【発掘! あの頃の試乗レポート Vol.3 】1990年 三菱 GTO|280馬力を生かす4WDの走りが魅力!
2020/02/16
あの車のデビュー当時を振り返る
創刊36年目(2020年1月現在)を迎えるカーセンサーが、過去の試乗記を発掘し、今あえて紹介していくシリーズ。
今回は、1990年発売のカーセンサー Vol.137の記事「NEW CAR SENSOR」より三菱 GTOが登場したときの試乗レポートをWEB用に再構成してお届けする。
なお、本記事執筆者であり現在も活躍されているジャーナリストの石川さんより、当時を振り返りコメントをいただいたので、合わせてご覧になってほしい。
<石川さんのコメント>
当時の三菱は、モータースポーツやスポーツカー開発に熱心だった。
GTOも87年の東京モーターショーに展示されたHSCという2シーターの実験的スポーツカーをベースに開発され、市販されたものだった。
フロントエンジン、ツインターボ、4WDというほかに三菱グループの知恵と技術が集結していた。
背が低く、幅が広い車体は街中でも目立った存在。テストの時に困ったのはヘルメットを被ると天井にあたってしまい、ベストなポジションが取れなかったこと。
発表当時はレースにも出場するということだったが、バブルの崩壊ということもあり、実現はしなかったのは残念。
リアを流す走りが楽しい ABSの性能も優秀
シートをいつもよりもやや前にし、ハンドルをガッチリとおさえこむようなポジションをきめる。5速マニュアルミッションのポジションを確認。クラッチは重くないが、西ドイツゲトラーク社製のミッションはやや不確実なシフトフィーリング。ミスシフトをしないように気をつけなければ。
ここは宮城県仙台市郊外の菅生サーキット。GTOの限界試乗会の会場なのだ。
パドックの信号が青になり、コースイン。1速で引っ張って本コースに入る。1週目はコースの状況を見るために軽く流す。といっても、7000rpmのレッドゾーン入口まで回すと、1速70km/h、2速で130km/hに達する。かなりハイギアードな設定だ。
最終コーナーを駆けあがり、グランドスタンド前を通過。早くもスピードメーターは180km/hの先を示している。試乗車はスピードリミッターがはずされているのだ。4→3→2速とシフトダウンして第1コーナーに突っ込む。アドバンHF 225/55R16という太いタイヤ+フルタイム4WDシステム+4WSのサスペンションもかなりふんばる。2、3コーナーとクリアしていくが、限界でのすべり出しは意外に早い。
でもすべり出しからの車の動きがおもしろいのだ。アクセルON、OFF、ハンドルでの修正。いろいろな方法で姿勢を立て直すことができるのだ。そして、極めつけはアンチロックブレーキを利用したコーナリング。オーバースピードでコーナーに突っ込んでいき、コーナーに入ると、思いきりブレーキを踏む。同時にハンドルをきると、GTOは減速しながらコーナーをクリアして、次のコーナーに目がけて走って行くのだ。これはアンチロックブレーキのおかげだが、とくにGTOの場合、アンチロックの作動のタイミングが早すぎないので、スポーツ走行にも使えるのだ。
もちろん限界を超えての走りはパニックになるのだが、すべり出してから、パニックになるまでの間に、いくつかの修正手段があるのだ。これは安全性の高さの証明になる。
ただし、気になったのはブレーキ性能。レーシングスピードでのフェード現象が比較的早めに発生するのだ。もう少しパッドやディスクの冷却能力にもお金をかけてほしかった。
それにしても菅生サーキットでのGTOのラップタイムが、スカイラインGT-Rとほぼ同じタイムというのには驚いた。メーカーではツーリングカーレース出場も考えているというから、いまから楽しみ。果たしてGTOがGT-Rの勝利をはばむことができるのだろうか。
低回転域から充分かつ強力なトルクを発生
サーキットでの走りは限界性能のチェックだが、一般道でのGTOの走りはどうなのかもチェックしてみた。
まずV6の3Lツインターボ280ps、42.5kg-mのエンジンだが、トルクの太さはケタはずれ。5速ミッションのギア比がハイギアードなことはすでに書いたが、1000rpmあたりからでも確実に加速していく。ちなみに4速ギアの1000rpmは40km/hだが、ここからアクセルを踏みこんでも、何のためらいもなくGTOは加速を開始する。そのまま状況さえ許せば、オーバー200km/hの世界に到達するのだ。
100km/h走行での4速は2600rpm、5速ギアでは2100rpmにすぎない。これはあまりにもハイギアードすぎて、シフトする楽しみがなくなってしまいそう。もう少し、ローギアードにして各ギアを使いこなす楽しみを残してほしかった。
サスペンションは前がストラット、後ろはダブルウィッシュボーンで、これに電子制御サスペンションのECSが組み合わされている。TOUR/SPORTSの2モード切り換えだが、スポーティに走る人はSPORTSモードのほうが、タイヤのすべり出しが遅く、コントロールもしやすいはずだ。
乗り心地は、40~50km/hのタウンスピードでも意外に堅くはなかった。これはタイヤとサスペンションがマッチしているからだ。
また、スイッチによりエキゾーストの音を2段階に切りかえることのできるアクティブエキゾーストシステムは、実走行中には、あまり音の差は感じなかった。あまり意味のないアクセサリーだと思う。
GTOの車両価格はこのツインターボ車で398.5万円。NSXの約半分、GT-Rよりも安くて、これだけの性能というのはかなり買い得感のあるスポーツモデルといってよいだろう。
ATとの相性も良く軽快な走りが楽しめる
GTOのバリエーションはツインターボのほかに、ノンターボモデルもある。こちらはV6の3L DOHCだが、ツインターボの8.0という圧縮比を10.0に高めたタイプ。225ps、28.0kg-mという数値は、フェアレディ300ZXのノンターボ3L 230ps、27.8kg-mと好勝負だが、車両重量は約100kgほど重い。これはフルタイム4WDなどのためだろう。
このノンターボモデルには5速マニュアル車のほかに、4速オートマ車も用意されている。4AT車に短時間ながら一般道で試乗できたので、そのフィーリングも書いてみたい。
ツインターボモデルに乗ったあとの市場だったので、実はあまり走りは期待していなかった。ところが、Dレンジにシフトして走り出すと、意外によく走る。スタートからのもたつきもないし、1500rpmあたりからの中間加速も、アクセルの動きに即座に反応してくれる。
ツインターボもノンターボも車両の重さを感じさせない軽快さがあるのだ。
サスペンションはECSなしのストラット/ダブルウィッシュボーンの組み合わせだが、ツインターボ車よりも全体に堅めのセッティングになっており細かい凸凹もハンドルを通して、伝わってくる。
タイヤはアドバンHF 225/55R16なので、これはツインターボと同じだ。
フロントシートの居住性は、スポーツカーとしては満足できる広さは確保されている。リアシートも160cmクラスの人ならば短時間走行には耐えられそう。リアシートの背もたれは2分割可倒式なので、実用性も高い。
このノンターボのGTO・AT車は343.5万円。Zの2シーターよりもわずかに安く買い得の1台といえる。
GTO
新車時価格帯:333.5万~398.5万円
中古車価格帯:38.3万~500万円
中古車流通量:22台
※上記は2020年2月6日現在のデータになります。
※1990年発売のカーセンサー Vol.137の記事「NEW CAR SENSOR」をWEB用に再構成して掲載しております。
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