▲「便利か不便か?」と言われればぶっちゃけ不便なんですが、とはいえ一度は乗りたい2座式のオープンカー。新型BMW Z4の発売を記念して、そんな2シーターオープンカーの「打線」を考えてみました! ▲「便利か不便か?」と言われればぶっちゃけ不便なんですが、とはいえ一度は乗りたい2座式のオープンカー。新型BMW Z4の発売を記念して、そんな2シーターオープンカーの「打線」を考えてみました!

どうしても外国人選手(輸入車)多めの編成にはなるが

新型トヨタ スープラの兄弟車である2シーターオープンカー新型BMW Z4が3月25日、いよいよ発売された。

箱型の実用車ばかりが幅を利かせる今の世の中で、特に役には立たない(?)2座式オープンカーの新型がデビューするというのはなかなかの慶事。

そんな慶事を祝う意味で、今回は「2シーターオープンカーのみ」の異色打線を組んでみた。

ただ、2シーターオープンというのはある意味貴族的な乗り物。

それゆえ何も考えずに打線を組むと「4番・サード、ランボルギーニ アヴェンタドール ロードスター。中古車相場4000万円!」みたいになってしまい、球団経営は即座に破綻する。

それゆえ、あくまで「年俸を払えそうな選手=買えそうな車」に絞ったうえでの編成としたことを、あらかじめお断りしておく。

ではさっそく発表しよう!

1 中 ポルシェ ボクスター(初代)
2 遊 ホンダ S2000(初代)
3 右 BMW Z4(現行型)
4 左 フェラーリ F355スパイダー
5 一 日産 フェアレディZ ロードスター
6 三 アルファロメオ アルファスパイダー(初代)
7 ニ ダイハツ コペン(現行型)
8 捕 マツダ ロードスター(現行型)
9 投 ホンダ S660(現行型)


……国産車にはそもそも2座式オープンが少ないため、どうしても助っ人外国人選手(輸入車)が多くなる。

実際のプロ野球ではルール的にこんなスタメンは認められないのだが、まぁこの球団はあくまでも「妄想球団」ということで、大目に見ていただけたら幸いだ。

▲主要な打順に外国人選手を置く、助っ人打線が完成!▲主要な打順に外国人選手を置く、助っ人打線が完成!

1番・センター「ポルシェ ボクスター(初代)」

▲1996年から2004年まで販売された初代ポルシェ ボクスター。背番号(型式名)は「986」▲1996年から2004年まで販売された初代ポルシェ ボクスター。背番号(型式名)は「986」

切り込み隊長に任命されたのは1996年デビューの大ベテラン。

2.7L(初期型は2.5L)または3.2Lの水平対向6気筒エンジンを車体中央に搭載して後輪を駆動するという、いわゆるミッドシップレイアウトを採用するポルシェの2シーターオープンだ。

選手としての(車としての)総合的な能力は、最新世代の選手と比べれば当然ながらやや落ちる。

しかし肥大化&電子制御化がひたすら進む新世代の2座式オープンと比べた場合のシンプルさが、今となっては「逆に新鮮!」ということで地味に人気を集めている1台だ。

中古車相場は総額約80万~約260万円と上下に幅広いが、比較的低走行な個体のボリュームゾーンは総額110万~150万円といったところ。

体幹の強さ(ボディ剛性の高さ)と、いまだ衰えぬ走力でいきなりの二塁打、三塁打もありえるということで、1番打者に起用した。

2番・ショート「ホンダ S2000(初代)」

▲こちらがホンダ S2000。超高回転域までひたすら気持ちよく回る直4VTECエンジンを搭載▲こちらがホンダ S2000。超高回転域までひたすら気持ちよく回る直4VTECエンジンを搭載

1998年に発表されたオープン2シーターFRスポーツゆえ、こちらも大ベテランではある。

しかしクローズドボディの車と同等以上のボディ剛性と、9000回転まで軽々と回る2L直4VTECエンジンは、いまだそんじょそこらの若手を寄せ付けないだけの実力と魅力を秘めている。

2座式オープンカーというカテゴリーには軟派な車種も一部存在するが、こちらS2000はガチのアスリート系。それゆえ強打力も求められる現代野球の2番打者には最適で、ショートストップ(遊撃手)というハードな守備位置も難なくこなすだろう。

