【試乗】新型 メルセデス・ベンツ EQS|運転席からの景色が新しい、専用プラットフォームで見栄えも走りも特別なEVラグジュアリーのフラッグシップ!
カテゴリー: メルセデス・ベンツの試乗レポート
2022/11/30

BEVでも伝統を受け継いだ上質な走り
メルセデスは重い車を動かすことがとても上手い。大昔の570Kや600プルマンあたりを引き合いに出すまでもなく、現代においてもSクラスやGクラス、マイバッハシリーズなどでかいモデルが売れセンなのだから、それも当然だろう。いわばメルセデスの伝統だ。結論から言ってしまうと、2.5トン級となったEQ=BEVシリーズの最上級モデル「EQS」もその走りのクオリティには感嘆すべきものがあった。
それにしてもEQSの見栄えの特別感は際立っている。これまでのEQシリーズ(EQA、EQB、EQC)は見た目からも容易に想像できるとおり、既存の内燃機関モデル、それもバッテリーの積みやすいSUVスタイルからエンジンを取り去り、電気モーターと大容量バッテリーを積んだ、いわば派生モデルのひとつだったが、EQSは違う。
SUVスタイルではなく、かといってセダンと言ってしまうのも少し違う気がする。3ボックスには見えないからだ。そして、どこをどう見てもエンジンを積んでいたという形跡がない。メルセデスが「ワン・ボウ」と呼ぶキャビンフォワードのワンモーションシルエットは、確かに未来的以外の何物でもないだろう。EQEも同じだ。
つまり、EQSには専用の電動プラットフォームが使われているということ。ハナからエンジンを積む気などさらさらないモデルというわけで、インテリアも含めてこれほど思い切ったデザインとすることができた。
そして、「S」というからにはこれはSクラス相当のBEVだと言ってよい。つまりEQシリーズのフラッグシップモデルである。


日本仕様として発表されたEQSには2種類のモデルが用意されていた。メルセデス・ベンツ EQS 450+と、メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+だ。AMGのフル電動モデルもこれが初である。
450+のフロア下にはなんと107.8kWhという聞いたこともない大容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。電気モーターの出力は333ps(245kW)で“Sクラスの伝統”にのっとって後輪駆動だ。満充電での航続可能距離にも驚いた。WLTCモードでなんと700km! 正味8割がEV界の常識だが、それでも560km。これなら東京から京都まで楽勝で帰ってこれる(もっともこれだけ大きなバッテリーだと帰ってからの充電が大変だ! )。
AMG 53+の方はというと、4MATICと名乗っているように同じモーターを前軸にも配備し、システム出力658ps(484kW)を誇る。航続距離はやや落ちて601kmだ。
日本仕様には特別な装備がある。それは外部給電を可能としたこと。輸入車では初。英断だろう。これほどの巨大バッテリー、地震災害など万が一の際に活用できないというのでは、あまりにもったいなさすぎる。
独特な顔立ちとワンモーションのスタイルばかりに驚いていてはいけない。インテリアだってぶっ飛んでいる。やっぱりこうなったか! と思わず叫びたくなる全面ディスプレイのダッシュボードはMBUXハイパースクリーンと呼ばれ、3つのディスプレイを1枚のガラスが覆って巨大なスクリーンのように見せているのだ。それゆえ物理的なスイッチはほとんどない。ハザードなどを除き、ほぼすべて触覚フィードバック付きのタッチ式ディスプレイで行うという仕組みだ。中国市場やアメリカ西海岸あたりで大いにウケそう!

450+を借り出した。あまりのユニークさに走り出すにも戸惑うかなと思いきや、そこはさすがにメルセデス。特に難しく考える必要はなく、当然だがフツウに操作できる。
感心したのは出力コントロールの緻密さで、ガソリン車のように何気なく右足を踏み込んでも一部の電気自動車のように“いきなり加速”で驚かされるということがない。もちろん、その重量を考えると出足は俊敏なものだったが、人の感覚と恐ろしく離れているということがない。対処できるレスポンスで、しかも右足の微妙な動きにもしっかりと応えてくれる。おかげで街乗りから快適なドライブを楽しむことができた。
それにしても、眼前に広がる景色のなんと“新しい”ことよ。アナログメーターを恋しく思う隙間もない。もうこうなってくると、街中でも積極的に運転支援を使いたくなってしまう。将来的にはダッシュボードが文字どおり1枚ディスプレイになって、いろんな“景色”を現出させてくれるだろうな、と夢想までしてしまった。
とにかく乗り心地も秀逸だ。加えて低重心のフラットライド感がこの上ない安心感を与えてくれる。それでいて自由に動かせる感覚も常にあって、運転をすべて車に任せようなどと一瞬でも思った自分を叱り飛ばしたくもなった。意のままの加速フィール然り、自然なハンドリング然り、ドライバーズカーとしても優秀だと思う。
高速クルージングももちろん上等だ。もとよりSクラスの得意分野で、航続距離700kmを誇るEVとなったからこそ、そこもおろそかにはしなかった。むしろ最近のマイバッハあたりより上質な高速ライドフィールである。
見た目から走りまで、久しぶりにメルセデスの真剣を味わった。






自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
エンジンモデルのフラッグシップ、Sクラス(現行型:6代目)の中古車市場は?

2021年にモデルチェンジをした、メルセデス・ベンツのフラッグシップサルーン。ラグジュアリーな内外装や最新先進装備なども備え、世界のラグジュアリーサルーンのベンチマークとなる。ガソリンエンジンモデルは48V電気システムを用いたISGを搭載するマイルドハイブリッド仕様、さらに2022年にはプラグインハイブリッドのS580e 4MATIC ロングも追加設定された。
中古車市場には約130台が流通しており、そのうち100台前後がガソリンエンジンモデル。2021年に登場した新しいモデルだけに目立った相場下落はなく、中古車の平均価格は約1515万円。エントリーグレードであるディーゼルエンジンモデルのS400dは1200万円からとなっている。
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