▲ダイハツ タント 外観 ▲2019年7月に発売になった新型のダイハツ タント。小さな子供から高齢者まで、あらゆる世代の暮らしにぴったりはまる「新時代のライフパートナー」をコンセプトに、約5年半ぶりのフルモデルチェンジを行った
 

初代で軽スーパーハイトワゴンという新たな市場を切り開き、2代目では助手席側のBピラーをスライドドアに内蔵して広大な開口部を実現するなど、これまでにない利便性を提案してきたタント。

そして3代目はタントならではの利便性を継承しながら、先進安全装備パッケージをスマートアシスト(スマアシ)からスマアシII、さらにスマアシIIIと進化させてきました。

新型タントは、ダイハツによる新世代の車づくり、「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」第1弾モデルとしてデビューしました。

日本の家族を支えてきた、タントの最新モデルの全容を紹介します。

 

 

【グレード】従来どおり、標準モデルとカスタムモデルを用意

新型タントは先代までと同様に、標準モデルとカスタムモデルの2タイプを展開しています。

他の車種と同様に軽自動車はカスタムモデルの人気が高く、またパワフルな走りを求める若者からのニーズも多くなっています。

そのため、他メーカーではカスタムモデルのみターボを設定しているケースもありますが、新型タントは標準モデル、カスタムモデルそれぞれにNA(自然吸気)エンジンとターボエンジンを設定。

そして、全グレードFF(前側エンジン前輪駆動)と4WD(四輪駆動)が用意されています。
 

▲ダイハツ タント グレード一覧▲新型タントのグレード一覧。標準モデルとなるタント、そしてタントカスタム、ともにNAとターボが設定されている
 

【エクステリア】世代を超え、あらゆる人が親しみやすいデザイン

今や軽ハイトワゴンは、自動車の中で最も多くの人が選ぶカテゴリーへと成長しました。

初代タントが登場した当初は若い子育て世代をターゲットにしていましたが、軽ハイトワゴンのすそ野が広がったことで、10~20代の独身世代や、子育てを終えた世代からも選ばれるようになっています。

そのため標準モデルはこれまでのコンセプトを受け継ぎ、シンプルで飽きのこないデザインになっています。

先代は大きなヘッドライトが特徴的でしたが、新型はライトを薄くし、よりシンプルな雰囲気になりました。このヘッドライトは全グレードフルLEDになっています。

標準モデルは洗練された雰囲気を漂わせつつ、どの世代にとっても選びやすいデザインと言えるでしょう。
 

▲ダイハツ タント 外観 フロント▲先代に比べてヘッドライトを薄型化。主張しすぎないシンプルな雰囲気に
▲ダイハツ タント 外観 リア▲リアはテールランプの角をとがらせたことで、スタイリッシュな印象に。ボディカラーは全9色でピンク系や黄色など、明るい色が多め

軽ハイトワゴンユーザーのすそ野が広がったことで、ミニバンやコンパクトカーからダウンサイジングしてくる人や、軽自動車にも高級感を求めるユーザーも増えました。

タントカスタムはこのようなユーザーも満足できるよう、きらびやかで高級感のあるデザインに仕立てられています。

フロントフェイスはワイドなグリルと、上下2段のヘッドランプで存在感を高めたデザインに。もちろんヘッドライトはフルLEDになっています。

タントカスタムのボディカラーはモノトーンの他、カスタムXとカスタムRSには2トーンをオプション設定。2トーンはルーフやミラーだけでなく、ボディサイドにも別色が施されます。

家族で共有するなら、癖のないデザインの標準モデルがオススメ。

華やかな雰囲気を軽自動車でも楽しみたいなら、メッキとサイドのブラックアクセントが効いたカスタムの2トーンがオススメです。
 

▲ダイハツ タントカスタム 外観 フロント▲上下2段のヘッドライトが特徴的なカスタム
▲ダイハツ タントカスタム 外観 リヤ▲テールランプがクリアクリスタルになっており、よりエッジが効いたデザインになっている。モノトーンは8色、2トーンは3パターンを用意
 

【インテリア】軽ハイトワゴンの利便性を高める、運転席ロングスライド

タントをはじめとした軽ハイトワゴンの最大の魅力は、室内の広さです。

インテリアデザインは、その広さを最大限に見せるための工夫が施されています。

運転席に座ったときにAピラーが細く見えるようデザインすると同時に、インパネを水平基調にすることで広がりを表現。さらにメーターを低く設置することで抜けの良さを強調しています。

これらは広さを表現すると同時に、運転中の視界を広くする効果もあります。

新型タントの室内空間におけるトピックは、運転席を最大540mmもスライドできるようにし、運転席と後席の間が楽に移動できるようになったことでしょう。

スライドドアから運転席にアクセスできるので、狭い場所に駐車した際も楽に乗り降りできます。

さらに後席にチャイルドシートを設置した際も、運転席を後ろまでスライドすることで、座ったまま子供の世話ができるようになっています。

加えて助手席イージークローザーや、降りる際にスイッチを押しておくと車に戻ったときにスライドドアが自動オープンするウェルカムオープン機能など、軽初の便利機能が搭載されました。

とくに助手席イージークローザーは“うっかり半ドア”を防げるので、力の弱い子供やお年寄りには喜ばれる便利機能と言えるでしょう。

 

▲ダイハツ タント 内装▲エアコン吹き出し口のアクセントが特徴的な標準モデルのインテリア
▲ダイハツ タントカスタム 内装▲ブラック基調で高級感を高めたカスタムのインテリア
▲ダイハツ タント スライドドア ピラーレス▲約540mmのスライド量がある運転席。運転席を一番後ろまで下げ、助手席を前に倒すと室内ウオークスルーが可能に
 

