「メルセデスらしさ」の最新バージョン

  • M・ベンツ Eクラス 走り|ニューモデル試乗
  • M・ベンツ Eクラス エンジン|ニューモデル試乗
↑CD値0.25の驚異的空力ボディ。外装色は12色、内装色も5種類用意される(左)E550は排ガス基準50%、それ以外は75%削減レベルで低排出車認定を取得(右)
今度の新型Eクラスのスタイルも賛否両論である。そもそもメルセデスのデザインはどちらかというと「ダサカッコイイ」系だ。時計のロレックスやスノーボードのバートンなども同様で、一番伝統のあるブランドのデザインは、機能や伝統を織り込もうとするがゆえなのだろうか、単純にカッコイイと言いがたいものが多い。ただいずれも時間が経つと悪くないと思えてくるから不思議である。

新しいW212型Eクラスの高速巡航はメルセデスらしく快適だ。最初に乗ったのは湧き出るトルクとスムーズな回転上昇を兼ね備えた素晴らしいV8エンジンをもつE550。減衰力可変のエアサスは、特にスポーツモード時はエアサス独特の嫌な揺り戻しもなく、メルセデスらしい鷹揚なリズムの乗り心地を実現している(コンフォートモードはやや柔らかすぎると感じた)。

BMWばりに太いステアリングは以前と比べるとクイックで、高速巡航中にBMWほどではないが中立付近での落ち着きに欠けることがまれにある。その代わりワインディングではBMWほどではないが軽快な身のこなしをみせる。

全体的にBMW 5シリーズやアウディ A6のほうに歩み寄った感がある

  • M・ベンツ Eクラス インパネ|ニューモデル試乗
  • M・ベンツ Eクラス フロントシート|ニューモデル試乗
↑居眠り防止機能、自動ハイビーム、歩行者保護用アクティブボンネット、9エアバッグにアクティブヘッドレストなど最新の安全装備が標準(左)新開発のシート。立体裁断シート表皮と独立したクッションパッドで疲労防止(右)
E350も基本的な乗り味は似ている。V6エンジンは過剰感こそないものの必要十分な出力を発揮するし、低速域で多少突き上げのあるバネサスもスピードが乗ってくればしなやかなアシになる。唯一機械的な不満を挙げるとしたら7速ATくらいだ。変速のスムーズさは相変わらず天下一品だが、マニュアルシフト時の反応はもはや少々遅いと言わざるを得ない。

全体的な印象として新型Eクラスは車が軽い。言い換えるとBMW 5シリーズやアウディ A6のほうに歩み寄った感がある。昨今のA6の躍進をみるに、市場がこのクラスに求めているものは、よりスポーティな方向なのだととらえるべきかもしれない。個人的には旧来の乗り味濃いSクラスが依然ベストメルセデスだが、そう考えると新型Eクラスの落としどころも悪くはない。前作W211型が引き起こしたブレーキのリコール騒動を受け、今回は3600万kmにも及ぶ走行テストを重ねてきた。てんこ盛りの安全技術やエコへの配慮などと合わせて、そういった部分でのメルセデスらしさも戻ってきている。

ちなみにEクラスには夏にクーペ、秋にAMG、冬には4気筒ターボと4マチック、来春には新規制適合のディーゼル、その後にステーションワゴンと、続々と追加モデルの登場が予告されている。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード E300 E350アバンギャルド
駆動方式 FR
トランスミッション 7AT
全長×全幅×全高(mm) 4870×1855×1470㎜ 4870×1855×1455㎜
ホイールベース(mm) 2875
車両重量(kg) 1710
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V6DOHC V6DOHC
総排気量(cc) 2996 3497
最高出力[ps/rpm] 231ps/6000rpm 272ps/6000rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 30.6kg-m/2500~5000rpm 35.7kg-m/2400~5000rpm
10・15モード燃費(km/L) 9.6 9.5
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/80
車両本体価格 730万円 850万円
(Tester/馬弓良輔(インポートカーセンサーメディアアドバイザー) Photo/向後一宏)