目指せ走行距離50万km!? プロスノーボーダーの相棒は、やりたいことを何でも叶えてくれるハイエースバン
2020/04/23
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
遊びも仕事もスタイリッシュに楽しみたい!
新潟県湯沢町。日本有数のスノーリゾートとして知られるこのエリアは、信濃川水系の上流部に位置し、四季折々、豊かな自然を楽しむことができる。
そんな湯沢町で会ったプロスノーボーダーの佐久間洋さんは、30代で神奈川県からこの場所に移住してきたという。
子供の頃からスケートボードで遊んでいた佐久間さんは、10代後半でスノーボードに出会う。まだ多くのゲレンデでスノボの滑走が禁止されていた時代だ。
日本で空前のスノボブームが巻き起こったのは1990年代前半。この時、佐久間さんはプロスノーボーダーとしての活動をスタートする。23歳のことだ。日本各地で行われるコンペティションに出場し、雑誌の撮影などで世界中を旅した。
「当時は神奈川県に住んでいて、冬になると岩手県の八幡平を拠点に各地を回っていました。乗っていた車はフォード エクスプローラーのエディバウアーモデル。これで全国を走り回っていましたね」
2000年代になると、キッカーやテーブルトップ、レールなどをさっそうと滑る海外のスノーボーダーの映像を見て、日本のスノーボーダーの間で「パークで遊びたい!」という欲求が高まってくる。佐久間さんはそのムーブメントをいち早くキャッチし、自身の経験を生かしながらゲレンデにスノーボードパークを設置するディガーとして活動。全国のスキー場から声がかかるように。
「ちょうどこの時期に自然豊かな湯沢にほれ込み、湯沢に移住しました。この時乗っていた車はダッジ ラムトラック。海外のプロがピックアップトラックの荷台にスノーモービルを積んで楽しんでいるのを見て、日本でもやりたいと思ったんですよね。都心と違い、湯沢ならフルサイズのアメ車でも困らないというのもありました」
40代になると、佐久間さんはタイニーハウス(けん引できる家型のキャンピングトレーラー)の製造販売をスタート。そして冬は手付かずの自然の中を滑るバックカントリースノーボードのガイドに。車は2014年に復刻したトヨタ ランドクルーザー79のピックアップに変わった。
子供が生まれたことが転機に
佐久間さんの経歴を愛車とともに駆け足で振り返ってみたが、スノーボードを長く楽しんでいる人は気づいたのではないだろうか。佐久間さんは時代ごとにスノーボードの新たなムーブメントを日本で仕掛け、ブームを生み出している。
「昔からとにかく遊ぶのが好きで、同じように遊ぶことが大好きな人にその場所を提供できたらと思っていて。だから世の中の人が何を求めているか、常にアンテナを広げてキャッチするようにしていました。40代ではタイニーハウスの製作以外にも湯沢でキャンプ場の経営もしていました」
そんな佐久間さんに転機が訪れたのは3年前。初めてのお子さんが誕生したのだ。
「子供が小さいと出かけるときに荷物が多くなるでしょう。ピックアップトラックだとそれを積むのがちょっとしんどくなって。どうしようかなと思ったときに友人が車を手放すというので、僕が引き取ることにしました」
それが今の愛車のハイエースバン。これなら家族の荷物も楽に積むことができるし、バックカントリーのガイドをするときもスノーシューを積み、お客さんを乗せて山に向かえる。なんとなく引き取った車だったが、乗ってみるとその使い勝手の良さにどんどん魅せられていった。
次はハイエースをキャンピングスタイルにする
ただ、いかにも商用車然としたスタイルだけは気に入らない。そこで、自分好みにカスタムすることにした。
ヘッドライトはワンオフで製作してもらい、テールランプは流れるタイプにチェンジ。そしてヒッチメンバーを付けてトレーラーをけん引できるようにした。インテリアでは刀型のシフトノブに目がいく。ちょっとした遊び心だ。
「ここでの生活はあらゆるサービスが揃った都会とは全く違う。身の回りのことは自分でやるのが湯沢スタイルです。ここで暮らし始めてから簡単なものは自分で作ることが多くなったので、ハイエースのカスタムも自分でやれる部分はパパッと仕上げましたね」
これまで、常に新しい遊びを世の中に提案してきた佐久間さん。その原点にあるのは「自分はこういう遊びがしたい。でもそれができる場所がない。だったら作ってしまおう」という考えだった。スノーボードパークの設計はその最たるものだ。
