▲現行型の登場により若干オーラが薄まった感はありますが、それでも依然としてエリートっぽいイメージが強い旧型アウディ TT。でも実はコレ、今や意外と高くはないのです ▲現行型の登場により若干オーラが薄まった感はありますが、それでも依然としてエリートっぽいイメージが強い旧型アウディ TT。でも実はコレ、今や意外と高くはないのです

走行5万km台までの物件も総額100万円台半ばから

過日、アウディ TTが欲しいという友人と道端で出くわし、少々の会話をした。

彼はTTならではのシュッとしたデザインとしゃれた質感、そして意外に高い実用性が好きなのだそうだ。

「だが重大な問題がひとつある」と友人は言った。

彼によれば、諸事情により今はさほどのカネは出せないとのこと。

具体的には、支払総額で100万円台半ばから後半ぐらいまでがせいぜいであるという。

そして彼は続けて言った。

「もちろんオレだって、そんな予算でアウディ TTが買えないことぐらいは知っている。それゆえ潔くあきらめ、その代わりに今日はこれからアウディ TTのプラモデルを買いに行くつもりだ。ということで、急いでいるので失敬」

友人はそう言うと会話を切り上げ、足早に駅の方向へと歩き始めた。

わたしは彼のコートの背中部分をつかみ、引っ張り、そして言った。

「待ちたまえ。君が言っているのは現行型アウディ TTについてか?」

友人は「そうだ」と言い、だが続けてこうも言った。

「コンディションの良いものであれば、旧型の中古車でも構わないとは思っている。だがそれだってけっこう高いんだろう? 僕には無理だ」

彼の友人であると同時に中古車の専門記者でもあるわたしは、彼に言った。

「さすがに現行型のアウディ TTは中古車でもまだまだ高いが、旧型であれば、君の予算でも十分イケる。アウディ TTは意外と安いのだ。だから、プラモを買うのはちょっとだけ待ちたまえ」

以下の文章は、これの後、わたしが彼にこんこんと説明した話の要約である。
 

▲こちらが旧型アウディ TTクーペ。写真は2006年10月登場の前期型▲こちらが旧型アウディ TTクーペ。写真は2006年10月登場の前期型
▲比較的小ぶりな2+2クーペだが、後席の背もたれを倒せば荷室はかなり広大になるため、この車でゴルフに出かける人や、仕事道具を積んで「営業車」として使う自営業の方もそこそこ多い模様▲比較的小ぶりな2+2クーペだが、後席の背もたれを倒せば荷室はかなり広大になるため、この車でゴルフに出かける人や、仕事道具を積んで「営業車」として使う自営業の方もそこそこ多い模様

狙い目は2010年途中までの2L直噴ターボ搭載グレード

まずは旧型アウディ TTがそもそもどういう車であるかということを、ごく簡単におさらいしよう。

斬新かつ美しいデザインを伴って登場した初代アウディ TTの後を受け、旧型(2代目)が登場したのは2006年10月のこと。

その後、現行型(3代目)が登場する2015年8月までの約9年間、長きにわたり製造販売され続けた。

その主なラインナップは以下のとおりだ。

●TTクーペ 2.0 TFSI:最高出力200psの2L直4ターボを搭載。駆動方式はFF。

●TTクーペ 2.0 TFSIクワトロ:2008年9月に追加された上記のクワトロ(4WD)版。

●TTクーペ 3.2クワトロ:最高出力250psの3.2L V6ユニット搭載。駆動方式はクワトロ(4WD)。

●TTクーペ 1.8 TFSI:2012年1月に追加。最高出力160psの1.8L直4ターボを搭載。駆動方式はFF。


そして主な小変更は下記のとおり行われた。

■2007年8月:「自動防眩ミラー」「レインセンサー」「オートライト」が標準装備に。

■2009年8月:クーペ 2.0TFSIに「バイキセノンヘッドライト」「自動ヘッドライトハイトコントロール」などが標準装備。

■2010年9月:2L直噴ターボエンジンの出力とトルクが向上。同時に燃費も約1割改善。LEDポジショニングランプを全車に採用するなど外観も少々変更。

■2011年8月:「LEDライセンスプレートライト」を全車に標準装備。


このうち、友人が想定している予算(総額100万円台半ばから後半ぐらい)で狙えるまあまあ低走行な中古車(走行5万km台まで)は前期型。

すなわち2010年途中にエンジンが改良される以前の2.0 TFSI(FF)または2.0 TFSIクワトロ(4WD)である。
 

▲こちらが前期型のビジュアル▲こちらが前期型のビジュアル
▲で、こちらが後期型。LEDポジショニングランプによって目元キラキラ系に若干生まれ変わっていると同時に、バンパー付近の形状なども微妙にお色直しされている▲で、こちらが後期型。LEDポジショニングランプによって目元キラキラ系に若干生まれ変わっていると同時に、バンパー付近の形状なども微妙にお色直しされている

Sトロニックの状態が万全であれば良い買い物なはず

問題はそれ、すなわち総額100万円台半ばから後半ぐらいの前期型2.0 TFSIまたは2.0 TFSIクワトロ(走行5万km台まで)が「買い」かどうかだ。

条件付きにはなってしまうが、筆者は「買い」ではないかと考えている。

コンディションさえ良ければ、旧型であっても、前期型であっても、そして最上級グレードである3.2クワトロでなくても、アウディ TTクーペは2019年の今なお、なかなか素晴らしい2+2クーペであるからだ。

ただしいくつかの条件はある。

●内外装のコンディションが良好であること
総額100万円台で狙えるTTの内外装は、走行距離に関わらず玉石混交。中古車ゆえ完璧を求めるのは無理だが、あまりにもボロいと気分が盛り下がる。特に「アウディ」の場合はそうだ。美観にもこだわりたい。

●整備履歴が充実していること
まず内外装の美観について挙げたわけだが、基本的には機械的コンディションの方が重要であることは言うまでもない。正規販売店で2年ごとの点検整備をしっかり受けてきた個体を探すべきだ。

●Sトロニックの作動や履歴が良好であること
日本仕様の旧型TTには「Sトロニック」という6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のみが採用されている(※1.8 TFSIは7速)。そして残念ながらコレの故障発生件数が決して少なくはない。

すべてのSトロニックが絶対に壊れるわけではないので悲観しすぎる必要はないが、この部分の現状を必ず確認すると同時に、近い過去にSトロニックの整備(ユニット交換やDSGオイルの交換など)がなされているかどうかを確認したい。
 

▲写真は本国仕様であるため左ハンドルの6MT。ややこしい機構ではないMT車を日本仕様でも選ぶことができれば話は早いのだが、まあ選べないものは仕方ない。より良い状態のSトロニックを探すだけだ▲写真は本国仕様であるため左ハンドルの6MT。ややこしい機構ではないMT車を日本仕様でも選ぶことができれば話は早いのだが、まあ選べないものは仕方ない。より良い状態のSトロニックを探すだけだ

「……という感じで探すのであれば、総額100万円台の旧型アウディ TTは悪くないと思うぞ。君の雰囲気になかなかお似合いでもあるし」

友人は「なるほど理解した。では検討してみる」と言って、今度はゆっくりと駅の方向へ向かい歩いて行った。

やはりTTのプラモを買うのか、それともカーセンサーnetで実車を探すつもりなのかはわからない。

できれば後者であってほしいと願う、ある日の夕方の筆者であった。
 

text/伊達軍曹
photo/アウディ

▼検索条件

アウディ TTクーペ2.0TFSI系(2代目)×総額200万円未満×5万㎞台まで×修復歴なし