3番・ライト「BMW Z4(現行型)」

▲2019年3月25日に日本でも発売となった新型BMW Z4▲2019年3月25日に日本でも発売となった新型BMW Z4

強力クリーンナップの先陣を務めるのは、今年3月25日に発売となったばかりの大型ルーキー。

ご承知のとおり新型トヨタ スープラの兄弟車で、基本プラットフォームなどを共有している。

先代Z4はリトラクタブル式のハードトップだったが、こちら3代目は古典的なソフトトップに回帰。だが走行中でも50km/hまでなら約10秒でトップの開閉が行える。

日本仕様の搭載エンジンは最高出力197psの2L直4と、同340psの3L直6で、トランスミッションは両者とも8速AT。

新車価格は566万~835万円となかなかお高く、中古車もまだ流通していない。

だがきわめて俊足巧打なこの選手をクリーンナップに置かない手はないだろう。イメージとしては、史上初めて三度のトリプルスリー(打率3割・本塁打30本・盗塁30回)を達成した山田哲人(東京ヤクルト)だ。

4番・レフト「フェラーリ F355スパイダー」

▲1994年発売のV8フェラーリ。中古車市場での人気はいまだ非常に高い▲1994年発売のV8フェラーリ。中古車市場での人気はいまだ非常に高い

年俸総額を抑える意味で、スーパースター(スーパーカー)はあえて獲得しないのが球団方針。だがさすがに主砲である4番打者には、ある程度以上の年俸を提示してスーパーな選手を呼び、そして大活躍してもらうべきだろう。

その場合の最有力候補はこれしかない。

1994年から1999年まで販売されたフェラーリの2座式ミッドシップオープン。

最高出力380psを発生する3.5L V8エンジンは、スペックだけを見れば最新世代のスーパーカーには遠く及ばない。

だが精密な大排気量NA(自然吸気)エンジンならではの甘美な回転フィールと、フェラーリ各世代の中でも「特に素晴らしい!」と評される官能的な排気音の前では、スペックなど心底どうでもよくなる。

特にソフトトップを降ろした状態で聴くこの車のV8サウンドは最高すぎるほど最高だ。

年俸(中古車相場)は約1600万円~とけっこう強烈。だが、そこは打線の主軸となる4番。

それでも獲りにいく価値がある「選手」である。

5番・ファースト「日産 フェアレディZロードスター」

▲2009年から2014年まで販売された日産 フェアレディZロードスター▲2009年から2014年まで販売された日産 フェアレディZロードスター

4番打者の座こそフェラーリ F355スパイダーに譲ったが、強力クリーンナップのトリを飾るのはこの車、日本の2座オープン界が誇る和製大砲だ。

基本コンポーネントはクーペと共有で、エンジンは最高出力336psを発生する3.7L「VQ37VHR」V6 DOHC。シンクロレブコントロール付き6MTまたはマニュアルモード付き7速ATを介して後輪を駆動する。

本革とネットシート生地を組み合わせた専用の空調システム内蔵エアコンディショニングシートを備えるなど、豪快な走りと同時に「きわめてラグジュアリーな雰囲気」も堪能できるのがこの車の特色。

比較的負担の少ない「一塁」を優雅に守りながら、自慢の強打力を存分に発揮してもらいたいと、フロントならびに積年のファンから期待されている。

6番・サード「アルファロメオ アルファ スパイダー(初代)」

▲そもそもは1960年代に登場し、1993年まで生産された初代アルファロメオ アルファ スパイダー▲そもそもは1960年代に登場し、1993年まで生産された初代アルファロメオ アルファ スパイダー

それなり以上の打力が求められる「6番打者」はなかなかの激戦区だったが、大方の予想を裏切って超ベテランが開幕レギュラーの座をつかんだ。

イタリアの名門アルファロメオが作っていた麗しいデザインの2シーターオープンで、さすがに現在流通しているのは90年式以降の最後期型がほとんどだが、そもそもの基本設計とデザインは1960年代までさかのぼる。

最終型の搭載エンジンは最高出力120psの2L直4DOHC。トランスミッションは5MTを基本としつつ、最終型では3速ATも選択可能となった。

走力と打力は現役当時(新車当時)から実はさほどのものではなく、守備力(整備性)もけっこう不安視されている。

そんな選手がなぜ「6番・サード」という重要なポジションを獲得したかといえば、理由は「華」だ。

ガチムチなアスリート系選手だけで打線を組むのも良しだが、そもそも2座式オープンカーというのは「華」を楽しむべきものであって、ガチムチ系である必要はない――との意見も根強い。

