メルセデス・ベンツ Sクラス ▲新車時の車両本体価格が1090万円だった現行型メルセデス・ベンツ Sクラスの一部グレードが今、比較的低走行な個体であっても半額以下の「400万円ぐらい」で狙える状況に。でもそれって本当にお買い得なのでしょうか? 様々な角度から検討してみます

現在の相場は国産SUVを新車で買うのとほぼ同程度

世界を代表する高級サルーンのひとつというか、その代表格である現行型メルセデス・ベンツ Sクラスの中古相場が今、どエラいお手頃水準になっている。

具体的には、新車時の車両本体価格が1090万円だった「S400 ハイブリッド」の走行4万km台までの物件が、支払総額400万円前後。つまり「新車時本体価格の半値以下」で買えてしまうのだ。

総額400万円前後というのは現行型のトヨタ RAV4の上級グレードを新車で買う際の総額とだいたい同じ。そのどちらが良いとか悪いとかの話ではなく、とにかく現行型Sクラスという車のウルトラスーパー品質から考えれば、それってウルトラハイパーお買い得ではないでしょうか? という話である。

だが物事というのは光があれば必ず影もあるわけで、「安いモノ」にもたいていの場合、何らかの「安いだけの理由」が必ず存在している。

そう考えた場合、総額400万円前後でイケる現行型メルセデス・ベンツ S400 ハイブリッドの中古車というのは本当に「買い」なのか、それとも「やめといた方がいい」なのか、冷静にチェックしてみよう。

まずは現行型メルセデス・ベンツ SクラスおよびそのS400 ハイブリッドというグレードの簡単なご紹介から。

現行型のSクラスは2013年途中、6代目のSクラスとして日本に上陸した。アルミニウムの使用率を50%以上とした「アルミニウムハイブリッドボディシェル」は、旧型比で約100kgの軽量化を実現し、それでいてねじり剛性は約50%向上。Cd値=0.24という空気抵抗の小ささも、現行型Sクラスのポイントのひとつだ。

S400 ハイブリッドは初期のベーシックグレードで、最高出力306psの3.5L V6エンジンに27psの電気モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせている。回生ブレーキやモーターアシストの他、条件によっては35km/hまで電気モーターのみでの走行も可能だ。また高速巡航時にはパワープラントを切り離して燃費向上を図る「セーリング機能」というのも備わっている。

このS400hの新車時価格が前述のとおり1090万円で、S400hの装備を充実させた「S400 ハイブリッド エクスクルーシブ」は同1270万円。2015年8月には車名変更で「S400h」「S400h エクスクルーシブ」となったが、2017年8月のマイナーチェンジでなぜかカタログから消えた――というのが、メルセデス・ベンツ S400ハイブリッドという車の大まかな概略だ。
 

メルセデス・ベンツ Sクラス▲こちらが2013年8月に上陸した現行型メルセデス・ベンツ Sクラス。写真は2017年8月に行われたマイナーチェンジを受ける前の、いわゆる前期型
メルセデス・ベンツ Sクラス▲最高出力306psの3.5LガソリンV6エンジンに電気モーターを組み合わせたS400 ハイブリッドの心臓部

そもそも「中古の現行Sクラス」は買うに値するのか?

以上を踏まえたうえで「総額400万円前後でイケるS400 ハイブリッドは本当に“買い”なのか?」ということを考えたいわけだが、まずは「そもそもS400 ハイブリッドって買うに値するほどいい車なのか?」という疑問がある。

これについての答えは明確で、「もうバリバリにいい車ですよ!」と言うほかない。

初期の上級グレードであるS550ロングやS63 AMGロングあたりと比べればパフォーマンスも装備内容も劣るわけだが、それは「1500万円級あるいは2000万円超級の車と比べればさすがに見劣りする」というだけの話。S400 ハイブリッド単体で考えるなら、不満点などほとんど存在しない。

車内にあるすべての調度品は、400万~600万円級の一般的な「高い車」とは完全に次元が異なるしつらえとクオリティであり、V6エンジンと電気モーターの共同作業がもたらす走りは「超安楽にしてスポーティでもある」といったニュアンス。

要するにゆったりめに走ればいかにもSクラス的な快楽がそこにあり、アクセルペダルを踏んでいけば意外と(?)勇ましい走りも堪能できるということだ。

しかし次に出てくる疑問は、「でも新車時から何年もたった中古車だから、新車時と同様のパフォーマンスなんて期待できないんじゃないの?」というものだろう。

現在、総額400万円前後で買えるS400 ハイブリッドは2014年式が中心であるため、要するに6年落ちということになる。

車というのは6年もたてばさすがにあちこちが劣化するわけだが、6年程度であれば「劇的に劣化する」というほどではない場合が多い。内装等の劣化も含めて「やや劣化したな……」というぐらいが、6年落ち車の一般的な姿であろう。

であるならば――もちろん1台ごとに異なる現物のコンディション次第ではあるのだが――この場合は「許せるというか、安価になった価格から考えて妥当な範囲の劣化」でしかないケースが多いと推測される。

しかも今回、筆者が挙げている検索条件は「走行4万km台までの物件」である。もちろん走行距離ですべてが計れるわけではないが、3万kmから4万km台ぐらいであれば、車というのは基本的にそこまでボロっちくはならないものだ。
 

