スバルが世界標準にまで進化させた新型フォレスター
カテゴリー: スバルの試乗レポート
2018/07/15
プラットフォームを一新した5代目
スバル フォレスターは1997年の登場以来、ワゴンから派生したかのようなニッチなモデルのクロスオーバーSUVとして、徐々に販売台数を伸ばした。
しかし、現在ではアメリカを中心にスバルの中核をなすモデルにまで成長している。
初代は乗用車ワゴンを力強くした印象が強く、ずんぐりとしたいでたちにハイパワーのターボエンジンを搭載した、新しいジャンルのモデルであった。 アウトドアに精通した、ハイパワーと高い安定性を求めるユーザーに相応しいマニアックな装いも、当時のスバリスト(スバルファン)にはグッときたに違いない。
そして、ワゴンから発展したSUVではなく、本格的なクロスオーバーSUVのスタイルのデザインとなったのが2007年から発売を始めた3代目である。
また、従来の進化版ではあったが、2012年より販売された4代目では、プラットフォームのデザインに骨太な雰囲気を取り入れた。
さらに質感向上にも努めて、既存のラフロード性能に加え付加価値も高めようとした。 ゆっくりであるが、徐々に質と性能を向上させて、フォレスターは成長してきたのである。
このように過去で積み上げたポテンシャルをさらに向上させたモデルが、今回試乗した5代目の新型フォレスターである。
デザインはキープコンセプトであり、ブレのない一貫性を感じさせる。
しかし、全く中身は違う。すでにインプレッサでお馴染みのSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用している。
このプラットフォームは乗用車の車高でも、SUVのように高い最低地上高でも性能に甲乙のない部分をモットーにしている。
カタログ上での話はこの辺にして、実際に伊豆修善寺のクローズコースで試乗したのでお伝えしたい。
フォレスター初のハイブリッドエンジン
エンジンはNA2.5リッターと新たなパワープラントとして登場したNA直噴2.0リッター+モーターの“e-BOXER”と呼ばれるハイブリッドユニットである。
e-BOXERの特徴は、走り出しの燃料がかさむ部分をモーターで走らせて、その後、動力をエンジンにバトンタッチしたときのなめらかさにある。また、SIモードセレクトでSモードに切り替えると、低中速時の負荷のかかる部分でモーターが後押ししてくれ軽やかな加速性能を得られる。
まずは新たに加わったe-BOXERの18インチ仕様からの試乗だ。
乗り込もうとドアを開けて閉じた瞬間に、以前とはまったく違う剛性感を感じることができる。
パワーウインドウの開閉でも、インナーパネルがひしげてしまうようなこともない。細かい部分だがこれはかなりの改善点だ。
ソフトパッドをダッシュボードの上部にとどめず、ドアパネルの内側にも多用している。質感も最近のスバル車の中で最も作りが良い。
始動の際、モーターで発進できる程度の負荷を与えながら走り出してみる。
サスペンションのしなやかさが明確に感じられる。初期の段階からよく動くエンジンが始動して加速し、時速60キロ程度でスラロームを走る。
強風と雨というコンディションだったが静粛性はとても高い。地に足が着いたセッティングの恩恵は、安定感の高さで得ることができる。
シャシーもすこぶる安定しているので、ボディーがたわむことは微小だ。加えてステアリングの安定感も高いため、確実に車の動きをとらえるため高い操作性を実感できる。
車輪と路面が擦れ合うスキール音は皆無で、無駄なくタイヤを接地させて現状のポテンシャルを最大限に使う。とても安心感があるハンドリングだ。
高速コーナーでもカーブに沿った走行がさらに容易になった。
人によっては先代のフォレスターの方が機敏と感じるかもしれないが、心地よく全天候で安定感あるセッティングは新型フォレスターでしか味わえない。
Iモードで負荷を与えると吸気のこもり音が少々気になる。この騒音が改善できればなお静粛性は向上するが、この吸気音が「加速している」という高揚感につながる人もいるだろう。
続いての試乗はNA2.5リッターだ。たった500ccのアドバンテージであるが運転性はまるで違った印象だった。
