古き良きアメリカンカルチャーに憧れ続け67年式のデ・ビル コンバーチブルに。その一途な思いは息子にも
2020/03/14
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
古き良きアメリカに憧れて
小江戸と呼ばれる、昔ながらの風情漂う川越(埼玉県)の通りに、巨大なアメ車が2台、ドロドロとV8エンジンならではの重低音を響かせながら現れた。
江戸時代に60年代のアメ車が時空を超えて迷い込んだかのような、まるで映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の一場面みたいな不思議な光景だった。
67年式のキャデラック デ・ビルコンバーチブルに乗るのは、橋本潤一さん(57歳)。若葉マークも初々しい(?)58年式のデ・ビルクーペは、息子の凛太郎さん(19歳)である。
橋本さんは、中学生の頃に雑誌や映画で触れたアメリカンカルチャーに憧れ、以来ずっと、古き良きアメリカのライフスタイルにこだわって生きてきた。
「『アメリカン・グラフィティ』を見て、まずは音楽やファッションにハマりました。仲間とバンドを組んで、もちろんデカいアメ車にも憧れて、18歳で免許を取って、即……」
即、とはいかず、まずは安い国産の旧車を乗り継いで、橋本さんは20代半ばで念願のアメ車を個人売買で手に入れる。
「結婚を機に国産車に戻ったりもしましたが、やっぱりアメ車だということで、中古の88年式のキャデラックのエルドラドを購入して、その後キャデラックのフリートウッドを買い足し(!)たりして、それからずっとアメ車ひと筋です」
5年前に、67年式のデ・ビルコンバーチブルと出会った。しかし、今もエルドラドとフリートウッドはナンバーを切った状態で保存されている。
「アメリカの文化の象徴でもある車を、次の世代に残していきたいんです。若い人たちに、こんなカッコいい車やカルチャーがあったんだよ、と伝えたい」
カッコいいものは、カッコいい
そんな父の背中を見ながら育ったのが、凛太郎さん。彼もまた高校時代にロカビリーバンドを結成し、免許を取得すると真っ先に大きなアメ車を手に入れた。
「僕は、キャデラックを揺りかごに育てられたようなものですから。子守歌はプレスリーで(笑)、アメリカの特に50年代の音楽やデザインが大好きです」
大学で英語を学ぶ凛太郎さんの夢は、アメリカに留学すること。そして、プロのロカビリー歌手になること。
デ・ビルクーペに乗っていて「素敵ねぇ」と声をかけてくれるのは、ほとんどが中高年世代。自慢の愛車も、今どきの若い女の子にはあまりウケないようだが、そんなことは気にしない。
カッコいいものは、カッコいい。自分のスタイルが、まわりに流されてブレることはない。どうやら息子が父から受け継いだのは、その一途さのようだ。
「本当はフツーの車に乗ってほしいんですけどね(笑)。でもアメ車の素晴らしさを、またその先の世代につなげてくれたら嬉しい。くれぐれも、安全運転で」と橋本さんはかたわらでほほ笑む。
アメ車を愛する父と息子。違いがあるとすれば、父がボディのヤレもまた味わいとして愛でているのに対して、息子は毎晩ボディをピカピカに磨き込んでいるところか。父も若い頃にはそうしていたように。
ずっとアメ車に乗り続けます
それにしても、なぜ、そこまでアメ車なのだろう?
「カッコいいから、と答えるしかないですね。そのカッコよさに憧れて、自分も精いっぱいカッコつけて生きてきた気がします。それは、これからも変わらない。だから、ずっとアメ車に乗り続けます、きっと」
「そんな父をカッコいいと思います。自分もアメ車に乗って、ロカビリーを唄いながらカッコいい年の取り方をしたい」
カッコいいのは車だけでなく、なにより自分の好きなスタイルにこだわり続ける、橋本さん親子の一途な生き方そのものだ。
インターネットのおかげで、昔に比べれば情報の収集や部品の調達が楽になった。今こそ古い車との生活をエンジョイできる時代なのかもしれない。
今なら、まだあの頃の夢を手に入れられる。
一途な思いさえあれば。
橋本潤一さんのマイカーレビュー
キャデラック デ・ビルコンバーチブル(67年式)
●購入金額/約150万円(直すのに同じくらいの金額がかかりました(笑))
●年間走行距離/約3000km
●購入する際に比較した車/70年代のキャデラック
●マイカーの好きなところ/コンバーチブルなところ。全体的な雰囲気も好きです
●マイカーの愛すべきダメなところ/強いて言えば、故障が多いのと燃費の悪さ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/この手の車なので覚悟のある方なら(笑)
橋本凛太郎さんのマイカーレビュー
キャデラック デ・ビルクーペ(58年式)
●購入金額/ひみつ
●年間走行距離/約4000km
●購入する際に比較した車/無し。この車に絞って探していました
●マイカーの好きなところ/50年代らしいスタイリング
●マイカーの愛すべきダメなところ/故障で手がかかりますが、逆に愛着が湧きます
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/一筋縄では乗れない車なので本当に好きな人ならオススメです
インタビュアー
夢野忠則
自他ともに認める車馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。愛車は1万円で買った90年式のフォルクスワーゲン ゴルフ2と、数台のビンテージバイク(自転車)。
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