▲パサートオールトラックが次世代プラットフォーム&4MOTIONに加え、パワフルなディーゼルターボを搭載しフルモデルチェンジ。その走りの進化を一般道と雪深い山道で試してきた ▲パサートオールトラックが次世代プラットフォーム&4MOTIONに加え、パワフルなディーゼルターボを搭載しフルモデルチェンジ。その走りの進化を一般道と雪深い山道で試してきた

クロスオーバーは乗り心地のセッティングが難しい

2012年に初代パサート オールトラックを試乗したことがある。

ベースとなるパサートよりも30mmほど車高を上げた初代オールトラックだが、2Lガソリンターボの加速は良かったものの、サスペンションのしなやかさに欠けていて乗り心地の完成度はイマイチ感心するものではなかった。

リフトアップをすると、エンジン搭載位置の高さから振動が大きくなる。またサスペンションも、ストロークを抑制する関係で突っ張った感覚になる傾向は否めない。それゆえ、乗り心地のしなやかさが失われてしまうのである。

また、パサートの7代目にあたるこの時点では、まだ最低地上高を上げるクロスオーバーモデルを見込んだ設計がされていないプラットフォームだったことも原因だろう。

この記憶から、初代のオールトラックに対しては多少ネガティブな印象をもっていた。

次世代プラットフォームを採用した新型に期待も高まる

▲パサートヴァリアントに対し最低地上高を30mmほど高め、悪路の走破性を高めたクロスオーバーモデル。スタイリングは良い意味でシンプル。シティユースからアウトドアまでシーンを選ばないデザインといえるだろう ▲パサートヴァリアントに対し最低地上高を30mmほど高め、悪路の走破性を高めたクロスオーバーモデル。スタイリングは良い意味でシンプル。シティユースからアウトドアまでシーンを選ばないデザインといえるだろう

パサートが8代目へ進化したとともに、オールトラックもフルモデルチェンジで2代目に。新型オールトラックは、MQBという強靭なプラットフォームを手に入れた。

この次世代プラットフォームに対しては、ボディ剛性の心配は無用だろう。

ゆえに、ステーションワゴンのヴァリアントに比べて全高で50mm高く、最低地上高は30mmほど高いクリアランスを確保しているとはいえ、試乗前からすでに期待は高まっていた。

この進化した新型を、天気の良い一般道と高速、そして秘めたパフォーマンスを引き出せる雪深い山で試乗したので、その結果をお伝えしたい。

エンジンはパワフル、乗り心地も進化していた!

新型 フォルクスワーゲン パサートオールトラック
▲荷室が広くクロスオーバー車ならではの道を選ばない性能に加え、パワーにこれだけ余裕があれば、長距離移動のレジャーもノンストレスで対応できる1台といえるだろう。一方、高速道路の本線合流前のコーナーなどでは、車体のロールを抑えるべく粘るセッティングだ。車高の高さがあってもまったく不安はなく、公道の乗り心地はすこぶる良い ▲荷室が広くクロスオーバー車ならではの道を選ばない性能に加え、パワーにこれだけ余裕があれば、長距離移動のレジャーもノンストレスで対応できる1台といえるだろう。一方、高速道路の本線合流前のコーナーなどでは、車体のロールを抑えるべく粘るセッティングだ。車高の高さがあってもまったく不安はなく、公道の乗り心地はすこぶる良い

乗用車の車高を上げているクロスオーバー車のため、本格的なSUVに比べると乗り降りしやすい高さだ。

初代の2Lガソリンターボエンジンに比べると、新型の2Lディーゼルターボは急激なトルク変動もなく、扱いやすく乗りやすい。

しかも、意図的にアクセルを深く踏み込めば、その加速力はガソリンターボ以上である。

初速はもちろん、高速道路での合流や追い越しといった中間加速も鋭い。まるでスポーツカーのような爽快な加速が可能だ。

おとなしそうな見た目とのギャップはかなりあると思う。

アイドリング時にエンジン音や振動を多少感じるが、このパフォーマンスと燃費を考えたら容認できる程度のレベルだ。

またツインクラッチの制御が旧型よりもかなりソフトになっているため、ギクシャク感なく走ることができる。

そして、パサートオールトラックに採用している4WDシステムだが、VWの考え方による4MOTIONという油圧多板クラッチを用いたタイプで、フロントのトルク配分が100~0から前後最大50:50まで、路面状況に応じて配分が変動するシステム。

