リノカ ユーロボックス

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMCであるBoseが、カーセンサーで気になる中古車を探して実際に見に行く本企画。

今回はいつもと趣向を変えて、Boseが新たに手に入れた愛車を紹介します。

かなりカスタムされているけれど、ベースは街中でもよく見かけるあの商用車なのです!
 

Bose

スチャダラパー

Bose

1990年にデビューし、1994年「今夜はブギー・バック」が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。スチャダラパーが満を持してYouTubeチャンネルを開設! 詳しくは公式HPへ。愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノターボ
 

世界に1台! プロボックスをBose仕様にリノベしてみた

編集部 Boseさん、どうしたんですかこの車は! ゴルフIIみたいな雰囲気ですが。

Bose プロボックスをベースにリノベした、Bose仕様の車が完成したんだ! 今回はデザインを担当してくれたやまざきさんと、いろいろと話をしたいと思ってね。

デザイナー やまざきたかゆきさん Boseさんと意見を交わしながら、「こんな車があったら面白いかも!」と思って作ったんですよ。リノカが今年1月に発売したEURO BOX(ユーロボックス)というモデルにBoseさんの好みを反映させた、世界に1台のBose仕様です。

日刊カーセンサー▲リノカのデザインを担当するやまざきさん。元々はメーカーで四輪、二輪のデザインを担当していたそう

Bose グリルやインテリア、ホイールが、市販のモデルとは違うんだよね。僕は赤いボディカラーがお気に入り! 今時の車の赤とは少し雰囲気が違うんだ。

やまざき 最近の赤い車は反射した光で地面が赤くなるほどクリア塗装に力が入っていますからね。これはあえて少しクラシカルな雰囲気を出すために、クリア塗装をしないでソリッド感を出しています。

日刊カーセンサー▲シルエットはプロボックスですが、Aピラーより前はかなり変わっています

Bose それが逆にすごく新鮮! しかも単に色を吹きつけるのではなくて、パネルごと塗装しているから、室内にも赤がのぞいている部分があるんだよね。それが昔のヨーロッパ車みたいで良いなと。

やまざき ゴルフIIにも赤が設定されていましたけど、そのイメージですよね。

Bose まさに! 大学生になった娘にお金持ちのお父さんが「ゴルフなら安心だ」って買ってくれたゴルフII(笑)。

やまざき ミッション系の女子大に通っていそうなイメージですね(笑)。

日刊カーセンサー
日刊カーセンサー▲内装もかなり良い感じ!
日刊カーセンサー▲気がついたらBOSEのスピーカーが付いていたみたいです(笑)

Bose プロボックスのすごいところは、これだけオリジナルから見た目が変わっているのに、全然目立たないこと。逆に言えば違和感なく街の中に溶け込んでいるんだよね。たぶん「飲料メーカーの営業車かな」と思われているはず。

やまざき 自動販売機の前でリアゲートを開けていたら「仕事しているのかな」と思われたりして(笑)。

日刊カーセンサー

編集部 完成した車に乗ってみていかがですか?

Bose 一言で表すなら、安心感が半端じゃない! 僕が普段乗っているフォルクスワーゲン ゴルフIIやフィアット ウーノは、ドキドキしながら走っているからね。

編集部 確かにこの取材でも「水温がやばい!」って連絡が入ったことがありましたね(笑)。

Bose 水温計と燃料計を見間違えて大慌てしたこともあるし。見た目がレトロでもベースは今時の車だから、ストレスがなくて天国のようだよ(笑)。

日刊カーセンサー▲ベースは今時の車だから、安心して旧車感を楽しめる!