e-BOXERと比べてとても加速性があり扱いやすい。それでいてエンジン音は静かだ。
静粛性も高くアップダウンが激しいコースではあったが、ストレスを感じさせない。
ぬかるんだ急斜面をものともせずに走破
アスファルトはこの辺にして、当日は特別なステージも用意されていたのでそちらも加えてリポートしたい。二輪のオフロードコースを改造した、特別なラフロードが用意されていたのである。
これこそスバルの4WDの性能を発揮できる非日常的なラフロードというか、タイヤが前後や対角線に浮いてしまうタフな四輪駆動用のオフロードコースなのである。
一見すると、決して乗用車ベースのSUVでは走れるようなコースではない。
用意されていたのは、X-BREAKの2.5リッター17インチのオールシーズンタイヤ装着車だ。あいにくの雨でコースはヌタヌタの泥濘地と化している。
タイヤの目は完全に詰まっていて丸坊主の状態だ。タイヤの性能も何もあったものではない。
しかし次の瞬間、四輪に最適な動力を伝えながら前に進むのだ。唐突ではなくジワジワと前に進む。一歩一歩確かめながらという印象だ。
「頑張れ!」と言いたくなるような状況であるが、フォレスターは黙々と仕事をこなす。ステアリングを握りながらこの性能に鳥肌が立つ。これがスバルの真骨頂なのだ。
さらに前後二輪が浮いたときは静的時のねじれ剛性が、最も真価を問われる場面である。そんな状況でも「みしみし!」ともいわずに、ねじれにじっと耐えるのだ。
しかもここで、後席のドアを何気なく開けて戻してもしっかり閉まる。これはモノコックボディのモデルとしては通常では考えられない剛性の高さである。
アプローチアングルを最大限に使った25度の傾斜がある泥の道も、フォレスターを信じてただアクセルを踏んでればタイヤが空転しようが中に浮こうが制覇できる。
この性能と質感が300万円を切る価格から用意されているということに驚かない人は、車を知らない人だと言えよう。
スバルの本当の良心は価格以上のパフォーマンスを提供すると同時に、フォレスターの質感をスバルの中で最も向上させたという点にある。
スバリストが長年親しみを感じる部分は、価格以上の性能であると思う。
設計要件を忠実に守るからこそ、少しずつの改良が施される。大きな改良よりも地に足が着いた改良なのだ。
エンジニアリングを感じるモデルがまたひとつ誕生した。
【SPECIFICATIONS】※試乗車
■グレード:X-BREAK ■乗車定員:5名
■エンジン種類:水平対向4気筒DOHC ■総排気量:2498cc
■最高出力:136(184)/5800[kW(ps)/rpm]
■最大トルク:239(24.4)/4400[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:CVT
■全長x全幅x全高:4625 x 1815 x 1730(mm) ■ホイールベース:2670mm
■ガソリン種類/容量:レギュラー/63(L)
■JC08モード燃費:14.6(㎞/L)
■車両価格:291.6万円(税込)
あわせて読みたい
- トヨタと共同開発中のピュアEV、スバル ソルテラ
- SUVじゃなくていいじゃない! この夏、「キャンピングGT」に乗ろう!【カーセンサー8月号】
- 【試乗】新型 日産 ノート|市販モデルではプロトタイプのネガ部分が消え、スタビリティの高さが際立った
- ドア開閉音からも分かる卓越したビルドクオリティ、空冷時代だからこそ生きたポルシェの技術力
- 【試乗】新型 トヨタ MIRAI|日本が生んだ大人のサルーンは、世界初の技術とともに進化を続ける
- 【試乗】マツダ MAZDA3ファストバック|その特徴的なデザインにも負けないパワーユニットへ進化した「SKYACTIV X」
- 小沢コージが自動車界の勇者・救世主を探すべく「激レア変態車」の取引現場、白金の魔窟を直撃!【カーセンサーニッチ】
- 【名車への道】’14 BMW i8
- 【マンガ】ホンダ N-ONE(現行型)ってどんな車? 詳しく解説【人気車ゼミ】
- 必要なのはカーナビより衝突軽減ブレーキ!? 安全装備が令和の“三種の神器”の筆頭候補に!