エントリーモデルではない、“新テイスト”のレクサス

2010年のジュネーブモーターショー&パリサロンで発表されてきた、レクサスのニューモデルであるCT200hのプロトタイプが日本でも公開された。短時間ではあるが試乗する機会にも恵まれた。

「やはり写真と実物は違うのか」と言うのが、プロトタイプのCT200hを最初に見た時の素直な印象だ。ボディサイズは全長4320×全幅1765×全高1430mm。ハイブリッド専用車である同社のHS250hはもちろん、全幅を除けばプリウスよりもコンパクトなボディサイズだ。
  • レクサス CT200h 走り|日刊カーセンサー
  • レクサス CT200h リア|日刊カーセンサー
↑注目はレクサスのスポーツイメージを具現化する「Fスポーツ」。17インチホイールを装着しエクステリアも専用の装いとなるが、乗り味はスポーティなだけでなく路面の追従性も高い(左) 写真右のバージョンCのほか、CT200hは全部で4グレードが設定されると予想される(右)
特に気になったのはエクステリア。ボディ形状としてはいわゆる5ドアハッチバックなのだが、ルーフが後端にいっても「だら~ん」と下がらず伸びやかな造形をしている。ちょっとオーバーに言えば、全長の短いステーションワゴン風にも見える。この辺はレクサス側の狙いがあるようで、空力特性の向上だけではなく、後席の頭上回りの余裕など実用面をキープしながら、スポーティな雰囲気を実現しているようだ。

またIS Fなどからさらに進化したようにも思える、独特のフロントグリルの造形や薄型のヘッドライトなど、レクサスのコンセプトに沿いながらも、新しさを出そうとしいう意識が感じられる。ポジション的(たぶん価格も)にはエントリーモデルに位置するのだろうが、レクサスにこの概念はほぼないと言っていいだろう。「あくまでもCT200hはCT200h」。レクサスの新しいポジションを担う、期待作であることは間違いない。

ハイブリッドに走る楽しさをプラス

エンジンは1.8Lで、同社ではおなじみのハイブリッドシステムのTHS IIを搭載。プロトタイプのスペックを見る限り、出力/トルク/圧縮比など、プリウスとまったく同じものである。また、レギュラーガソリン仕様という点も共通だ。

車重はCT200hのほうが、ほぼ50kgほど重くなるが、しかし乗ってみて驚いた。「絶対こちらのほうがスポーティ」なのである。安直な言い方で申し訳ないが、足回りにヤマハ製のパフォーマンスダンパーをレクサスとして初搭載したり、ボディのスポット溶接を増やすなど、新しい試みはかなり多い。

そして今回新たに搭載されたドライブモードセレクトスイッチやパドルシフトなど、見た目の“演出”も手伝って、その走りは硬質な部類に入る。このCT200hの走りが、ドライバーの感じ方の差こそあれ、誰でも感じ取れるという点がいい。さらに言えば、静粛性の高さも見事だ。
  • レクサス CT200h インパネ|日刊カーセンサー
  • レクサス CT200h エンジン|日刊カーセンサー
  • レクサス CT200h フロント&リアシート|日刊カーセンサー
↑レクサスのハイブリッド車としては初となる、パドルシフトを備えたステアリング(右) プリウスと同じユニットだが、エンジンカバー類など見た目も少しゴージャス。気になる10・15モード燃費は33.0km/Lくらいと予想(中) フロントシートの着座位置はかなり低く感じる。リアシートは必要十分な広さを確保(右)
正直に言うと、トヨタ車の中で手放しで褒められるFF車は、今までオーリスくらいしかラインナップがなかった。しかしCT200hは、プロトタイプながらかなり完成度の高い、十分期待できる車だろう。別の見方をすると、プリウスと同じエンジン+THS IIというユニットでありながら、制御の変更でこれだけ体感上の走りを変えることができるという点は、THS IIにもまだ伸びしろがある、という証明でもある。

そんな気になるCT200hの発売時期や価格だが、来年1月の発表で価格はエントリーグレードで345万円と予想される。いずれにせよ「環境問題も気になるが、ただHSだとちょっと大きかった。それでもレクサスのテイストを味わいたい」という人には、十分魅力的な一台である。

Text/高山正寛 Photo/尾形和美