トライアンフTR-3▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

砂ぼこりだらけの銀座を走るTR-3は最高にカッコいい存在でした

~語り:テリー伊藤~

今回お邪魔したお店に入ったとき、真っ先に僕の目に飛び込んできたのがこのTR-3。モノクロの風景の中にこの車だけカラーで浮き上がる。そんな雰囲気でした。

トライアンフTR-3▲丸くて大きなライトがTR-3の特徴。1957年のTR-3Aからグリルが横に大きく広げられました

TR-3を見て思い出したのは、1964年の東京オリンピック。オリンピック開催が決まってからの東京はほこりだらけでした。

街をきれいにするために多くのダンプカーが走り、道を掘り起こして舗装していく。東京は急速に姿を変えていきました。

そんなほこりだらけの銀座をエラン、MGA、TR-3などのオープンモデルが走っていたのです。その中でもTR-3は特別な色を出していました。

トライアンフTR-3▲クラシカルなスポークホイールがいい雰囲気です

僕がTR-3を好きなのは、イラストレーターのBow。さんの影響も大きいですね。Car MAGAZINEの表紙の世界観が本当に好きで、中でもTR-3は記憶に残っています。

TR-3に憧れるもうひとつの理由は、高校の同級生にあります。僕は高校時代にアイスホッケー部に所属していました。当時は、高校生でも車の免許を取得できた時代。僕の1つ上の先輩はいつもアイスホッケーの道具を積んで、黒いTR-3で学校に来ていたのです。

先輩の車を見て、高校2年生の僕は「なんてロマンチックなのだろう」と思ったのを今でも鮮明に覚えています。

トライアンフTR-3▲ほこりだらけの薄暗い街を走るオープンカーは最高にカッコよかった

当時はMGの方が人気でしたし、理想を言えばみんなモーガンを欲しいと思っていたはずです。一般的な評価だと、TR-3は口が開きすぎたような顔つきがちょっと下品と感じる人が多いと思います。そして、この次からのTR-4以降はもう“普通の人”になってしまいました。

でも、いろいろな思い出が重なり、僕にとってTR-3は今でも特別な存在であり続けています。

どうですか、TR-3の後ろ姿は。愛らしくないですか? テールランプとか、栗まんじゅうみたいで可愛いですよね。

トライアンフTR-3▲小さなテールライトにはなんともいえない“はかなさ”がある。そこがたまらないのです

テリー伊藤ならこう乗る!

僕は鎌倉に住んでいて、七里ケ浜の駐車場に止まっている車を観察しながら散歩するのが日課です。

湘南にやってくるサーファーも、アウトドアを楽しむキャンパーも、乗っている車はミニバンやSUVばかり。

大きな車は荷物がたくさん積めるし、家でもいちいち片付けずに道具を積みっぱなしにしておくことができますからね。特にマンションで暮らす人は助かります。冬物のジャンパーを今でも車の中に入れっぱなしという人もいるでしょう。

トライアンフTR-3▲アウトドアを楽しむ人たちから見ると、2シーターモデルのオーナーは孤独に映るかもしれない。それを気にせずとことん“1人”を楽しんでほしいですね

一方、2シーターのオープンモデルは荷物を積みっぱなしにしていたら、他のことが何もできなくなります。だから、アウトドア系の趣味は楽しみづらい。

昔はオープンカーにサーフボードを乗せている若者もいたんですよ。でも、今はすっかり見かけなくなりました。

トライアンフTR-3▲現代の車にはないシンプルさがビンテージカーの魅力です

そう考えると、開放的なオープンカーも、オーナーのライフスタイルは案外不健康なのかもしれません。

だとしたら、僕は太陽の下ではなく曇り空が似合うような感じでTR-3を楽しみたい。

ボディカラーは、どんよりとした雲とお城の石の壁や石畳の道が似合うブリティッシュグリーンに。助手席にはトノカバーをかけて、1人であることを強調します。

大自然の中で仲間と楽しそうに過ごしている人たちとは真逆の雰囲気にすることで、彼らとは違うライフスタイルを楽しみたい。ファッションもトラッドなイメージのものを選びます。

トライアンフTR-3▲北米からの要望で2.2Lエンジンを積んだTR-3B

しかも、60’sのビンテージカーだからと後生大事に乗るのではなく、スニーカー感覚で普段使いする。そんなメンタルで楽しみたいと思います。

荷物は積めないし、利便性もほとんどないけれど「不便だからカッコいいんだ!」ということを身をもって訴えていきたいですね。

トライアンフTR-3▲TR-3は後生大事に乗るのではなく、スニーカー感覚で気軽に楽しみたい車です

今回訪れたお店は、特定のメーカーや車種の専門店ではなく、国産車から輸入車まで、オーナーのセンスで様々なモデルが店頭に並んでいました。しかも、車以外に古いカワサキなどバイクも置いてある。

対極にあるような車が同列で並んでいるのは、見ているだけでおもしろい。しかも、マツダ ロードスターなども置いてあるから敷居が高いという感じもしないのがいいですね。

こういうお店が増えると、中古車はもっと楽しくなるのではないかと思います。

トライアンフ TR-3

1952年に誕生したTRシリーズ。TRは“トライアンフ・ロードスター”の頭文字になる。TR-3は1955年にTR-2のマイナーチェンジ版として登場した。搭載エンジンは2L OHVで、トランスミッションは4MT。1957年にはTR-3のマイナーチェンジ版であるTR3Aが登場する。TR3Aはエンジンが100psになった。TR3Aは1961年まで製造され、TR-4にモデルチェンジする。ただ、1962年まではアメリカ向けに2.2Lエンジンを搭載したTR3Bが生産された。今回取材したのは1961年式のTR3Bになる。

文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/柳田由人

テリー伊藤

演出家

テリー伊藤

1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『爆報!THE フライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。新著『老後論~この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(竹書房)が発売中。You Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』を開設!