ジャガー Xタイプ▲これから紹介するジャガー Xタイプは、セダンの定番シルバーの他、イギリス車らしいグリーンや落ち着いたレッドに淡いブルーなど、中古車でもカラーバリエーションが豊かで、白黒中心のライバルたちとは違う点だ

「フォード モンデオがベース」という流言に振り回された名車"Xタイプ"

支払総額50万円も出せば、走行距離5万km程度でイギリスの名門、ジャガーのプレミアムセダン"Xタイプ"が買える。

しかも、メルセデス・ベンツ Cクラス(2代目)やBMW 3シリーズ(4代目)なみにコンパクトだから運転もしやすい。

でも初めてのジャガー、しかも中古車だからちょっと不安なアナタは、少し車に詳しい人に相談するだろう。

相談された相手は、「あれはフォードのモンデオだからな」と答える可能性が大きい。

それを聞いたアナタは「フォードってアメリカ車? なんだ、雰囲気は良さそうな車だったのに、純な英国車じゃないのか……」と、購入を諦めてしまうかもしれない

あーもったいない。そもそもXタイプ=モンデオは正しくない。2001年に日本にやってきたXタイプは、当時のモンデオがベースとよくいわれるが、共有部品は全体の約20%だ。

フォード モンデオ▲こちらがフォードのセダン"モンデオ"

Xタイプより少し前に出たSタイプは、確かにアメリカフォードのリンカーン LSのパーツを使用しているが、モンデオはヨーロッパフォードの車だ

ヨーロッパフォードは、生産台数世界一に輝いたこともある名車、フォード フォーカスの生みの親。WRC(世界ラリー選手権)へ積極的に参戦するなど、欧州車さながらの高い運動性能が売りであった。つまり、アメリカフォードとは車文化が異なるのだ。

当時のヨーロッパフォード車は、エッジの効いた見た目で日本での販売は芳しくなかったが、中身はクロウト受けする車だった。

そんなヨーロッパフォードを例えるならば『よい牛肉の産地』。モンデオはそこで育ったA5ランクの牛肉を使ってできた料理といえる。

つまり、Xタイプはモンデオと同じA5ランクの牛肉を使った料理ではあるが、調理方法が異なるのだ

ジャガー Xタイプ▲ジャガーといえばラグジュラリーブランドと思っている人も多いが、ル・マン24時間レースで幾度も優勝し、F1にも参戦していたことがあるスポーツカーブランドでもある。コンパクトなXタイプにも、ラグジュアリーだけどステアリングフィールはスポーティという、ジャガーらしいキャラクターが与えられていた

今でこそ、素材が同じでも料理人が代われば味が変わるということは、周知されつつある。

例えば、フォルクスワーゲン トゥアレグを使ってポルシェはカイエンを作り、アウディ R8を使って、ランボルギーニはウラカンを生んだ。

ただ、これらはXタイプが登場する2001年よりも10年以上あとの話で、まだ「素材が同じでも~」の世界観があまりなかったのだ

支払総額約50万円以下でこのクオリティをサラッと乗る

だからといって、少し車に詳しい知人が悪いわけでもない。

そもそもラグジュアリーなスポーツカーブランドであるジャガーが、初めて挑んだコンパクトセダンのカテゴリーがゆえに、あまり浸透しなかったのだ。

日本ではジャガー=高級車という認識も強かった。「そんなジャガーが、小っちゃなセダン?」。最初からすんなりと受け入れられるような柔なカテゴリーじゃない

Cクラスや3シリーズを筆頭に、どのメーカーもこぞって覇権を競っている。猛獣ジャガーから見ても凶暴極まりない弱肉強食の世界だ。

結局Xタイプは、わかる人には売れたが、販売面では「新ジャンル開拓」をもくろんだメーカーの思惑どおりには伸びず、2009年に販売を終了した。

けれど時代がひと回りして、しかも支払総額約50万円以下で買えるとなると、Xタイプの見え方は随分と変わってくる。

当時のフラッグシップモデルXJの面影を、このサイズに上手くまとめたスタイルは、支払総額約50万円以下となった今でも唯一無二の美しさがある。

上質なクロスや本革で覆われたシート。木目を印刷したシールではなく、ウッドパネルが張られたインパネ。

厳選された食材を使って、職人が料理したことで実現した、ジャガーらしいスポーティなハンドリングと乗り心地も素晴らしいのである。

ジャガー Xタイプ▲よくある木目“調”シートではなく、本物の木のパネルが張られたインパネ。ちなみに上級グレードのソブリンには、天然木の中でも高価なウォールナットが選ばれている

そんな乗り回しやすい英国ブランドのコンパクトカーを、コミコミ50万円で買う。

この価値観は、安くても高品質な無印良品やユニクロのTシャツを、ブルックスブラザーズの紺ブレに合わせられるのが当たり前になってきた今なら、きっと理解されるはず。

そう、この価格でもXタイプは質感が高く、チープ感がないのだ。

エンジンや駆動方式、ボディバリエーションも選べる

ジャガーとしてもモンデオ色を払拭したかったのだろう。Xタイプは、全車4WDというモンデオにはない設定で2001年8月に登場した。

トラクション4と名付けられた4WDシステムの前後駆動配分は、前40:後60という後輪駆動っぽい味付け。

エンジンは2.5Lと3Lの2種類(いずれもV型6気筒)が用意され、トランスミッションには日本のジヤトコ製5速ATが組み合わされた。

もちろん当時のジャガーらしく、シフトゲートは「J」のカタチ。現行型が普通になった今みると、これもまた個性があって魅力的。

翌2002年6月には、2WD(前輪駆動)で2096ccの2L V6を搭載するグレードも追加された。2003年11月の一部改良で、エクステリアやインテリアの質感や静粛性が向上。

2004年5月に限定として登場した最上級グレード3.0ソブリンだが、結局その後もラインナップに残り、2007年10月には2Lモデルにも豪華装備版のソブリンが追加された。

デビュー時の車両本体価格は425万~525万円。支払総額50万円以下の物件は、約20台と台数が少ない。

走行距離は短い傾向にあり、支払総額50万円以下でも3万km台が見つかった。

スーツはもちろん、Tシャツ&ショーツというカジュアルな服装でもちょっと上品に見えてしまうXタイプ。サラリと乗りこなしてほしい。

▼検索条件

ジャガー Xタイプ(初代)×全国

ちなみに、2004年にはジャガー初となるステーションワゴン、Xタイプエステートも登場している。

こちらも総額50万円で狙うことができるが、その台数は5台とセダンよりもさらに少ない。

日常使いだけではなく、アウトドアや大人数での旅行などでバリバリ使うような人は、コチラも合わせてチェックしてみてほしい。

ジャガー Xタイプ▲ステーションワゴンのXタイプエステートは2L/2WDと2.5L/4WDというラインナップ

▼検索条件

ジャガー Xタイプエステート(初代)×全国
文/ぴえいる、写真/ジャガー、フォード

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。