ホンダ Z▲今回紹介するのは、軽SUVのホンダ Z。実はあのスーパーカーと同じレイアウトをもつ個性的なモデルです

凝った作りがあのランボルギーニ同様のホンダ Z

現在、話題沸騰となっている新型日産 フェアレディZ。一部の情報では、SUVタイプも控えているとかいないとか、賛否も含めて非常に注目度が高いモデルと言えますね。

しかし、実は過去にSUVのZがすでに存在していたことをご存じでしょうか? と言っても、日産のフェアレディZではなく、ホンダからリリースされていた『Z』のお話です。
 

ホンダ Z▲今回紹介するのは日産ではなく、ホンダの2代目Zです

初代のホンダ Zは、1970年に登場し、当時のN360をベースとしたスペシャリティカーとしてリリースされました。黒い窓枠をもったリアウインドウの形状から「水中メガネ」の愛称でも知られたモデルでした。

ホンダ Z▲海女さんがするような、水中メガネに似た形状のリアウインドウが特徴の初代Z

そして、時を経て1998年に登場した2代目Zは、初代の面影は全くない軽SUVモデルとして登場。見た目こそ同時期のジムニーやパジェロミニと同じく、SUVらしいルックスの3ドア車ですが、一番の違いはそのメカニズムにありました。

実はこのZ、「UM-4」と名付けられたプラットフォームをもっていたのです。これは「アンダーフロア ミッドシップ 4WD(Underfloor Midship 4WD)」の略で、その名のとおり後席の床下にエンジンを配置した、ミッドシップレイアウトかつ四輪を駆動するというもので、前後重量配分は理想的な50:50でした。

エンジンは縦置きされ、その前方にミッションを搭載。駆動力は、ビスカスカップリング式センターデフを介して四輪に与えられるというシステムで、有名なスーパーカーのランボルギーニ ディアブロVTと同じレイアウトだったのです。
 

ホンダ Z▲ちなみにこのレイアウトは、同社の軽トラック、アクティ4WDのものを活用しています

組み合わされるミッションは、4速ATのみとなっていますが、開発段階では5速MTの採用も検討されていたそう。もしMTも存在すれば、もう少し評価が異なっていた車かもしれません。

また、エンジンを床下に配置したことで、限られた全長をもつ軽自動車にも関わらず、コンパクトカー並みの広い室内空間を実現。

リアシートは5:5分割可倒式ポップアップリアシートを採用し、リアシートをたためば、24インチの自転車2台が積載可能という広いラゲージスペースを有していました。
 

ホンダ Z▲後席中央にエンジンがあるので、足元スペースを若干犠牲にしていますが広々した室内空間です
ホンダ Z▲助手席まで使えば、サーフボードのような長物の積載も可能です

なお、Zはグレードというものが設定されておらず、駆動方式も4WDのみ。唯一選べたのが、エンジンの仕様で、NAエンジン(52ps/6.1kg・m)かターボエンジン(64ps/9.5kg・m)の2つが用意されていました。

当時は安価だった(ターボモデルよりも14万円安)NAモデルが人気でしたが、実はその凝ったレイアウトから、車重が960~970kgと比較的重めなZだけに、ターボモデルをオススメしたいところです。
 

人気薄なだけに台数は少ないが、ほぼ総額50万円以下で購入可

現在のSUVブームからすると、信じられないかもしれませんが、2代目Zが登場した1998年は、まだそこまでSUVへの関心は高くありませんでした。

さらに、ライバルのジムニーは100万円以下から購入できたのに対し、Zは114.8万円からと高価だったこともあり、人気車種とはならず、4年弱で販売を終了してしまっています。そのため、現在の中古車流通台数は51台と、決して多くはありません。

しかし、かといってプレミア価格になっているわけでもありません。ほぼ総額50万円以下で買えてしまう、比較的安価な存在です。安いものでは、総額10万円台から見つけることができるため、セカンドカーとしてもオススメできる価格帯となっています。

走行距離の平均は10万km前後と、登場から20年前後が経過したモデルであれば致し方ない数値となっています。ですが、走行距離が13万~15万kmといった個体も市場にまあまあな数が流通しており、それらが平均を押し上げている印象。逆に5万km未満のような個体も存在しています。

それだけ距離を走っていても市場に出るということは、それだけ丈夫という裏返しとも言えます。ですが、距離が少ない個体でも比較的安価なので、できれば低走行のものを狙いたいところ。

なお、個人的なオススメのターボモデルですが、執筆時点では25台と約半分がターボモデル。こちらもターボだからといって特別高いわけではなく、状態や店舗によって価格帯がまちまちというのが正直なところ。

どうやら2代目Zの市場価値は、非常に難しいポジションにあるらしく、同程度と思われる個体でも店舗によって価格にかなり幅があるのです。

年式的に、このまま不人気車としてフェードアウトしていくのか? はたまた時代を先取りしすぎた名車として、再度スポットライトを浴びるのか? その瀬戸際にある時期とも考えられます。

そのため、この記事によって相場が上がってしまう可能性もゼロではありませんので(限りなくゼロに近いですが)、狙っている人は早めに行動に移した方がいい吉と言えるでしょう。
 

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ホンダ Z(2代目)×全国
文/小鮒康一、写真/ホンダ
小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。