遊ぶための道具も自ら作る。これまで、バックカントリー用のスノーボードや、マウンテンウエアなど、様々なプロダクトを開発してきた。そんな佐久間さんにとって、ハイエースのカスタムは、造作もないことだったに違いない。
ちなみに佐久間さんのハイエースは手に入れた時点で走行距離が27万km! それから3年が経ち、距離は30万kmに達している。
「ハイエースは懐の深い車ですよ。僕のようにスノボをたくさん積んで山を登っていくこともできるし、ダート用のATVを積んで遊びに出かけることだってできる。ライフスタイルに合わせてどんなことだって実現できるのですから。軽い気持ちで手に入れたのですが、乗ったら結構気に入っちゃって(笑)。知人からは『その気になれば50万kmだっていける』と言われました」
佐久間さんのガレージには、ハイエース以外にもスノーモービルやバギー、バイクなど、様々な乗り物が所狭しと並んでいる。
「僕の仕事は遊びから派生したものばかり。そのトランスポーターとして乗り物があります。僕にとって乗り物で移動するのは子供に戻れる貴重な時間。だからとことん楽しみたいと考えています。自宅の裏はすぐ山。スノースケートをしたい時も、今日はバギーで行こうか、でももう少し奥まで入ればスノーモービルでも遊べるなとか。何に乗るか考えるだけでワクワクします」
これまで、10年ごとに大きな転機を迎えながら世の中に新しい遊びを伝えてきた佐久間さんは、今年50歳になる。新たな挑戦として昨年から陶芸の先生を始めた。
デジタル化により世の中は便利になったが、一方で情報過多による疲れからデジタルデトックスを求めている人が大勢いる。土いじりという究極のアナログ体験は、そんなニーズにマッチするとの考えだ。
また、お子さんが生まれたことで、成長する中で彼にクラフトマンシップを伝え、一緒にスノーボードやスケートボードをやることを楽しみにしている。そしてお子さんが運転免許を取得した時、親父が持っているどの乗り物に乗りたがるかを想像しワクワクしているという。
「このハイエースにはまだまだ乗り続けるつもりです。そして箱型の利便性に目覚めてしまったので、次はハイルーフかワイドボディのハイエースを手に入れて、車内を自分でキャンピングスタイルにカスタムしたいと思っています。僕のような生き方をしていると、ホテルに泊まるお金があったら、それを使ってもっと遊びたいと考えてしまうんですよ」
キャンピングカーとコンロがあれば美しい風景の場所まで走って、夜は酒を飲みながら夜空の星を見て、朝起きたら澄んだ空気の中で美味いコーヒーを飲むことができる。ぱっと見は怖そうな雰囲気の佐久間さんだが「意外とロマンチストなんですよ」と笑う。
お子さんが運転免許を取得する頃、佐久間さんは65歳になっている。キャンピング仕様のハイエースの隣にバギーが置かれ、たくましく育ったお子さんと2人で焚き火を眺めながらコーヒーを飲んでいるのではないだろうか。
ただ、バギーに乗っているのは佐久間さん自身。まだまだ息子には負けないと、ヤンチャな雰囲気で遊んでいる。そんな光景が浮かんだ。
佐久間洋さんのマイカーレビュー
トヨタ ハイエースバン(現行型)
●購入金額/88万円
●グレード/スーパー GLロング ●年間走行距離/約10000㎞
●マイカーの好きなところ/ワンオフのヘッドライトや荷台のベットユニット
●マイカーの愛すべきダメなところ/アイドリング時の振動がカラカラと騒がし過ぎる(笑)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ハコ型特有の空間スペースを活かしたいアイデアマンへ。遊び方、無限に広がりますよ♪
自動車ライター
高橋満(BRIDGE MAN)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、 音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、 心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。 愛車はフィアット500C by DIESEL
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