マセラティ クアトロポルテ ▲イタリアが誇るラグジュアリーブランド「マセラティ」のフラッグシップサルーンである「クアトロポルテ」。写真はマセラティ幕張が販売していた走行3.1万kmの2014年式GT S(※現在は売約済み)

今のうちから注目しておきたい「近未来の名車」を探せ

こちらは8月27日発売の雑誌カーセンサーEDGE 10月号に掲載された、自動車評論家・永福ランプ(清水草一)さんの人気連載「NEXT EDGE CAR」の、担当編集者から見た「別側面」である。まぁアナログレコードで言うB面のようなものと思っていただきたい。

なお「NEXT EDGE CAR」というのは、「今現在はまだ名車扱いされていないが、近い将来、中古車マーケットで名車または名品と呼ばれることになるだろうモデルを探そうじゃないか」というのが、そのおおむねの企画趣旨である。

今回の題材は、イタリアのマセラティが生産しているラグジュアリーサルーン「マセラティ クアトロポルテ」の2014年モデルだ。
 

マセラティ クアトロポルテ▲2013年4月から販売されているマセラティのラグジュアリーサルーン「クアトロポルテ」。現行型はクアトロポルテとしては6代目にあたり、取材車両は最高出力530psの3.8L V8ツインターボエンジンを搭載するGT Sという上級グレード

Sクラスや7シリーズに相当するフルサイズサルーン

結論から申し上げると、ユーズドカーとしての現行クアトロポルテは「メルセデスやBMWあたりのドイツ勢に飽きた人」には最適な選択の一つではないか――と筆者には思われた。

そう考える理由を述べる前に、マセラティ クアトロポルテの概要をさっとおさらいしておこう。

クアトロポルテは、その初代モデルは1963年に登場したマセラティのFセグメント車。Fセグメントというのは、メルセデスのSクラスやBMW 7シリーズ、アウディA8あたりが属するとされるカテゴリーである。

その後、代を重ねたクアトロポルテは4代目(1994~2001年)や5代目(2004~2012年)あたりから日本でもメジャーな存在に。今回取り上げる世代は6代目にあたる現行モデルで、主なグレードは最高出力530psの3.8L V8ツインターボ搭載の「GT S」と、同410psの3L V6ツインターボを積む「S」「S Q4」、同じ3Lながら最高出力を330psに抑えた「クアトロポルテ(ベースグレード)」の4種類。

2017年1月にはマイナーチェンジでフロントグリルや前後バンパーの形状などを微妙に変更し、2018年モデルからは自動運転レベル2相当の運転支援システムを搭載。そして、2021年モデルからは最高出力580psの強力な3.8L V8ツインターボを搭載する「トロフェオ」も追加している。

今回ご紹介するのは前期型の「GT S」、要するに最高出力530psの3.8L V8ツインターボを搭載する初期の最上位グレードで、新車時価格は1690万円だった1台だ。
 

マセラティ クアトロポルテ▲マセラティにより設計され、フェラーリの工場で生産された3.8L V8直噴ツインターボエンジン。最高出力530ps/最大トルク66.3kgmだが、オーバーブースト時は72.4kgmを発生。組み合わされるZF製8速ATは5種類のシフトモードを持ち、トランスミッションだけではなく、エンジンのパフォーマンスやサウンドもコントロールできる
マセラティ クアトロポルテ▲現行型マセラティ クアトロポルテの運転席まわりはおおむねこのようなデザイン。「マセラティ・タッチコントロールシステム」と呼ばれる8.4インチのディスプレイが採用されている

ドイツ車とは真逆のベクトル。だからこそ「発見」がある

さて。「マセラティ クアトロポルテは、メルセデスやBMWなどのドイツ勢に飽きた人に最適なのでは?」と考える理由について述べよう。

メルセデス・ベンツやBMWなどのFセグメントやEセグメント、すなわちSクラスや7シリーズ、Eクラスや5シリーズなどに乗っている人のうち「これが初めての輸入車なんです」という人もいらっしゃろうが、多くの場合は、その人にとっての2台目、3台目、あるいは4台目以上の輸入車であるはずだ。そして――これは「おそらく」だが――そのすべてまたは多くがドイツ車であったはずである。

もちろん、ドイツ車というのは一般的に言ってなかなか素晴らしく、特にFセグやEセグのそれはかなり素晴らしいため、連続してドイツ車を選び続けるお気持ちはよくわかるし、それは正義でもあるだろう。

