ルノー クリオR.S.|海外試乗

スムーズにAT使いできる5ドアボディの奥ゆかしさ。それでいて旦那衆は峠でサルになれる奥深さ。男女の均衡を50:50でほぼ完璧に実現している点がきわめてフランスっぽい1台といえる。内装トリムのアクセントが赤のみという点だけプチ減点対象だ

R.S.史上最強のエレガント系アスリート

すべてがタダ者でない証

一見、ルノークリオ(ルーテシア)R.S.のスペックにはナメられそうな要素が満載だ。ボディは5ドアのみ、エンジンは日産ジューク起源の1.6Lターボ、MTに代わりゲトラグ製の6速デュアルクラッチEDC。7速ではないが2ペダル化は、間口の広さで先行する独伊のライバルにやっと肩を並べたかのようだ。

が、200ps&240Nmのパワーとフラットトルクの余裕、シフトマナーの滑らかさと鋭さでは、最新鋭のクリオR.S.に分がある。足回りのストローク感も勘案すれば大げさでなく、Dレンジ限定で乗るには「もっとも家族向けなホットハッチ」。しっとりしたステアリングフィール、ソフトなアタリの乗り心地、かつ高速巡航でBセグ離れした安定性、じつはそのすべてがタダ者でない証だ。

甘辛両刀なホットハッチの正常進化

ローンチコントロールやESPオフを含むモードが選べるR.S.ドライブ、トルクベクタリングなどアツい新機軸も満載ながら、ドライバーを夢中にさせる決定的要素は2つ。

まずフロントサスのダンパー・イン・ダンパー。今回は公道でスポール・シャシー、ミニサーキットでカップ・シャシーを試したが、いずれの状況でも的確なバンプ&リバンプ、奥に行くほど粘っこく解像度の高いロードホールディングを見せてくれる。

もう一つは日産GT-R譲りのマグネシウム製パドルシフター。EDCのキレ味を引き立てつつシフトダウン時に長く握れば2、3段を一撃でオトせる。

新機軸は多いが、どれも練れていてポン付け感は皆無。甘辛両刀なホットハッチの正常進化にほくそ笑むこと請け合いだ。

カップ・シャシーはスポール・シャシーより車高が3mm低く、ダンパー剛性も+15%。両者とも18インチを余裕で履きこなしていた

カップ・シャシーはスポール・シャシーより車高が3mm低く、ダンパー剛性も+15%。両者とも18インチを余裕で履きこなしていた

着座位置は設計段階から低められスポーティさを演出している

着座位置は設計段階から低められスポーティさを演出している

ノーマル/スポーツ/レースが選べる「R.S.ドライブ」を採用。レースモードではフルMTでESPもオフ

ノーマル/スポーツ/レースが選べる「R.S.ドライブ」を採用。レースモードではフルMTでESPもオフ

SPECIFICATIONS

グレード CLIO R.S.
駆動方式 FF
トランスミッション 6DCT
全長×全幅×全高(mm) 4090×1732×1432
ホイールベース(mm) 2589
車両重量(kg) 1204
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHCターボ
総排気量(cc) 1618
最高出力[ps/rpm] 200/6000
最大トルク[N・m/rpm] 240/1750
Tester/南陽一浩