カーセンサー本誌で毎月連載されている「Let's Go! 車界科見学」。車に乗っていれば日常的に起こることの中に、疑問には思うが、知らなくてもお店や誰かがやってくれることがある。その中で、知ればナットク!の情報をGetしに、車界のプロの仕事を見学しに行く企画。今回は、普段なかなか気に留めることはないが、定期的に替える必要があるタイヤについて、車界科見学してきました。
 

▲今回はタイヤ専門店であるタイヤ館西船橋店にお話をお伺いしてきました ▲今回はタイヤ専門店であるタイヤ館西船橋店にお話をお伺いしてきました

交換時期の判断基準は3つだけ。自宅でも確認可能

車の中で、路面と接する唯一の部分であるタイヤ。安全に運転するためにはとても重要なパーツですが、どういったタイミングで交換すればいいのか、基準がわかりにくいのも確か。「装着から3年または3万km」が1つの基準ではあるのですが、車検のタイミングに勧められて、なんとなく替えたという人も多いのではないでしょうか。

そこで、タイヤ専門店であるタイヤ館西船橋店の店長、中谷亮さんにタイヤをチェックするための基準を教えてもらいましたのでご紹介させていただきます。
 

▲タイヤ館西船橋店、店長の中谷亮さん ▲タイヤ館西船橋店、店長の中谷亮さん

タイヤの交換時期を判断するための基準は3つ。タイヤがすり減っていないか、傷ついていないか、長い期間使いすぎていないかということです。あらかじめガソリンスタンドなどでタイヤの空気圧を適正な数値にしておけば、自宅でも簡単にタイヤ交換が必要か確認できます。
 

▲まず空気圧を適正な数値に調整してからチェックを開始。空気圧の適正値は運転席側のドア内側に記されていることが多い ▲まず空気圧を適正な数値に調整してからチェックを開始。空気圧の適正値は運転席側のドア内側に記されていることが多い

タイヤ交換が必要かを判断するための3つの基準

①タイヤのすり減り
タイヤの残り溝がどれくらいあるかによって、雨の日の排水性能が変わってきます。残り溝が1.6mmがタイヤの使用限界となっていて、これ以下で走行することは道路運送車両法で禁止されており、もちろん車検も通りません。溝の一部に高さ1.6mmのスリップサインが付けられています。

スリップサインの位置は、タイヤ側面に付いている△のマークの位置が目印です。その場所の延長線上の溝の底に、スリップサインがあります。フロントタイヤの場合、左右どちらかにハンドルを切ると確認しやすいでしょう。スリップサインがあらわになっていたら即交換ですが、安全性を考えると残り2~3mmで交換することをオススメします。タイヤ専門店では専用のゲージで、より正確に測定することができます。
 

▲スリップサインはタイヤのサイド部分に6カ所ほど付られている△型のマーク ▲スリップサインはタイヤのサイド部分に6カ所ほど付けられている△型のマーク
▲溝の中の膨らんでいる部分がスリップサイン。溝の深さ1.6mmの高さに付られており、これが左右とつながってしまうと使用できなくなる ▲溝の中の膨らんでいる部分がスリップサイン。溝の深さ1.6mmの高さに付られており、これが左右とつながってしまうと使用できなくなる

気をつけていただきたいのが、タイヤは内外が均一にすり減っていくとは限らないということ。見やすい外側はまだ十分に山が残っているのに、内側はすでにスリップサインが出ているということもあります。そうならないためにも、マメにローテーションして、極端な内減り、外減りを防いだ方がいいでしょう。
 

▲内外ですり減り方が極端に違ってしまったタイヤ。右側はまだ溝が残っているが、左側はすり減りすぎてワイヤーが露出してしまっている ▲内外ですり減り方が極端に違ってしまったタイヤ。右側はまだ溝が残っているが、左側はすり減りすぎてワイヤーが露出してしまっている

②タイヤのひび割れ
一般の方が判断しづらいのがひび割れです。タイヤは衝撃の吸収や、パンクを防止するために、道路に接地する部分は厚くなっていますが、タイヤの側面は4mmほどしか厚みがありません。そのため、小さなひび割れがパンクやバーストの原因となり得ます。
 