メルセデス・ベンツ Sクラス▲グレード等によって若干の違いはあるが、現行型メルセデス・ベンツ Sクラスの運転席まわりはおおむねこのような感じ。中古車になれば当然インテリア各部も劣化はするが、激しく劣化している中古車ばかりではない

壊れやすい車種ではないが、ギリギリの予算で買うのはNG

ならばお次の疑問点は「でも、ぶっ壊れるんじゃないの?」というものであろう。

これに関しては断言するのがちょっと難しいのだが、基本的には「まぁ大丈夫なんじゃないでしょうか?」というのが当面の答えになる。

ハイブリッド車の中古車というと「バッテリーの寿命」も不安視されがちだが、ハイブリッド車のリチウムイオン電池は携帯電話用のそれとは違い、数年程度で寿命を迎えるような設計および制御にはなっていない。

それゆえ走行数万km程度で数年落ち程度の中古車であるならば、S400 ハイブリッドに限らずリチウムイオン電池の寿命うんぬんを心配するのはほとんどナンセンス。

またS400 ハイブリッドは「故障発生の報告が特に多い車種」というわけでもないため、自動車としての一般的な故障についても、さほどネガティブな予想をする必要はない。正規ディーラーでの定期点検履歴が確認できる、内外装が荒れていない個体(=前オーナーが丁寧な人だったと推測できる個体)を探せば、おおむね普通程度のノリで維持できるはずなのだ。

ただしメルセデス・ベンツ S400 ハイブリッドの場合、以下の2点だけはいちおう心しておく必要はある

1. ベーシックグレードとはいえSクラスはSクラスなので、いざ修理をする際の部品代はさすがに高い。それゆえ「カツカツな予算感の人」は、絶対にこれを買ってはいけない。

2. 2013年5月20日~2015年6月7日に輸入された S400 ハイブリッドは、燃料ポンプコントロールユニットのリコール届け出がされている。そのため購入時は、このリコール作業をすでに受けているかどうかを確認すること。

とはいえ逆にいえば、注意点はせいぜいこのぐらいである。

あとは普通に内外装のコンディションと「正規ディーラーでの点検整備歴」を重視し、最終的には試乗をして全体の違和感の有無を確認するようにすれば、そうそう大ハズしはしないはずなのだ。
 

メルセデス・ベンツ Sクラス▲決してそう簡単に壊れまくる車ではないが、いざどこかが壊れた場合の修理費用は「高級車価格」であることは、あらかじめ頭に入れておく必要がある

この値下がりに「ネガティブ要因」は特にない!

以上の検討により、総額400万円前後で買える2014年式付近のメルセデス・ベンツ S400 ハイブリッドという車は「もちろんパーフェクトではないが、決して悪くはない(むしろいい感じかもしれない)」ということがわかった。

ならば最後の疑問はこれだ。

「ならばなぜ、そんなに安いのか?」

これの答えは簡単である。

現行型メルセデス・ベンツ SクラスのS400 ハイブリッドが安い理由は「自然の摂理」というか、「マーケットの摂理」である。つまりS400 ハイブリッドは「他の車種が下がるのと同じように、普通に下がっただけ」なのである。

車の価格というのは――もちろん「だいたい」ではあるが――1年ごとに15%ぐらいずつ下がっていく。なかには「あまり下がらない」「逆に値上がりした!」なんて車種もあるが、それはレアケースで、だいたいは10~20%の間ぐらいの数値で年々価格を下げていくものだ。

であるならば、2014年式S400 ハイブリッドの「総額400万円前後」という現在の相場は、下記のごく簡単な計算式で表せてしまうのである。

新車時価格1090万円 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85=411.1万円

そしてSクラスに代表される「ドイツ製の現行型高級車」というのはこの計算式がそもそも当てはまりやすく(つまり新車時からの値落ちが普通にデカい場合が多く)、S400 ハイブリッドは最量販グレードで流通数が多いゆえに、特にシンプルに当てはまりやすいのである。自然の摂理である。
 

メルセデス・ベンツ Sクラス▲なんだかんだ言ってSクラスは他の車と、そして同じメルセデスでもEクラスやCクラスなどとはすべてが別物。それを400万円級の総額で味わえるというのは、ある意味「安い!」と言うほかない
 

ということで、「新車のRAV4を買うより中古のSクラスを買った方がいいですよ!」みたいなことを言うつもりはないが、もしもあなたが、

●Sクラス的な雰囲気と乗り味の車が大好きで、
●約400万円の総額を(一括でもローンでも)普通に支払えて、
●なおかつ、その後予想されるメンテナンス代も特に苦にならないのであれば、

2014年式付近の、あまり距離を走っていない、整備履歴が充実しているメルセデス・ベンツ S400 ハイブリッドは今、とてつもなくお買い得である。

ご興味のある方はぜひ一度、その現物をチェックしてみてほしい。
 

▼検索条件

メルセデス・ベンツ Sクラス 400 ハイブリッド(現行型・前期モデル)×総額500万円以下×走行距離5万km未満×全国
文/伊達軍曹、写真/ダイムラー
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。