だが、そんな素晴らしいドイツのFセグやEセグも、連続して乗っていると「飽きる」ものだ。飽きるという表現が適切ではない場合でも、「麻痺する」という状態に陥っているドイツ車オーナーは多い。

もちろん、そのままドイツ車生活を続けるのもご自由だが、もしも「何かこうもうちょっと、新鮮な驚きみたいなものを感じたいよなぁ……」などと思う瞬間があった場合には、ぜひマセラティ クアトロポルテあたりに乗ってみることをオススメしたいのだ。

なぜならば、それはドイツ車とはずいぶん異なるベクトルの魅力を備えた車であり、「生真面目である」という部分においてはドイツ車とけっこう近い日本車とも、まったく違う味わいを感じることができる1台だからだ。
 

マセラティ クアトロポルテ▲往年のマセラティと比べると少々事務的な感じがするデザインになったともいえるが、それでもまだまだ十分に「セクシー」ではあるクアトロポルテのインテリア
 

BMWのMやメルセデスのAMGなどは別だが、主に「黒子」に徹する場合が多いドイツ勢のエンジンと違い、マセラティのV8ツインターボは「主張のかたまり」である。そしてインテリアも、合理性こそを善とするドイツ勢に対して、マセラティは完全な「快楽志向」。「エロティック」と表現してもいいのかもしれない。

ドイツ勢が信奉しているのは「機械」と「それを生み出し、制御する人間の理性」であるのだが、マセラティ(およびその他のイタリアンブランド)が信奉しているのは「生(せい)の歓び」なのだ――と、日独伊それぞれの車に乗ってきた筆者には思える。

そういった(ドイツ車にばかり乗ってきた人にとっては)未知の価値観と美意識に触れたとき、あなたの人生にまた別の素晴らしい、新しい扉が開く可能性は高い。そうであるがゆえに、人生一度はマセラティ(またはその他のイタリア車)に乗ってみることをオススメしたいのである。
 

マセラティ クアトロポルテ▲マセラティではお馴染みの「アナログ式時計」は、直径こそずいぶん小さめにはなったが、まだまだ健在。センターコンソールの上部で妖艶な異彩を放っている

「マセラティ=ぶっ壊れる」というのも今は昔

だが、マセラティといえば「故障が心配すぎる……」という意見もあるだろう。

そのお気持ちはわかるが、「マセラティ=ぶっ壊れる車の代名詞」というのも古い話である。

確かに、1993年にフィアット傘下になる以前のマセラティ車の品質はひどいもので、“A面”に掲載された清水草一さんの表現をお借りするなら「絵に描いたようなダメ貴族。時代遅れのメカに原始時代の品質管理で、世界一故障する車の名声をほしいままにした」というものであった。

だが、そんなマセラティも変わった。

1993年以降のモデルは「腕の立つ専門工場なら直せる」という品質になり(※それ以前のモデルは凄腕工場にとっても超絶難敵だった)、現在販売されている世代は「ドイツ車とそう大きくは変わらない」というレベルに達しているのだ。

つまり、「機械モノだから絶対に故障しないというのはあり得ないし、そもそもマセラティなので若干の心理的不安は覚えるが、過剰にビビる必要はない」というのが、現行型のクアトロポルテをはじめとする最近のマセラティなのである。
 

マセラティ クアトロポルテ▲マセラティのシンボルマークであるトライデント(三叉のモリ)は、左から順に「エレガンス」「ラグジュアリー」「ハイパフォーマンス」を表している
 

それでいて現行型クアトロポルテの中古車価格は――決してお安いわけではないが――この個体の場合で548万円であり、その他の類似条件車でも450万~650万円ぐらいといったところ。ある種の層にとっては、そして新車時価格から考えれば「意外と安いですね」と感じられる相場なのだ。

もちろん、カタチも音も存在感も強烈な車ゆえ、万人にオススメできるとは思っていない。

だが、「ドイツ車は好きなんだけど、そろそろ違う方面にもちょっと行ってみたくなったんだよね」という人には、ぜひぜひ最近のマセラティをオススメしたいのである。
 

文/伊達軍曹、写真/阿部昌也

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マセラティ クアトロポルテ(2013年4月月以降生産モデル)×全国
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。