アバルト 595 ▲愛車のアバルト 595は購入して3年たつが、走行距離はわずか5000㎞。それだけガレージで整備されている時間が長いということだ

スケルトン階段で2つの空間をあえて隔てる

GT-Rのような速い車に、ハチロクで挑む。そんな『頭文字D』的な世界観が好きだというIさんの愛車はアバルト 595。

「チンクエチェントなのに速ければ、面白いじゃないですか」。だから足回りにオーリンズのオーダー品を組み込むなど、結構手を加えている。

車をいじるためにも結婚して家を建てる際には、インナーガレージにこだわった。

「時間や天候に左右されず、車を整備したかったし、仕上げた車にキズをつけられたくないから」とIさん。加えて、家の中からも愛車を眺めたいとリクエストしたそう。

愛車をイジるのは「プラモデルを作る感覚に少し似ている」というIさんが、仕上げた“作品”を眺めていたいと思うのは当たり前かもしれない。

希望をかなえるため建築家の藤原誠司さんは、ガレージとリビングダイニングの境を一面ガラス張りにした。そこにあえてスケルトンの階段を配置。

「居住部とガレージとでは別の時間が流れるように、空間的な距離を感じられるようにしました」

また、ガレージの天井にはダクトレールを埋め込んだ。「これなら愛車を美しく照らす照明の位置を、将来、車が替わっても、自在に変えられます」

カウンターキッチンに設けられたバーカウンターに座ると、ちょうど愛車が見える。机をもっていないというIさんにとって必然的にここが読書や仕事をする場所になる。

本やパソコンから視線を外せば愛車が見える、それが至福のひとときだ。
 

アバルト 595 ▲車とバイクを収めるため、ガレージの間口は少し広めにとられた。居住部とガレージの出入り口は、ガレージの奥側に用意されている
アバルト 595 ▲プライバシー確保のため道路側に窓はないが、閉鎖的にならないよう、玄関は人を吸い寄せるように凹ませたデザインに
アバルト 595 ▲ガレージ奥の作業台。頭上にはIさんが選んだ照明がダクトレールから吊るされている。趣味のマウンテンバイクをハイエースに載せて遊びに出かけることもあるという

施主の希望:
ショールームのような美しいガレージにしたかった

足回りやエンジンをチューンできるのはもちろんですが、かといってゴチャっとした作業小屋という感じのガレージではなく、キレイなショールームのようにしたいと思いました。

それが施工例がどれもキレイな建築物である藤原さんに依頼した理由のひとつです。

一見窓が少ないように見えますが、外から分からない窓がいくつもあり、実は日当たりはいいんです。仕切りもあまりなく、実際の面積以上に開放感があるのも気に入っています。
 

建築家のこだわり:
ダクトレールはガレージ内の整備を便利にする目的もある

建築条件が厳しく、また周囲を住宅に囲まれた土地ですので、どうやってプライバシーを確保しながら空間的なゆとりを作るかに配慮しました。

幸い道路の反対側が南向きなので、こちらにウッドデッキなどを設けて、空間の広がり感を得られるようにしました。

ガレージのダクトレールは、単に照明の位置を自由に変えられるだけでなく、市販のコンセントパーツを使えば、好きな位置で電動工具などを使えて作業の利便性が向上します。
 

アバルト 595 ▲ガレージとは別に用意したカーポートには、家族でのお出かけや日常の買い物用のハイエースが入る
アバルト 595 ▲キッチンにはカウンターが設けられていて、ここで愛車を眺めながら食事ができる。「カウンターに備わるキッチンは、目の前がシンクだから食器類の後片付けも簡単です」とIさん
アバルト 595 ▲建築条件で床面積を増やせないため、リビングに隣接する屋外にウッドデッキスペースを設置。採光ができて、リビングに開放感も生まれる他、晴れた日は第2のリビングにもなる

■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:134.7㎡
■建築面積:67.1㎡
■延床面積:111.78㎡
■設計・監理:フジハラアーキテクツ
■TEL:078-599-6105
■プロデュース:ザウス
■TEL:0120-054-354(関東)/0120-360-354(関西)

※カーセンサーEDGE 2020年7月号(2020年5月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
 

文/籠島康弘、写真/平野和司