普段は合理的にFFで走り、タイヤの滑りが生じた際、瞬時にトルクを後輪に50パーセントまで移し安定性を高めるシステムだ。

この4WDシステムの特性だが、リニアでコントロール性はとても良好であった。

例えば、雪上など滑りやすい路面でオーバースピード気味にコーナーに侵入してしまったようなシーンでは、アンダーステアの後、緩やかに後輪が滑りだす。

このようなとっさのときでも、焦らずにステリングを最小舵角に切ったまま、アクセルを緩やかに開ければ前後輪に的確なトラクションがかかり自然と旋回していく。

小細工は使っていないが奇をてらわない素直な特性である。
 

新型 フォルクスワーゲン パサートオールトラック
▲しなやかに動く足は、路面追従性の良さにもつながっており、雪上走行においても柔らかい路面にしっかりと足をつけているといった印象をもった。雪のような滑りやすい悪路を普通に走るには、こういった良く動くサスペンションセッティングが路面追従性を増し、滑りを抑制するのだ ▲しなやかに動く足は、路面追従性の良さにもつながっており、雪上走行においても柔らかい路面にしっかりと足をつけているといった印象をもった。雪のような滑りやすい悪路を普通に走るには、こういった良く動くサスペンションセッティングが路面追従性を増し、滑りを抑制するのだ
▲内装は飽きのこない水平基調が特徴。加えて、その質感もこのクラスでは高いといえるレベルだ。ステアリングのからのインフォメーションは少なめ。路面を捉える重さをステアリングからもう少し感じられるセッティングの方が、実は安心感につながると考える ▲内装は飽きのこない水平基調が特徴。加えて、その質感もこのクラスでは高いといえるレベルだ。ステアリングのからのインフォメーションは少なめ。路面を捉える重さをステアリングからもう少し感じられるセッティングの方が、実は安心感につながると考える

進化するスタッドレスタイヤ

▲雪上の試乗車は、ミシュランの新製品スタッドレスタイヤ(X-ICE3+)を装着していた ▲雪上の試乗車は、ミシュランの新製品スタッドレスタイヤ(X-ICE3+)を装着していた

雪上でのコントロール性の良さは、新しいスタッドレスタイヤの性能の影響もあるかもしれない。

このタイヤは不安定な雪上でステアリングを切っても、つま先で立っているような不安定な感じがしないのだ。

トレッド面の部分を均一に雪と接地させながら、特殊なゴムで雪をかみしめるといった印象だ。

メーカーの説明によると、雪を踏み固めて進んでいく力と広い接地面をとってグリップする力のバランスを考えているという。

その性能が発揮されているからなのか、スタッドレスタイヤにありがちなグニャグニャした感じがしなかったのだ。

表面には新コンパウンドの表面再生ゴムを採用し長期の性能維持も図られているという。 スタッドレスタイヤも確実に進化しているのだ。
 

text/松本英雄
photo/尾形和美、フォルクスワーゲン

【SPECIFICATIONS】※試乗車
■グレード:TDI 4モーションアドバンス ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直列4気筒DOHC+ターボ ■総排気量:1968cc
■最高出力:140(190)/3500-4000 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:400(40.8)/1900-3300[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:6AT
■全長x全幅x全高:4780 x 1855 x 1535(mm) ■ホイールベース:2790mm
■ガソリン種類/容量:軽油/66(L)
■JC08モード燃費:17.3(km/L)
■車両価格:569万9000円~(税込)