【運転支援システム】15種類の先進機能で運転をサポート

ダイハツの先進安全装備パッケージ「スマートアシスト(スマアシ)」が次世代スマートアシストへと進化しました。

歩行者と車両に対応する衝突回避支援ブレーキ、車線逸脱警報、オートハイビーム、標識認識などスマアシの機能に加え、先行車の車速や距離をステレオカメラが検知して車速や車間距離を維持し、追従走行や停車まで行うACC(アダプティブクルーズコントロール)を搭載。

さらに、車線をカメラで検知して車線中央をキープするようステアリング操作をアシストするLKC(車線維持支援機能)や、スマートパノラマパーキングアシスト(駐車支援システム)なども搭載しています。

ロングドライブや街中での走行、さらにショッピングモールの駐車場など、生活のあらゆるシーンでドライバーをサポートしてくれます。

運転に不安を感じる人も自信をもって運転できるモデルと言えるでしょう。
 

▲ダイハツ タント スマートアシスト▲ステレオカメラで車両と歩行者を検知し衝突回避をサポート
▲ダイハツ タント ACC▲全車速で先行車を追従走行するアダプティブクルーズコントロール
 

【価格】基本性能を刷新、装備充実でも価格はほぼ据え置き

新型タントの各グレードと先代同クラスのグレードの価格を比較すると、新型で次世代スマートアシストを搭載したグレードが数万円高くなっています。

ただ、後述するプラットフォーム、エンジンが刷新されており、さらにアダプティブクルーズコントロールなどが標準装備になることを考えるとかなりお買い得と言えるでしょう。
 

 

【エンジン・燃費】改良CVTが発進から低速域での加速力がアップ

JC08モードで燃費を比較すると、新型タントのX(2WD)が27.2km/Lなのに対し、先代最終モデルのX SAIIIは28.0km/L。

新型の方が数値はわずかに落ちていますが、実走行を考えるとほぼ「誤差の範囲」と言えるレベルです。
 

▲ダイハツ タント▲改良されたCVTによりNAでも出足に不満はない。上り坂あってもエンジン音は静か
▲ダイハツ タント エンジン▲エンジンを改良し、実用域での燃費が向上

新型タントで注目すべきは、「DNGA」という新しい思想で開発されたプラットフォームを採用していること、そしてエンジンとCVTが大幅に改良されたことです。

CVT(無段変速機)はギアが組み込まれたことで動力の伝達効率が向上。とくに発進時から低速域で無駄なくパワーを路面に伝えることで、スムーズに走り出すことができます。

信号待ちからの発進やバイパスなどへの合流でもしっかり加速できるので、ストレスは少ないでしょう。

エンジンには日本初となる複数回点火を採用。1回の点火で複数回火花を飛ばすことで、これまで以上に効率のいい燃焼を実現し、実用燃費は先代よりも向上しているといいます。

また、サスペンションにも変更が加えられ、背の高い車の弱点であるコーナリングもスムーズになっています。
 

▲DNGA プラットフォーム▲タントから採用されたDNGAプラットフォーム。今後ダイハツの軽や小型車に採用される予定

そしてこれらを支えるのが新型プラットフォーム。曲げ剛性は従来より30%向上し、さらに軽くて強いハイテン材を多用することで骨格全体で約40kgも軽くなっています。

剛性が高まったプラットフォームの採用により、サスペンションをしっかり動かすことができるので、きつめのコーナーでも踏ん張りが利くようになりました。

プラットフォーム、エンジンを刷新したことで、街中から高速道路まで楽に運転できるようになっています。
 

▲ダイハツ タントカスタム▲標準モデルに比べ乗り味はやや硬めのカスタム。踏ん張りが利くのでハイト系の弱点であるコーナリング性能がアップ
▲ダイハツ タントカスタム エンジン▲ターボはパワーがある分、回転数を上げなくても余裕ある走りを味わえる
▲カスタムRSは15インチタイヤを採用▲カスタムRSは15インチタイヤを採用

標準車とカスタムの足回りなどは共通ですが、カスタムRSはタイヤが15インチになります(他は14インチ)。

そのせいか、カスタムRSの乗り味は標準車に比べるとやや硬め。

街中を中心に乗る人ならマイルドな乗り味ながらスムーズな走りを味わえるNAモデル、高速道路を走る機会が多い人ならパワーに余裕のあるターボモデルがオススメです。
 

 

【中古車】先代はもちろん、ライバルモデルの中古車も増加か

2019年8月8日現在、新型タントはカーセンサーnetに41台掲載されています。


まだ発表されて間もないので価格も、新車とほとんど変わりません。

ただ、届出済み未使用車は新車を注文するよりも納車が早いので、「すぐ乗りたい!」という人は目当てのグレードや色があれば、すぐに問い合わせてみた方がいいでしょう。


新型タントは先進安全装備が充実し、機能面でも進化しています。

また、先代がデビューから約6年が経過していることもあり、そこからの乗り替え需要はかなりありそうです。

先代タント以外に、他メーカーの軽ハイトワゴン(ホンダ N-BOXやスズキ スペーシア)先代モデル、ミニバンやコンパクトカーからのダウンサイジングユーザーも増えるでしょう。

2019年、軽自動車の中でも目玉のフルモデルチェンジで多くのユーザーが注目しているだけに、乗り替えが進むにつれて先代の中古車流通量、さらにはライバル車種の中古車流通量が増え、相場が大きく変動するはずです。

文/高橋 満(BRIDGE MAN)、写真/尾形和美、ダイハツ
高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、 音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、 心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。 愛車はフィアット500C by DIESEL