Boseさん 写真:篠原晃一


2014年に情報誌 カーセンサーで始まった、スチャダラパー Boseが珍車を見に行く人気連載「Bosensor」。

当時取材した珍車は販売店の売り物だったが、数年経った今“実際に購入した人”に会いに行こう! という難易度高めな企画で再スタートすることに! あの時の珍車は今誰の手に……!?

Bose

スチャダラパー

Bose

1990年にデビューし、1994年「今夜はブギー・バック」が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。12月14日には毎年恒例となる『暮れの元気な5あいさつ(KG5)』を恵比寿リキッドルームで開催。チケット詳細は公式HPへ。愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアットウーノターボ

ホンダ シビック【今回の車】2016年に取材したシビック専門店「BORDERLESS Co.,Ltd.」で出会ったホンダ グランドシビック。どんな人が買ったのか……!? 写真は取材当時のもの

車が車らしかった最後の世代のモデルに再会

スチャダラパーのBoseです!

僕は1980年代~90年代初頭の車って「車が車らしかった」最後の世代だと思っているの。

その後はだんだんと電子制御を多く積むようになる。もちろん安全性が高まったのはすごいこと。ただ、それと引き換えに走ったときのダイレクト感が薄まったのは寂しいんだよね。

この当時のホンダは走らせると楽しいし、何よりデザインがいい! 中でもワンダーシビックの直線的で未来を感じるデザインは最高だよ。グランドシビックも好きな1台。だから3年前に取材で「BORDERLESS Co.,Ltd.」を訪れたときは盛り上がったよね。

今回はお店の計らいで、取材時に僕が気に入ったグランドシビックを買ったオーナーさんとご対面!

ホンダ シビック▲再会したホンダ シビックSiRは、1987年9月のフルモデルチェンジで登場。この車のオーナー桝永さんの愛車は1989年9月のマイナーチェンジで追加された160psを発揮する1.6L VTECエンジンを搭載したSiR。走り好きからいまだに人気の高いモデルだ。ちなみにオーナーの桝永一也さんは36歳

VIPセダンからシビックに乗り替えた理由は?

Bose 今はこのシビックと何に乗っているの?

桝永 他に車は持っていなくて。このシビック1台で一年中頑張っています。

Bose うわっ! やるねえ、男だ(笑)。桝永君ってグランドシビックがリアルな世代ではないけれど、なぜこの車を選んだの?

桝永 20代の頃はいわゆるVIPカーにハマッて仲間と一緒に走っていました。でもだんだんと仲間が結婚して、ファミリーカーに乗るようになったんです。

Bose 人生の転機で仲間が車を降りたから、自分も降りることになったわけだ。でもなぜそこからシビックに?

桝永 実はVIPに乗っている頃から旧車も好きで、ハコスカに憧れていました。でもハコスカなんて手が届かない値段だし、通勤にも使うからエアコンがないとつらいなと思ったんですよね。で、いろいろ考えているうちにグランドシビックにたどりつきました。お店に入庫したときは塗装が傷んでいたみたいですが買うときはキレイだったし、機関系も良好。すごく満足しています。一度アイドリングが不安定になりましたが、すぐに直してもらえたので助かりました。

ホンダ シビック▲「やっぱこの時代は国産車のインテリアも雰囲気いいなあ」とBoseさん

Bose 僕も普段使いするつもりでゴルフⅡを選んだから、その気持ちよくわかるよ。エアコン付きを条件にすると、80年代後半~90年代前半がボーダーラインになるんだよね。でも突然ヤングタイマーなシビックに乗って、友達はどんなリアクションだった?

桝永 みんな驚いています。「なんでVIPからそんな小さいのに行くんだ」って(笑)。当時乗っていたのは20系と30系のセルシオやクラウンでしたから。

Bose そりゃそうだ(笑)。桝永君は現在独身ということだけれど、奥さんは桝永君の趣味を理解してくれる人じゃないと大変だよ。うちもしょっちゅう怒られているから。「なんでわざわざ壊れるかもしれないものを買ってくるんだ!!」って。

ホンダ シビック▲「これ、かわいいじゃん!」Boseさんが気に入ったのは、エアコン部のフタ

この時代の車は1/1スケールのプラモ!?

