▲ほとんど「芸能人の車」にも見えなくはない最終型のアルファロメオ スパイダー。でも実はこのステキなオープンカー、総額100万円台半ばぐらいでも十分狙えてしまうのです ▲ほとんど「芸能人の車」にも見えなくはない最終型のアルファロメオ スパイダー。でも実はこのステキなオープンカー、総額100万円台半ばぐらいでも十分狙えてしまうのです

YOSHIKIか? あれはYOSHIKIの車なのか?

筆者の場合は中古輸入車の専門記者を20年以上もやっているため、街を行く輸入車を見れば1.7秒ほどで、そのおおむねの中古車相場が脳裏に浮かぶという特殊技能をもっている。

だが世の多くの人は、しばしば輸入車の価格を高い方へ見誤る。

特に「輸入車+オープンカー」という合わせ技を有している車種だとその傾向が強く、セレブと見誤るようだ。

過日、筆者の知人も最終型アルファロメオ スパイダーというイタリア製オープンカーについてやらかした。

「伊達くん、あの赤いオープンカーはなかなかカッコいいね。運転してる人はYOSHIKIかな? それにしてもアレって高そうだね。中古でも300万円ぐらいはするのかな?」

筆者は知人に、あの人はYOSHIKIではなく、ただサングラスをかけた色白な男性であるということと、「300万円なんてとんでもない。アレはだいたい総額150万円ぐらいから買えるのだ。意外と安いのだ」ということを説明した。

ドライバーがYOSHIKI氏ではないことについてはすぐに納得してもらえたが、「あのカッコいい輸入オープンカーが総額150万円」という点についてはなかなか信じてもらえなかった。

……仕方がない、順を追って詳しく説明することにしよう。
 

▲こちらが最終型アルファロメオ スパイダー。アルファロメオのスパイダーとしては3代目にあたるが、2010年にこれが生産終了となって以降「4代目」が登場していないため、とりあえず最終型という扱いになる▲こちらが最終型アルファロメオ スパイダー。アルファロメオのスパイダーとしては3代目にあたるが、2010年にこれが生産終了となって以降「4代目」が登場していないため、とりあえず最終型という扱いになる
▲乗車定員は2名で、ルーフは電動開閉式のソフトトップを採用▲乗車定員は2名で、ルーフは電動開閉式のソフトトップを採用

中古車のボリュームゾーンは総額180万円前後

まずは最終型アルファロメオ スパイダーという車自体についてごく簡単に紹介する。

この世代のスパイダーは同時期の「ブレラ」というクーペモデルがベースで、デビューは2006年。

しかしカッコはいいのだがセールス面ではやや不調だったため、2010年9月には早々と生産終了になった。

搭載エンジンは2.2L直噴直4と3.2L直噴V6の2種類で、駆動方式は2.2LがFF、3.2Lの方はフルタイム4WDとなる。

トランスミッションは6MTの他に「セレスピード」という2ペダル式MT(俗に言うセミAT)も用意された。

新車時価格は2.2L版が450万~530万円で(※時期やグレードによって異なる)、3.2L版が600万~615万円(※前同)。

超高額車というわけでもないが、まごうことなき高額車のひとつではある。

それに対して現在の中古車相場は……筆者の知人がイメージした「300万円ぐらい」では全然ない。

や、そのぐらいの物件もあるにはあるのだが、基本的には「総額140万~240万円ぐらい」というのが大まかな相場イメージである。

ボリュームゾーンは総額180万円前後といったところだろうか。

激安というわけでもないが、「意外と安い」とは言えるプライスなのだ。

グレード別で見ると流通の7割以上が2.2L直4で、3.2L V6は3割弱とやや希少。

トランスミッション別ではセミATのセレスピードが約6割で、6MTが約4割となっている。
 

▲乗車定員は2名で、ルーフは電動開閉式のソフトトップを採用年式によって細部は異なるが、最終型スパイダーのインテリアはおおむねこのような感じ。写真は2008年モデルで、2006年式付近の初期型よりやや豪華系デザインになっている▲年式によって細部は異なるが、最終型スパイダーのインテリアはおおむねこのような感じ。写真は2008年モデルで、2006年式付近の初期型よりやや豪華系デザインになっている
▲シートの造形もいちいちオシャレなのは、さすがイタリア車といったところか▲シートの造形もいちいちオシャレなのは、さすがイタリア車といったところか

セレスピードがちょい心配ではあるが、大問題ではない

で、意外と安いことはわかった最終型アルファロメオ スパイダーだが、この車は果たして筆者の知人にとって「買い」なのだろうか?

……いくつかの条件付きではあるが、筆者は「買い」だと思っている。

このカタチとデザインに魅力を感じるのであれば、そして2シーターでも特に問題ないのであれば、間違いなくオススメの1台だ。

しかし前述の「条件」はいちおう挙げておきたい。

●条件1:決して超スポーティな車ではないことをあらかじめ納得しておくこと

カタチ的には猛烈にスポーティな車にも見えるが、実際はそうでもない。

や、もちろんそのへんの普通の車と比べれば十分スポーティではある。しかしこの車はアルファロメオと米国のGMが提携関係にあった時代の作品である。

そのため車台全体とエンジンの下半分はGM製のモノを流用しており、そのせいでやや重く、そしてアルファロメオとしてはエンジンの活発さに少々欠けるのが実情なのだ。

ただ、前述のとおり“そのへんの普通の車と比べれば十分スポーティ”であることは間違いないので、過度な期待さえ抱いていなければ特に問題はない。

そもそもオープンカーなので、優雅にのんびり走る方がむしろサマになるだろう。
 

▲オープンカーでギュンギュン飛ばすのも野暮というもの。のんびりめに走りましょうや!▲オープンカーでギュンギュン飛ばすのも野暮というもの。のんびりめに走りましょうや!

●条件2:セレスピードが故障する可能性もあることを理解しておくこと

2ペダルMTのセレスピードはなかなかステキなトランスミッションなのだが、残念ながら故障はそこそこ多い。

もちろん、必ず故障するというわけではなく、ほぼノートラブルで過ごしている人も少なくない。

だが「故障がそこそこ多い」と言えるのは確かなのだ。

これについては、なるべく走行距離少なめの個体を選ぶということと、セレスピード関係の修理や部品交換がすでに行われている個体を選ぶという合わせ技で、ある程度は回避できるはず。

だが、それでも残念ながら故障するときはするので、もしもそうなったら修理するほかない。

ただ、正規ディーラーで部品の全とっかえをするとなるとかなり高額だが、その筋の専門店に依頼すれば修理費用は意外と安い(というか決してベラボーに高くはない)。

そのため「まぁ問題ないっちゃない」と言える範囲の話であるとは思う。
 

▲写真は2006年モデルのセレスピード採用グレード▲写真は2006年モデルのセレスピード採用グレード

……と、以上のような説明を知人に対して行った。

どうやら話の内容としてはすべて理解してもらえたようだ。

あとは彼が2つの「条件」についてどう考えるかだが、そこはわたしが関与すべき問題ではない。

わたしにできるのは、スパイダーであるかないかに関わらず彼がステキな車を手頃な予算で入手し、シアワセになってくれるのをこっそり願うことだけだ。
 

text/伊達軍曹
photo/フィアット・クライスラー

▼検索条件

アルファロメオ スパイダー(3代目)×総額240万円以下×支払総額あり×修復歴なし