趣味のガレージを備える桜の家
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2015/02/26
桜の巨木に彩られたイタリアン・ガレージ
樹木には家を守る力がある……と、ずっと昔に聞いた記憶がある。その家の歴史を見守り、風雨から守り、子供の遊び場になり、紅葉や開花により見る者を和ませたり…。
今回訪れたM邸には、今までM家を守ってきたであろう大きな桜の木があった。樹齢約70年というこの桜は、シーズンには見事な花を咲かせるという。取材のタイミングを誤ったか……と、少し後悔したが、緑の葉を湛えた姿も雄々しく力強い。
そんなM邸は埼玉県上尾市の、住宅街の一角にある。古くからの屋敷と新しい住宅とが混在する町並みで、この桜は周辺のランドマークになっている。約100坪という広い土地をもつM邸は、ご両親の家と同じ敷地に建ち、駐車スペースだけでも合計10台以上と駐め放題。しかも、一つひとつのスペースもたっぷりしているという羨ましい環境だ。そのほとんどが屋外駐車なのだが、Mさんの大切な愛車アバルト・プントだけは、ビルトインガレージに格納されている。
Aガレージ正面のシャッターを開けるとそこは、ご自身が「オタク部屋」と呼ぶほど、車関連のアイテムで溢れている。アバルトの前はアルファロメオ145に乗っていたというMさんは、イタリア車をこよなく愛する。それだけに、ガレージ内のアイテムも、そのほとんどはイタリア系で統一されている。ひと回り拝見していて気付いたのは、飾ってあるミニチュアカーや工具などがまったくホコリを被っていないということ。築2年が経つというから、いつも念入りに掃除をしているのかと思いきや、そうではないらしい。つまり、シャッターをはじめ窓など、このガレージ内部の機密性が高いことを証明している。
ガレージ正面は大勢の来客にも十分に対応できる、楽に6台は駐車可能なスペースがある。また、洗車やメンテナンス時にはドアを全開にできる広さで、洗車用の水道はお湯も出るという贅沢ぶりだ。ガレージへの動線は、正面のシャッター、玄関、そして裏庭(M邸から見ると裏だが、ご両親の住む実家から見ると庭側)からと3方向。とくに玄関から入った際には、右手のガラス窓越しに磨き上げられた愛車が眺められるし、2階から階段を下りてきたときにも正面に見ることができる。
M邸の設計は、建築家の橘 淳男さん。設計にあたりMさんからの依頼内容は、①ガレージ内で作業ができるように、車のサイズよりもゆとりのあるスペースとしたい。②玄関スペースを広くとり、椅子を置いて酒を飲みながら車が眺められるようにしたい。③デッドスペースとなるところ(階段裏)に、趣味のアイテムや雑誌などが置けるようにしたい……というもの。拝見すると、この依頼事項のすべては実現されているようだ。このあたりも、Mさんがこの家に「不満点はまったくありません」という大きな理由だ。
1階はご主人、2階は奥様の好みにコーディネイト
さらに観察を続けると、玄関左側の部屋はスロットカーのコースが部屋を専有していた。「ガレージだけではなく、1階全体がだんだん私のスペースになってきたんです」と、Mさん。まるで不可抗力でそうなってしまったような言い方だが、間違いなく確信犯。もはや1階はすべて、階段の裏側に至るまでMさんの趣味のアイテムで埋め尽くされていると言っても過言ではない。しかし、取材時のわれわれのやり取りを終始笑顔で見守るM夫人は、1階がMさん専用の空間になっていることを、少しも苦にしていない様子。それもそのはず、2階は奥様が過ごしやすく、かつ家事がしやすいようにデザインされていたのだ。
2階に上がってまず目につくのは、広いガラス窓のほぼ全面を覆う桜の存在だ。満開の時期はさぞかし壮観だろう。そんな桜を愛でるために、そしてより開放的な空間作りのためにキッチンフロアは1段レベルを低く作られている。また、ガレージ付近のイタリアンな雰囲気とは異なり、2階はアジアを感じさせる空間であることも特徴。このあたりのコーディネイトは、「いろいろなデザインを見て回って、いいところをチョイスしました」と言うM夫人の希望どおりだ。
2年間住んでみて、2人とも大満足の様子だが、じつはMさんは、もう1台ビルトインできるようにすればよかったかも……と考えている。その理由は、あまり車に興味のなかった奥様が、少しずつ影響され始めてきているからだ。増改築のスペースは十分以上にある。奥様専用車を入れるためのガレージが新たにデザインされる日は、そう遠くないかもしれない。そんな様子も、桜が静かに見守るのだろう。
【趣味のガレージを備える桜の家 設計・監理 ポウハウス 一級建築士事務所 橘 淳男】
■施主であるMさんからの希望を聞いたうえで、ガレージ内の車を見る視点を低くするようにデザイン。また、階段の裏に小さな趣味の空間を設けることも提案した。ここには、Mさんの好きな自動車関連雑誌やグッズが置かれているが、とくに書籍類がガレージ内にあると、雰囲気が変わってしまうのでここに置いてはいかがか、と。また、シャッターを開けて作業をしているときに濡れにくいことと、少し大きめの車を入れても大丈夫なようにガレージ出入り口に大きめの庇(ひさし)を設置した
■主要用途:専用住宅
■構造:木造軸組
■敷地面積:329.08平米
■建築面積:66.10平米
■延床面積:112.65平米
■設計・監理:ポウハウス 一級建築士事務所 橘 淳男
■TEL:0120-321-549
【関連URL】
※カーセンサーEDGE 2014年11月号(2014年9月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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