アルファロメオ ジュリア▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

「ジュリアじゃモテない」当時はそう思っていました

今回は、「COLLEZIONE Co.,Ltd」で出合ったアルファロメオ ジュリアについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。

~語り:テリー伊藤~

アルファジュリアは素敵な車です。実は以前、まさに今回お邪魔したお店で別のジュリアを見て、売買契約書を結ぶ寸前までいったことがあります。

そのときは最後に少し迷いが生まれて、その間に売約済みになってしまった。その知らせを受けたときにどれだけ傷ついたか。でも直前ではんこを押せなかった僕の責任。こればかりは縁がなかったと思うしかありません。
 

アルファロメオ ジュリア▲久しぶりにジュリアと再開しました

僕の世代が若い頃には、箱型の車といえばBMW 2002の人気がずば抜けて高く、ジュリアはボルボなどと同じくらいの位置付けでした。

国産で人気があったのはハコスカやブルーバードの510です。僕はジュリアもいいなと一瞬思いましたが、やはり“じじくさい”という気持ちの方が勝ってしまった。

「これじゃ女の子にモテないよ」とね。

ファンからは怒られそうですがあえて言うと、トヨタのプレミオや日産のシルフィのような存在。誰も車名を口にしない車と同じように見ていたのです。
 

アルファロメオ ジュリア▲発売当時はどちらかというとジュリアは地味な存在でした。しかし1980年代にはマニアからの注目を集めるようになりました

その後クーペ人気が高まり、僕はマスタングなどアメ車に夢中になります。ジュリアの存在はすっかり忘れていました。

でも年齢を重ね、ふとジュリアを見たときに、独特のシルエットやリアガラスのデザインなどがすごくカッコよく見えたのです。
 

アルファロメオ ジュリア▲湾曲したリアガラス。このデザインがたまらなく好きです

実は僕は、バブルで羽振りが良かったときにとんでもない車を買ったことがあります。それはアルファロメオのGTAm。

ロンドンに遊びに行ったときに向こうの中古車雑誌を見て、「すごい車があるぞ!」とお店に足を運びました。

そこにはアルファGTAmとピンクのロールス・ロイス カマルグ、そしてブガッティのT35が置いてありました。お店の人いわく、ピンクのカマルグはなんとピンク・フロイドが乗っていたと言うのです!

僕はそこでGTAmを買い、個人で日本に輸入しました。でも日本でじっくり見てみたらかなり程度が悪く、しかも完全なレース仕様ですからとてもじゃないけれど素人が乗れる代物ではなかったのです。

たまたまその車を欲しいと言うフォトグラファーがいたので、仕方なく僕はタダ同然の値段で譲りました。今になって思えばもったいないことをしたと思います。きっと数千万円にはなっていたでしょうからね。
 

テリー伊藤ならこう乗る!

車好きは誰もが若い時の青春体験をもっているもの。たとえ人気のない車でも、若い頃の思い出があればそれはかけがえのない1台になります。

きっとこのジュリアはそういう体験をもった人が選ぶモデルでしょう。

気をつけないといけないのは、昔好きだった女性に対する憧れのような気持ちで乗ってはいけないということ。「いい女だったな」と心の中でずっと引きずっていて、数十年ぶりに同窓会で会うと後から「あれ?」となる。そんな経験、みなさんもありますよね?

「僕たちは時空を超えて今ここにいるんだ。この気持ち、この再会を大切にしよう」と一発カマしてみても、その気持ちは錯覚なことが多い。後で時空を超えていなかったことに気づくものです(笑)。

昔憧れた車も「時空を超えて今僕の目の前にある」と思っても、現代の車に慣れているといざ乗ってみたらいろいろなことに苦労します。

だから僕だったら、手頃な値段のもので妥協はせず、コレツィオーネのような専門店で程度のいいものを手に入れてオリジナルの状態で乗ると思います。

あるいは外側だけピカピカにして、エンジンや足回りは現代のものに交換して楽をしながら当時の雰囲気を楽しみたいですね。これもファンからは怒られそうですが。
 

アルファロメオ ジュリア▲直線的でシンプルなインテリア。シートの状態も良好です
アルファロメオ ジュリア▲昔のラジオのような、メーターデザイン。ビンテージ感あふれる雰囲気がたまりません!
アルファロメオ ジュリア▲取材車両は1.3Lエンジンを搭載。他にも1.6Lエンジンを搭載するTIスーパー、ジュリアスーパーなどが存在します

最近、このジュリアを原宿でよく見かけるんですよ。

オーナーはかなり若くて、ジュリアをシャコタンにして不良っぽく乗っている。それがすごく様になっているんです。ある意味、上級者の楽しみ方ですよ。
 

アルファロメオ ジュリア▲こういう車はね、守りに入っちゃダメ。昔からのファンから何を言われようと、好きなように楽しんでほしいですね

ジュリアのような車はどうしても買ってお店を出た瞬間から守りに入ってしまうもの。手放すときの査定額を考えて、毎日気を使いながら大事にしてしまう。

若い彼らは一切守りに入らず、自分の好きなように旧車を楽しんでいる。その若さが羨ましいです。

こういう車を軽自動車と同じような感覚で乗れる感性を取り戻したい。久しぶりにジュリアと出合って、そんなふうに感じました。
 

アルファロメオ ジュリア

ジュリエッタの後継モデルとして登場したジュリア。今回取材したのはベルリーナと呼ばれるセダン。1300TIは1965年に登場したグレードで、82psを発生する1290ccのDOHCエンジンに5MTが組み合わされる。ジュリアにはベルリーナ以外にも2ドアクーペのスプリントGT、レーシングモデルとなるジュリアTZなどが存在する。2017年には、名車であるジュリアの名を受け継いだフラッグシップモデルとなるアルファジュリアがデビューした。
 

文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/柳田由人

テリー伊藤

演出家

テリー伊藤

1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『爆報!THE フライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。そんなテリーさんがYou Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』を開設したので、要チェック!