級生で年齢も一緒。ついついお互い遠慮なく意見をぶつけちゃって、喧嘩してしまうことも多い。クルマ買ったことなんて言うかな……。少し気になった。

「かわいい！」「車内もシンプルで良いね」

お披露目したら超好評。「私も運転免許取ろうかな」なんて、もうノリノリだ。正直うれしかった。

ドライブの目的地は“小江戸”川越。せっかくなので、行ったことがない場所に遠出した。 最近、会話がなくなる瞬間があって実は少し気にしてたけど、今日の彼女はおしゃべりだ。

「街並みが素敵」「あっ！　あのお店、おもしろそう」

「やっぱりクルマがあると良いね」「あのクルマなら、丸くて小さくて私でも運転できそう」

レンタカーのときよりテンションが高い気がする。いや、いつもよりご機嫌なのは僕もか（笑）。

ふらりと甘味所に立ち寄る。「話処 陶路子」。なんか雰囲気が良い、お店だ。彼女はクリームあんみつを、僕は和菓子付きの抹茶を頼んだ。

「すっごく美味しい!!」。目を輝かせる彼女。僕が作ったわけじゃないけど、なぜか誇らしい気持ちになる。

僕はゼミの話や、サークルの話をした。サークルは映研。映画を観る方じゃなくて映画を撮る方。

「どんなシナリオ？」

「ある日、世界中の人間の検索履歴が公開されちゃうって話」

「それってプライバシー丸見えだよね。やだぁ（笑）」

僕は最近の検索履歴といえば「中古車　50万円」みたいなのばっかりだから、見られたって困りはしないけど（笑）。

甘味所は、陶磁器やガラス器の販売店と繋がっている。陶器がずらっと並んでいる棚を見て、彼女は「合図したら一番気に入ったのを指さそうね」と言った。

せーのっ

……お互いぜんぜん違う器を指して大笑い。好みは違って、意見も違う。そういう違いを受け入れるより、今までは自分の考えを押し付けてばかりいたかもしれない。

もうちょっと大人にならないと、なんて思った。でも器が大きいフリをするのは違うと思う。

クルマは背伸びしないで、等身大のものを選んだつもり。

買う前に相談したのもあるけれど、家族も僕がクルマを買ったことをとっても喜んでくれた。

この間、父さんが趣味の写真撮りに公園まで行くというから送っていった。

「迎えにくるのは何時がいい？」

「いいよ、悪いから。帰りはバスで帰るよ」

「遠慮するなって。時間わかったらLINEして」

「そっか。ありがとう」

今まで両親に何かをお願いしたり、してもらったりすることはあっても、僕からしてあげられることなんてなかった。なんだか、以前の僕とはちょっとだけ違う感じだ。

レンタカーでは味わえないクルマを所有する生活

クルマって乗るのも楽しいけど、選びのも楽しい！　どんなクルマで、どこに行こうかを考えるだけで大興奮だ。特に「これ！」という条件は予算しかなかった。だから、クルマ選びは直感重視！ 日産 マーチはレトロでイカしている。トヨタ パッソは小さくて使い勝手が良さそう。ホンダ モビリオスパイクはそっけない無骨さが気にいった。

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