Bose  グリルのTOYOTAエンブレムも、Bose仕様ならでは! だよね。

やまざき ネットオークションなどで見つかるエンブレムはどれも大きくて、プロボックスのグリルサイズだとバランスが悪いんです。なので、わざわざFJクルーザーのグリルから、エンプレムだけを切り取りました。

Bose うわっ、そこまで手間がかかる作業だったんだ! ありがとうございます(笑)。

日刊カーセンサー

やまざき ベースとなったプロボックスは良くも悪くも普通の車です。丸目、角目、4灯などいろんなスタイルが似合う。その中で、「これが街を走っていたらいいな」と思うものを考えたとき、丸目にたどり着きました。

Bose 僕もゴルフIIを買うときに、2灯か4灯か、かなり悩んだなぁ。丸目2灯だとゴルフIIっぽいイメージだけど、うちにあるゴルフIIの横に止めてみたら実は全然違う顔をしていることに気づいてさ。それも面白いところ!

やまざき また、現代の車は昔のものに比べるとボンネットが高いので、視覚的に低く見えるよう工夫しています。フェンダーのウインカーに、JA11型ジムニーのものを流用しているのも、こだわりポイントです。このあたりはBose仕様に限らず、市販のEURO BOXにも取り入れていますよ。

日刊カーセンサー▲写真右のモデルが市販されているタイプのEURO BOX。実は取材当日、その日に購入したばかりの人と偶然会ったんです!
日刊カーセンサー▲グリルのTOYOTAエンブレムは、Boseならでは。市販されているタイプのRenocaエンブレムも良い感じ
日刊カーセンサー
日刊カーセンサー▲バックドアにサクシードのものを移植したのも、Bose仕様ならでは。これが一番大変な作業だったみたいです(笑)

Bose なつかしい雰囲気の車が走っていると笑顔になるよね。力の抜けたデザインが好きな人に、ぜひ注目してもらいたいな!

リノカのデザインで大切にしていること

やまざき 元々リノカは「昔っぽいデザインが好きだけど、旧車は怖くて手が出せない」という方に届けたいと思っているんです。

Bose ビンテージなアメリカンSUVの雰囲気を出したランクルなんか、まさにそうだもんね。さすがにアーリーブロンコを通勤に使うのは勇気がいるもの。最近、街を走っているとランクルやハイエースのリノカを見かける機会が増えたじゃないですか。デザイナーとしてはどんな気分ですか?

やまざき 普通にうれしいですよ! 僕はリノカをデザインするときに、いかにも“改造車”という雰囲気ではなく、「こういう純正車があるのかな?」と思ってもらえるよう心がけています。だから、リノカが街に馴染んでいるのはすごくうれしいですね。

Bose 今時の車はどれも複雑な造形になったからね。「そっちじゃないんだよ」と感じている人は意外に多いんじゃないかな。

日刊カーセンサー

やまざき 僕はもともとメーカーでデザイナーをやっていたのでよくわかるのですが、車を売るためには、モデルチェンジのときに戦略として前のモデルと大きくデザインを変える必要があります。

Bose 一つ前の車でも、ものすごく古く見えちゃう。

やまざき それがスタイリング上の作戦です。さらに衝突安全などのレギュレーションに沿う形にして、空力を高めて、トレンドも取り入れていく必要があります。

Bose だからどの車も申し合わせたように、同じような雰囲気になってしまうんだろうね。

やまざき 一方でリノカは、そことは視点を変えて、「車が戦略やトレンドなどを気にせずに正常進化したら、こうなっていたんじゃないか?」ということを考えながらデザインしています。

日刊カーセンサー▲今回お邪魔したのは、リノカのフラッグシップショップにあたるFLEX Renoca世田谷店。公式HPでは、デザインのシミュレーションができる他、リノベーション済みの中古車を買うこともできます!

やまざき プロボックスのリノカも、昔の商用車が普通に進化していたらこういう顔つきになっていっただろうというものを形にしました。

Bose 「人と違う車に乗りたい!」とリノカを選んだ人が、街で同じ車を見るようになってきたから、リノカをさらにカスタムするなんて話もあるみたいだし(笑)。

やまざき その発想、すごくうれしいですよ。リノカはあくまでスタート。ここからさらに自分のテイストに染めていってほしいですね。

文/高橋満(BRIDGE MAN)、写真/早川佳郎