▲WRXは、同社のインプレッサよりも上位車種に位置するが、新型インプレッサに採用した“スバルグローバルプラットフォーム”ではなく、既存のプラットフォームを使用。インプレッサの出来栄えが良かっただけに、走行フィーリングなどの品質面では面目を保たなければいけない。こういった背景から、今回の開発陣の苦労が容易に想像される ▲WRXは、同社のインプレッサよりも上位車種に位置するが、新型インプレッサに採用した“スバルグローバルプラットフォーム”ではなく、既存のプラットフォームを使用。インプレッサの出来栄えが良かっただけに、走行フィーリングなどの品質面では面目を保たなければいけない。こういった背景から、今回の開発陣の苦労が容易に想像される

初期型は良い意味で期待を裏切るポテンシャルを持っていた

スバル WRXは2014年の夏に発売以来、大人のスポーツセダンであることには変わりはないが、今回のマイナーチェンジで、大人の魅力はどこまで進化したのだろうか。

WRXにはS4とSTIという2種類のモデルがある。S4は300psを発生する2L直噴ターボにスポーツトロニックと呼ばれるCVTを組み合わせたモデル。一方、STIは同じ2L直噴ターボから絞り出される308psを6速MTで操る、スポーツ性を強化したモデルである。このハイパワーユニットは信頼性もパフォーマンスも抜群である。

▲本記事は、2017年夏に某所を貸し切って行われた試乗会のレポートである。写真はWRX STI TypeS(クリスタルホワイト) ▲本記事は、2017年夏に某所を貸し切って行われた試乗会のレポートである。写真はWRX STI TypeS(クリスタルホワイト)

それぞれのグレードに採用されたダンパーでキャラクターが分かれる

まずはS4から試乗してみる。

S4は、“男っぽいが汗臭くない”スポーティセダンというイメージがぴったりくるモデルだ。S4のドライバーを見るたびに、何か“男のこだわり”を持っているような方が多いように感じる。

グレードはGTとGT-Sの2種。最も大きな違いはダンパーだろう。GTはKYB製のダンパー、GT-Sはビルシュタイン製のダンパーを装着する。GTに装着されたKYB製のダンパーの方が、日本での速度領域では路面からの振動入力を心地よくいなしている印象。GT-Sのビルシュタイン製はブレーキング時のフロントの剛性感は高いが、高速領域でややしなやかさに欠ける印象を受けた。

今回の改良によって、ダンパーの動きがよくなっていることから、乗り心地は双方ともかなり向上したと言えるだろう。特に濡れた路面での安心感は相当増しているはずだ。

さらに独自のAWDが組み合わさることによって、連続するコーナーでもタイヤがスキール音を上げることなくスイスイと駆け抜けていく。ドライバーは運転が上手くなったように感じられるはずだ。

▲WRX S4 2.0GT EyeSight(ピュアレッド) ▲WRX S4 2.0GT EyeSight(ピュアレッド)
▲前席インテリア(パナソニック ビルトインナビ) ▲前席インテリア(パナソニック ビルトインナビ)

STIは高級なハイパフォーマンスモデルと言える“マシン”に進化

続いて、ハイパフォーマンスモデルのSTIだ。

クラッチは少し重めで、四輪にパワーを遺憾なく配分するための強度を感じる。シフトフィールもすこぶる良く、以前よりもクラッチの切れが良くなった印象。

コーナー手前で一気に減速するためブレーキを踏むと、踏み始めからリニアに制動力を得ることができた。6パッドのブレーキキャリパーのタッチフィールは剛性感もあり文句なく素晴らしい。

専用レカロシートは心地よくホールド性も良かった。

エンジンだが、S4と比べると一昔前のハイパワー車を思わせる出力特性。これが、パワーバンドに入ったときに本気で攻めたくなるような気持ちにさせてくれる。

既存のSTIはAWDのセッティングを電子制御と機械式を組み合わせた方式であったが、今回からフル電子制御タイプに変更している。この進化したセッティングもあってか、中速から高速のコーナーでは、S4よりも速度レンジを一つ上げたレベルで抜けていくことが可能だ。コーナーを抜けていくときの横Gが、S4とは全然違う。つまりコーナリングスピードが違いすぎるのだ。

それでいて、ものすごい安定感。高速から低速へと変化するタイトなコーナーでも、強力な制動力の恩恵もあり一気に減速。そして姿勢を乱すことなく、ステアリングを切った方向へ車が向きを変えてくれるのだ。

驚いたことに、このようなシーンでも決して乗り心地が悪いわけではない。ハイパワースポーツセダンとしてのスペックは圧倒的であり、加えて高級感をも手に入れたことが感じ取れた。

▲WRX STI Type S(WRブルー) ▲WRX STI Type S(WRブルー)
▲前席インテリア(パナソニック ビルトインナビ) ▲前席インテリア(パナソニック ビルトインナビ)

技術屋ならではの商品進化を味わえるモデル

今回は、クローズドのコースだからこそ試せる走り方をあえてやってみた。例えば、コーナーでのややラフなステアリング操作などだ。だが、挙動を乱すことなくスムーズに抜けていける性能を発揮してくれた。このことから、新しいWRXはコーナーリング性能の高さが一層高まったという印象を持つ。さらに、男らしすぎたSTIも“ジェントルなMT使い”になれるかもしれない、と思えるほどの進化が感じられ、中身を相当刷新していることがわかる。

今回の改良内容は、エンジニアリング主導の会社ならではのものと言えるだろう。スバルは今、業績が良いこともあり技術者が力量を出し切れる環境にある。結果として、これだけ素晴らしい改良型を世に出すことができたのだ。車好きにはもちろんだが、こういった技術力を味わえるWRXに、一度乗ってみることをオススメしたい


【SPECIFICATIONS】
■グレード:WRX S4 2.0GT EyeSight/2.0GT-S EyeSight ■乗車定員:5名
■エンジン種類:水平対向4気筒DOHC+直噴ターボ ■総排気量:1998cc
■最高出力:221(300)/5600 [ kW(ps)/rpm]
■最大トルク:400(40.8)/2000-4800 [N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD(AWD) ■トランスミッション:CVT
■全長×全幅×全高:4595×1795×1475(mm) ■ホイールベース:2650mm
■車両重量:1540kg
■ガソリン種類/容量:ハイオク/60(L)
■車両価格:336.96万~373.68万円(税込)

■グレード:WRX STI/STI Type S ■乗車定員:5名
■エンジン種類:水平対向4気筒DOHC+ツインスクロールターボ ■総排気量:1994cc
■最高出力:227(308)/6400 [ kW(ps)/rpm]
■最大トルク:422(43.0)/4400 [N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD(AWD) ■トランスミッション:6MT
■全長×全幅×全高:4595×1795×1475(mm) ■ホイールベース:2650mm
■車両重量:1490kg
■ガソリン種類/容量:ハイオク/60(L)
■車両価格:386.64万~406.08万円(税込)

text/松本英雄
photo/尾形和美