本当にディーゼルなのか疑いたくなる、メルセデス・ベンツ S 400d
カテゴリー: メルセデス・ベンツの試乗レポート
2018/12/09
ディーゼルエンジンで作る贅沢品とは
アッパークラスの4ドアサルーンを作るにあたって、全世界の全自動車メーカーがベンチマークとして挙げるのが、メルセデスベンツのSクラスだ。
そのくらい、ドライバーズカーからショーファーカーまで、理想的でバランスのとれたサルーンなのだ。
今回試乗したSクラスは、その中でも新開発の直列6気筒のクリーンディーゼルユニットが目玉。
直列6気筒の良さはなんといっても静粛性だ。
V型6気筒に比べ、振動を打ち消し合いやすいのだ。
かのBMWが、様々なレギュレーションの変化にもめげずに、素性の良い直列6気筒を作り続けていることは皆さんご存じであろう。
内燃機関の王者メルセデスも、直列6気筒を「S450」から投入したが、試乗車の「S400d」はこのガソリン6気筒の基本設計を共通化し、素材を変えて作ったエンジンだ。
実は、Sクラスには、ほんの少し前まで「300h」というモデルがあった。
私が最後にコレに乗ったのが2年ほど前。
2.15Lの4気筒ディーゼルターボエンジンに、27馬力のモーターを装着したハイブリッドモデルだったが、その乗り心地は素晴らしく良かった。
4気筒とは思えない静粛性と踏み込んだときの落ち着いた加速感。
Sクラスとしてまったく不満がなかったモデルだったのだ。
そんな300hの後継的な立ち位置で、今回の「400d」がラインナップされたと聞き、私の期待はいっそう膨らんだ。
試乗コースは品川シーサイドから首都高速湾岸線に乗って浦安までの道のり。
車両を受け取る際、地下の車庫で出てくるのを待っていたのだが、とにかく穏やかな音で近づいてきたので驚いた。
思わず、エンジンフードを見ながら「こりゃすごいね。ディーゼルとは思えない静かさだよ」と担当編集者に話しかけてしまったぐらいだ。
決して大ぶりでではないが包み込まれるSクラスのシートに腰かけ、出発した。
車体の横幅は大きいが、視認性は抜群である。
駐車場の出庫ゲートも、全く不安なく寄せられた。
これが、Sクラス。
キャビンとボディのディメンションが黄金比なのだ。
一般道を抜け、首都高速へ入った。
料金所から加速し、本線へ合流しようとアクセルを踏み込むと、一瞬だけ力をためながらも、決して搭乗者に不安を与えない、上品で俊敏な加速を披露してくれた。
この湧き上がるトルクと加速が、1世紀以上君臨する内燃機関の成熟を体現している。
この日は小雨であったが、ワイパーは瞬時に力強く水滴を一掃。
古い考えかもしれないが、きっとこういった天候のアウトバーンを時速200km以上で走り鍛えられたのだろう……と考えてしまう。
路面からの水しぶきがあっても、Sクラスのキャビン内に不快な音は聞こえなかった。
ディーゼルエンジンは落ち着いた出力を安定して発揮してくれるので、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)時にも、まるで大型客船のように動じない。
私は国内外のモデルをいろいろ乗り込んでテストしてきたが、ACCは今回のSクラスが最も安心感があって制御が緻密だった。
そして、高速での快適性は最も良いと評価できる部類に入る。
一方で、様々なセンシング技術に鼻に付く“嫌味”のような雰囲気がなく上品である。
そして、たとえそれらに頼らずとも、ドライバーズカーとして安定感あるハンドリングを発揮してくれるから素晴らしい。今回のような雨天時でも、だ。
改めて感じた。Sクラスは、いつの時代でも頼れるフラッグシップサルーンである。
メルセデスベンツは、ドライビングアシストの先駆者でもあるが、ここにきて最高峰に達したのではないか。
今回は短い距離での試乗であったが、また長距離運転で性能の真髄を試してみたい。
【SPECIFICATIONS】
■グレード:S400d 4MATIC ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直列6気筒DOHC + ターボ ■総排気量:2924cc
■最高出力:250(340)/3600-4400 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:700(71.4)/1200-3200[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:9AT
■全長x全幅x全高:5125 x 1900 x 1495(mm) ■ホイールベース:3035mm
■ガソリン種類/容量:軽油/70(L)
■JC08モード燃費:13.3(㎞/L)
■車両価格:1160万円(税込)
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