▲タイヤのカットモデル。衝撃を吸収する必要がある接地面に比べて、サイドの部分は極端に薄くなっている ▲タイヤのカットモデル。衝撃を吸収する必要がある接地面に比べて、サイドの部分は極端に薄くなっている

ひび割れの原因は、タイヤが硬化すること。タイヤには油分が含まれていて、年数に応じてゆっくりと抜けていくため、タイヤは自然劣化してひび割れにつながっていきます。タイヤの硬化は路面への食いつきが悪くなり、制動距離が伸びる原因となりますので、適正な空気圧を入れた状態で明らかにひび割れしている箇所があるようならば、即交換しましょう。

問題は目視ではわからない小さなひび。ホイールから外して、グニュッとつぶすと「隠れひび割れ」が見つかることがありますが、その兆候がタイヤ側面のホイール近くにできる細かいシワ。これを発見したら、タイヤ専門店などに交換の相談をしてみてください。
 

▲ホイールから外して変形させてみると、隠れたひび割れが見つかることも ▲ホイールから外して変形させてみると、隠れたひび割れが見つかることも
▲ホイールに近いサイド部分に細かく生じているシワ。これがひび割れの兆候だ ▲ホイールに近いサイド部分に細かく生じているシワ。これがひび割れの兆候だ

③タイヤの使用年数と走行距離
交換の基準は、3年または3万kmのどちらかを経過した時点で交換することが推奨されています。製造年月日はタイヤのサイドに必ず記されていますが、実はタイヤ交換の目安として重要なのは、製造されてからの時間ではなく、最初に使用した日からの年数と走行距離です。

タイヤの劣化は新品のタイヤをホイールに装着し、空気を充填したときから始まります。装着するまでは、正規でタイヤを販売されているタイヤ専門店やカーディーラー、カーグッズショップなどで劣化がおきないように保管していますし、製造から年月が経ったタイヤはそもそも販売しないようにしていますので、現在では製造年月日を確認する必要性はありません。

中古車の場合は、いつどのタイミングで装着したタイヤなのかわかりにくいのは確かです。購入されたタイミングで新品のタイヤに替えていただくのがベストですが、整備記録簿などでさかのぼれる場合もありますので、確認してみてください。
 

スタッドレスタイヤは月に1度空気圧をチェック、3カ月に1度はお店で点検を

スタッドレスタイヤは少々事情が特殊です。スタッドレスは溝の深さが50%以上摩耗すると、冬用タイヤとしての性能が発揮できなくなります。そのため残り1.6mmの高さに付いているスリップサイン(側面の△型のサインが目印)とは別に、「プラットフォーム」というサイン(側面の↑型のサインが目印)が付けられています。

もう1つ重要なのが、ゴムの硬さです。スタッドレスタイヤはゴムの柔軟性で、凍った路面に密着させて滑りにくくしているため、硬度が安全性に直結します。しかし、目視や触っただけではタイヤの柔らかさは判定できません。タイヤ硬度計という専門の機械で判定する必要があります。
 

▲スタッドレスタイヤの柔らかさが測れる硬度計。タイヤ専門店などには必ず準備されている ▲スタッドレスタイヤの柔らかさが測れる硬度計。タイヤ専門店などには必ず準備されている

スタッドレスタイヤは、シーズン以外は雨や直射日光に当たらない場所に保管してください。そのとき、空気圧を半分にしておくとタイヤが長持ちします。毎回秋と春に、サマータイヤとスタッドレスタイヤを付け替える方もいらっしゃいますが、ホイールを別途1セット用意して装着したまま保管した方が傷みません。

タイヤの空気圧は1ヵ月に1度のチェックが基本です。ひび割れや残り溝についての点検も、それに合わせて行えればベストです。セルフチェックができないスタッドレスタイヤの硬度については、3ヵ月に1度くらいタイヤ専門店などでチェックを受けるといいでしょう。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか? タイヤのトラブルは重大事故につながる危険性が高いため、「自分のタイヤって長い間替えてないけど大丈夫かな?」と思っていた方は、まずは自身でチェックできる項目を一度確認してみてください。確認して不安な場合は、早めにプロに確認してもらいましょう。
 

 
text/渡瀬基樹
photo/渡瀬基樹