カンナム ライカー ▲バイクのような車のような……不思議な形をしたマシン「カンナム・ライカー」で都内から房総までツーリング! モーターライフスタイリスト・河西啓介が、その魅力をご紹介します

「3台連ねて走りたい!」そんな投稿に
コメントしてきた西村編集長

前二輪、後一輪の3ホイーラー、カンナム。正直に言えば“イロモノ”だと思っていたのである。目立ちたがり屋が乗る、酔狂な乗りものだろうと。

新シリーズのカンナム「ライカー」を見たとき、うわ、カッケー! と思った。

じつはこれまでの「スパイダー」シリーズはちょっと大げさでオッサンくさいと思っていたのだが(いきなりいろいろディスってごめんなさい)、ライカーは掛け値なしにカッコいい。

カンナム ライカー ▲フェアリングをもたない“ネイキッド”なカタチは、真横から見るとまるで水上バイクのようだ。ライダーは前輪と後輪の間に浮かんでいるように腰掛ける。とにかくその佇まいの“未来感”はハンパない

とはいえやっぱり、僕はこのライカーも“イロモノ”にカテゴライズしていた。スパイダーよりスタイルの印象が強烈なぶん、余計に“カッコ優先”に見えたからだ。

だからこそ単純に、「これ3台ぐらい連ねて走ったら、メチャクチャ目立って面白いだろうなー」と思ったのだ。イメージはほとんど、都内を走り回るマリオ風カートである(本当にすみません!)。

で、ライカー発表会の場ですぐ、「これ何台か連ねて走りたい。誰か実現してください!」とFacebookに投稿したら、すぐにピコンとコメントが来た。

「ぜひやりましょう!」。カーセンサー西村編集長からである。

まあ、ちょっとノリがよすぎるが(笑)。

いざ房総へ
これ、ただの“イロモノ”ではない!

そして1ヵ月半後。その言葉どおり3台のライカーがカーセンサー編集部に集まった。

これからみんなで千葉・房総までツーリングに行くのである。

カンナム ライカー ▲集まったメンバーは西村編集長をはじめとするカーセンサー編集スタッフ、「かえセンサー」を連載中のタレントのかえひろみちゃん、そして僕

だが聞けば、編集長をはじめ、半数以上が二輪のバイク未経験者だという。

ホントに大丈夫かいな……と、一抹の不安がよぎったのは事実である。

カンナム ライカー ▲都心から首都高に上がり、アクアラインを通って房総へ

見た目には二輪と四輪のハイブリッドのようなライカーだが、運転の仕方もまさにハイブリッド・スタイルだ。ハンドルはオートバイを同じバーハンドルで、アクセルは右手のスロットルでコントロールする。

ただし、ハンドルにブレーキレバーは、ない。ブレーキは右足でフットペダルを踏み込むことで前後三輪を制動するのだ。つまり上半身は二輪、下半身は四輪的な運転操作が要求されるということ。

カンナム ライカー ▲実は走りはじめてすぐ、前走車が急に止まったとき、反射的に右手でブレーキレバーを握ろうとして、「ない~!」とパニックになりかけた。ギリギリ止まれたが(汗)

だが少し走って、ハンドル、アクセル、ブレーキにさえ慣れてしまえば、後はまったくのイージー・ライド。むしろ「転ばない」ということの安心感は絶大だ。

ブレーキも前後を別々に操作するオートバイに比べ、こちらはペダルを踏むだけだから、踏力の加減さえつかんでしまえば安心だし、安全だ。

もうひとつ、バイクとも車とも感覚が違うのはコーナリング。

バイクは車体を傾けてカーブを曲がるが、もちろんライカーは傾かないから、ハンドルを「よいしょ」と切る必要がある。ここはライダーにとっては違和感があるところだが、それもカーブ3つ、4つ抜ければすぐ慣れてしまう。

ただし車体が傾かないぶん、ライダーは「横G」の影響をモロに受ける。車のシートのように横方向のサポートはないから、タイトターンではハンドルをしっかり握っていないと飛ばされてしまいそうだ。カーブで腕力が必要になるなんて、新鮮な体験だ。

ひとつ、コーナーの走り方について僕が会得したのは、「カーブは車に乗ってるつもりで走るとよい」ということだ。コーナー進入時、ブレーキングでしっかり前輪に荷重をかけ、ハンドルを切ってタイヤに舵角をつけて、早めに車体の向きを変えてやる。

そうしてちゃんと操れば、異様な速さでコーナリングすることができる。とくに峠の下りだったら二輪を楽々追い回せるだろう(追い回しちゃダメだけど)。その想像以上のスポーティな走りに、思わず「ライカーでサーキット走ってみたい……」と夢想してしまった。

だがこの日、房総まで3台のライカーでツーリングをして僕がいちばん驚いたのは、そのハイブリッドな運転感覚でも、予想以上のスポーティな走りでもなかった。

感心したのは、二輪経験皆無のかえちゃんや編集部の井上さん(女性)、そして西村編集長、みんながアッという間にライカーを乗りこなしてしまったということ。

カンナム ライカー ▲とくに女性2人は、房総の海沿いのくねくね道を、すごく楽しそうに、気持ちよさそうに走っていた。思わず「ホントにバイク乗ったことなかったんだよね?」と言いたくなったほどだ
カンナム ライカー

タイヤがひとつ増えるだけで、バイクならではの開放感や爽快感は保ったまま、これほど安心、安全に乗れてしまうのだという事実に、長年二輪に乗ってきた者として目からウロコが落ちる思いだった。

世の中には「二輪免許は持ってないけど、バイクに乗ってみたい」と思ってる人はたくさんいるだろう。そういう人にはぜひ、このライカーにいちど(試乗でもいいから)乗ってみてほしい。きっと「バイクってこんな乗りものなのか!」と感激すると思う。

一方、日ごろ二輪に乗っているライダーにとってもライカーは新鮮だ。何度も言うが、“コケる”心配なく走れるというのは、これほど気がラクで、それゆえ走りに集中することができ、かつ疲れないということを体感することができた。

カンナムはバイクに一輪足したモノでも、車から一輪減らしたモノでもなく、まったく違う個性と楽しみをもつ「3ホイーラー」という乗りものなんだということが、この日1日ツーリングしてみてよくわかった。“イロモノ”だなんて思っててごめんなさい。

もし状況が許し、二輪、三輪、四輪車をそれぞれ所有することができたなら、どんなに素晴らしいモータリングライフが送れるだろう、思わずそんなことを考えたのだった。

乗り方の説明や実際に走行しているマシン、当日の僕の感想などは下記の動画からも見れるので、こちらもぜひ!

文/河西啓介、写真/篠原晃一

河西啓介(かわにしけいすけ)

モーターライフスタイリスト

河西啓介

自動車やバイク雑誌の編集長を務めたのち、現在も編集/ライターとして多くの媒体に携わっている。また、「モーターライフスタイリスト」としてラジオやテレビ、イベントなどで活躍。アマチュアコミックバンド「Dynamite Pops」のボーカルとしても20年以上にわたり活動している。