BORDERLESS大貫社長 Boseさん、ご無沙汰しています。桝永君、シビックをキレイに乗っているでしょう。

Bose いい感じですよね。ホイールとか、リアのウイングとか、やる気を感じるよ。

桝永 このウイングは買った後にオークションで探しました。当時の社外品なんですが、どっしりしたスタイルが気に入っています。最近のは根本が細くてスカスカした感じなんですよね……。

大貫社長 桝永君のグランドシビックのようにスポーツ路線もありだし、US仕様にするのも人気です。例えばサンバイザーの裏が日本語ではなく英語になっているとか。

ホンダ シビック▲グランドシビックのインテリアは直線基調の中に曲線が使われ始めている。「ちょうどデザインの過渡期だったんだろうね」とBoseさん

Bose もう1/1スケールのプラモ感覚だよね。3年前にこのお店でシビックを見たとき、僕はドアを閉めた瞬間に80年代にタイムスリップできるような感覚がいいなと思ったのを覚えているよ。桝永君はシビックに乗ってみてどお?

桝永 僕は80年代はまだ子供だったからリアルに知っているわけじゃないけれど、Boseさんと同じような感覚になることがあります。インテリアの雰囲気がいいですよね。あとは音が気持ちいいです。以前からVTECのカムが切り替わるときの音が好きで、街でホンダ車を見るとつい目で追いかけていました。今はその音を自分の運転で聞けるから最高に気分がいいです。

Bose 僕はコンビニに寄って買い物を終えて車に戻ったときに、自分のゴルフⅡと周りの車を見比べて「やっぱりゴルフⅡ、いいね」って思うことが多いんだ。

桝永 それ、僕もあります。シビックのイベントに参加したときにいろんな車を見て楽しんだ後、自分の車に戻って「やっぱりグランドが一番」って思ったり(笑)。でも最近、お店の社長が乗っているワンダーシビックを見ていたらだんだんワンダーも良く見えてきて困っているんですよ。

Bose 浮気心が出てきたんだ。でもそれも車の楽しみのひとつだよ。これからもシビックのある暮らしを楽しんでほしいな。

ホンダ シビック▲桝永さんのシビックの走行距離は約15.4万km。「この距離ならまだまだ!」

オーナーに会いに行ったお店で、超激レアモデルを発見!!!!!

ホンダ シティ▲白と紺色のシティターボIIが店頭に並ぶ! 1台でも珍しいのに、ものすごい光景!!

Bose 桝永君のシビックもいいけれど、またこのお店ですごい車を見つけちゃったよ……。シティターボII、ブルドッグじゃん! しかも2台!!!!

大貫社長 今、ブルドッグは本当に出てこないですからね。しかも白い方は走行わずか5.1万kmです。

Bose カブリオレはたまに見かけるけれど、ターボIIは本当に見ない。当時、すごく乗りたかった車のひとつなんだ。ちょっと中も見ていいですか? うわっ、インテリアが青い! 凄い色だ(笑)。これ、純正色でしょう。スクエアなデザインといい、最高のセンスだよね。もちろん法規的な問題とか、いろいろあるのは分かるけれど、現代の車もこういうセンスでつくってほしいよね。

大貫社長 残念ですがこういう車は二度と生まれないでしょうね。だからこそ僕らはていねいに残していかなきゃダメだと思っています。

Bose シティやシビックを見てあらためて思ったのが、80年代のホンダはデザインチームが本当によかったんだね。そして宣伝チームも優秀。シティのCMとか、今でも頭に残っているから。

桝永 これ、1983年式ですか。僕も1983年生まれなので同じ年です。シビックとは全然違う魅力がありますね。かわいい!

Bose この時代は日本が好景気に向かっていく時で自動車メーカーもお金があったから、いろいろな車をつくることができた。最も車がワイワイしていたんだよね。だから今の時代でもカーセンサーで探すのが楽しい。桝永君もシビックを楽しみつつ、いろいろな車に注目してみてほしいな。

ホンダ シビック(初代)▲店頭には1975年式の初代シビック1200RSも!!! この個体にはワンオフで製作されたマフラーが装着されている。ちなみにRSは「ロードセーリング」の略で、後に2代目フィットでも使われた

【Boseの称賛タイム】ボーダーラインを踏み越えた人って思わず応援したくなる!

製造から30年前後経っている80~90年代初頭の車を選ぶ。これって初めて買う人にとってはボーダーラインを一歩踏み越える感覚だと思う。

もちろん「壊れるかもしれない」というリスクも考えるはず。でも越えた人にしかわからない楽しさもある。

桝永君と話していると、ワクワクしている雰囲気がバンバン伝わってきて嬉しかったな。

もちろん、この時代の車に乗っていると大変なこともあるもの。

でもシビックとの暮らしを楽しんで、武道や茶道のようにシビックの道=『シ道』を極めてほしいね。

ホンダ シビック▲「エンジン、キレイだねえ」ボンネットを開けてますます会話が盛り上がるBoseさんと桝永さん
文/高橋満(BRIDGE MAN)、写真/篠原晃一