レトロとモダン、2種類の愛車たちが向かい合うガレージハウス【edge HOUSE】
カテゴリー: カーライフ
タグ: ジャガー / 富裕層向け / EDGEが効いている
2016/06/17
ドラマティックに入手した専用ガレージ|建築家・松永 基(エムズワークス一級建築士事務所)
久し振りにカーガイ・松永基さんの登場だ。じつは今回ご紹介する作品については、建築中からその情報を入手していて「竣工したらすぐに取材させてほしい!」と松永さんに無理をお願いしていた。
場所は静岡県牧之原市。茶畑に囲まれ、富士山の雄大な景色を満喫できる自然豊かなエリアだ。施主のNさんは神奈川にお住まいなのだが、奥様の実家がある牧之原に待望のガレージハウスを建て、現在は週に1回のペースで通っているという。
敷地内に一歩足を踏み入れた瞬間、開け放たれたガレージに並ぶ車たちに圧倒された。正面から観察するとガレージは右手と左手に分かれていて、右手にはアウディA8とフェラーリ・カリフォルニア。左手にはジャガーEタイプ・ロードスターとクラシックミニ。そして建物横にある外ガレージには、G63AMGという布陣だ。まったくキャラクターの異なる2つのガレージは、そもそもどんなコンセプトで設計されたものなのだろうか?
「とにかく、Eタイプに似合うガレージを作ることが最大の目的でした」と、施主のNさん。「Eタイプとミニ用の“ビンテージ車用ガレージ”と、アウディA8とフェラーリ・カリフォルニアが収まる“近代車用ガレージ”というテイストに分けているのです」
設計を担当した松永さんは「Eタイプの素材感に合わせたガレージにするために、天井の梁をサビ色で塗装したほか、床には無垢のフローリング材をV字に組ませたヘリンボーン柄として貼り付けました。そして、壁の杉板材には古い杉の木をモチーフにエイジング塗装を施し、一角には古レンガの壁を作るなど、Eタイプが収まるに相応しいアンティーク感を演出しています」
きっとイギリスの貴族のガレージはこんな雰囲気なんだろうな…取材をしながらそう思うほど、ガレージ内全体の雰囲気は格調高く、素材やデザインには「本物」を感じる。
今回のガレージハウスは、NさんのEタイプに対する強い思い入れが形になったともいえるのだが、そのきっかけとなる面白いエピソードを伺った。
「2年前の夏に、都内の交差点で信号待ちをしていたEタイプを目撃したのです。そのあまりの美しさに衝撃を受け、たまらずあとを追いかけ、次の信号で停車したときに声をかけました。もちろん、いきなり見知らぬ男に窓をノックされたのですから、相当怪しまれたと思います。でも、ひと目惚れであることや、ぜひまた見せてほしいということを必死に伝えたら、面白い人だね…と受け入れてもらえました」
その後Nさんは、どうしてもそのジャガーを手に入れたくて、関連書籍を買いあさり猛勉強を開始。交差点で声をかけたジャガーのオーナーのもとへは月に1度のペースで通いつめ、ついに出会いから半年後、めでたく譲り受けることとなったという。
エムズワークスのノウハウが凝縮した柱のない広いガレージ
これほど惚れ込んだ愛車の専用ガレージなのだから、そのこだわりぶりは容易に想像できる。Eタイプが収まる「ビンテージ車用ガレージ」には、バーカウンターやTV、オーディオシステムなどが設置され、寛げるソファセットも備えている。お酒と料理を愛するNさんは、たびたびホームパーティを開催しているという。その際、リビングルームだけではなく、このガレージも社交の場として活用しているようだ。
松永さんは「設計に関しては、基本的に私に任せていただきました。そのため、ヒアリングしたことをイメージしてデザインしましたが、はっきり言うと、やりたいようにやらせてもらったというか…」と、ご満悦の様子だ。
ガレージは“ビンテージ車用”も“近代車用”も、どちらも6mというスパンをもつ大空間を実現している。つまり、これだけ広いガレージでありながら、柱がないことが特徴だ。これは松永作品の特徴であり、これまでもいくつか同様のガレージを取材してきた。
「ガレージの空間を広く取ることにはこだわりました。強度に関してはH鋼を補強するなど、エムズワークス(松永さんが代表を務める建築設計事務所)のノウハウが詰まっています。フルサイズの車を2台、楽に格納できるうえ、ストレスなく入出庫できることがメリットです」と、松永さん。
そんな松永さんとNさんとの出会いは、お台場で開催された住宅と車関連のイベント会場でのこと。Nさんは、松永さんのフランクな対応に好感をもち、ガレージハウスへの造詣も深いことから設計を任せたいと思ったという。
N邸は「Eタイプに似合うガレージを建てたい!」というNさんの強い思いに松永さんが共感したからこそ、「松永さんのやりたい」デザインを実現できたのだろう。
「いろいろな建築家とお話をしましたが、松永さんが最も普通に接してくれました。私が松永先生…と呼ぶと、先生と呼ばないで! とおっしゃるなど、構えずにお付き合いできました」
こんなやり取りからも、お2人が強い信頼関係で結ばれ、その結果N邸のようなこだわりのガレージが誕生したことがわかる。2人のカーガイの付き合いは、今始まったばかりだ。
【施主の希望:ガレージに対するイメージを伝え、あとはオマカセ】
■「新しい車と旧い車の、それぞれのテイストを生かしたガレージが欲しいというのが、最大の希望でした。敷地の形状や広さ、必要な部屋(リビングルーム、ペット専用部屋、母親の茶室、ゴルフシミュレーションルームなど)に加えて、わたし自身で集めた雰囲気のあるガレージハウスの写真などから松永さんにイメージを伝えました。それ以外に具体的な要望や細かい指示はなく、設計に関しては基本的に松永さんにオマカセしました」
【建築家のこだわり:素材感に心を動かされこだわりのガレージを設計】
■「Eタイプの存在がなければ、このガレージは設計しなかったでしょうね。もちろん施主のNさんもEタイプに出会ったからこそガレージ作りを決心したのですし、Nさんはいろいろな車をお持ちですがEタイプは特別です。私は、Eタイプのもつ“存在感”“素材感”にインスパイアされてこのガレージを設計しました。竣工を終えてガレージにEタイプが入庫した瞬間、舞台に役者が揃い、幕が開いた戯場のようなトキメキを覚えました」
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:364.02平米
■建築面積:212.24平米
■延床面積:378.31平米
■設計・監理:エムズワークス/松永 基
■TEL:045-680-5339
■施工:櫻工務店
■TEL:0547-35-2754
※カーセンサーEDGE 2016年7月号(2016年5月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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