クリーンナップの後の6番は塁が埋まった状態で回ってくることも多い。そんな状況でファンが心から期待できるのは華を持った選手だ。

スパイダー選手はぜひとも故障に気をつけて、華のある選手としてゆるゆる長く活躍してほしい。

7番・セカンド「ダイハツ コペン(2代目)」

▲2014年発売のダイハツ コペン。コペンには「ローブ」「セロ」「エクスプレイ」という3種類のデザインがあるが、写真はクラシカルな丸目ヘッドライトを備える「コペン セロ」▲2014年発売のダイハツ コペン。コペンには「ローブ」「セロ」「エクスプレイ」という3種類のデザインがあるが、写真はクラシカルな丸目ヘッドライトを備える「コペン セロ」

身体(排気量)が小さいためいわゆる馬力にはやや欠ける選手だが、外すことのできない名プレーヤー。

2014年にデビューした軽自動車規格の2シーターオープンで、開発のテーマは「感動の走行性能」と「自分らしさを表現できるクルマ」。

エンジンは660ccの専用チューンされたターボエンジンで、車台には新骨格構造の「D-Frame」を採用した。

それゆえ軽自動車ながらいかにもスポーツカーらしい骨太な走りが堪能できるとともに、ドア以外の外板パーツのデザインやカラーを購入後でも変更できるという小器用な一面も併せ持つ。

イメージとしては、まるで牛若丸のように華麗で変幻自在な守備力を見せつけつつ、実はけっこうな打力も持ち合わせている広島東洋カープの二塁手、菊池涼介だ。

8番・キャッチャー「マツダ ロードスター(現行型)」

▲こちらが2015年登場の現行型マツダ ロードスター▲こちらが2015年登場の現行型マツダ ロードスター

昭和の時代までしか野球を観ていなかった人は「キャッチャー=太ってる人」みたいな印象があるかもしれない。

だが考えてみれば捕手というのは座ったり立ったり投げたり、野手に指示を出したり投手をリードしたりと、かなり過酷なポジションだ。

それゆえ現代野球のレギュラー捕手はたいていの場合、細マッチョから中マッチョぐらいのアスリート系である。

そういった傾向から考えると、このチームの捕手は現行型のマツダ ロードスターに任せるほかない。

ロードスターとしては4代目にあたるモデルで、マツダ独自の「スカイアクティブ技術」とデザインテーマ「魂動」により、なんとも素晴らしい2シーターオープンカーに仕上がっている1台だ。

搭載エンジンは最高出力131psの直噴1.5Lガソリン「スカイアクティブ-G 1.5」。数値だけを見ると物足りなく感じるかもしれないが、軽量かつタイトなこの車との組み合わせにおいては「十分以上!」としか言いようのないパフォーマンスを発揮してくれる。

現在の中古車相場は総額170万~320万円と上下に幅広いが、総額200万円前後でなかなかの好条件車を探せるはず。

キャッチャーマスクをポーンッと放り投げるようにソフトトップを開け放ち、広い視野でもってチームと人生を大勝利に導きたい。

9番・ピッチャー「ホンダ S660」

▲2015年にデビューした軽オープン2シーター、ホンダ S660▲2015年にデビューした軽オープン2シーター、ホンダ S660

ポルシェ 911スピードスターやフェラーリ458スパイダーなどの本格左腕を押しのけて、エースの座はこの小柄な右腕がつかんだ。

1996年に生産を終了したビート以来19年ぶりとなるホンダ製の軽オープン2シーターで、いわゆるミッドシップレイアウトを採用。

きわめて小ぶりだが、スポーツカーの醍醐味である「曲がる楽しさ」は最大限に堪能できる。

トップは脱着式ソフトトップの「ロールトップ」となり、風の流れを調節する昇降式リアセンターガラスも完備。

搭載エンジンはアクセルレスポンスの鋭い専用チューンの660ccターボで、トランスミッションは7速パドルシフト付CVTに加え、軽自動車初の6MTも。現在の中古車相場は総額120万~250万円といったところだ。

6番打者であるアルファロメオ スパイダーのところでも述べたが、2座式オープンカーの魅力とは、必ずしも強大なパワーだけから生まれるものではない。

その意味で、プロ野球選手としては小兵でありながら「曲がるのが得意」という部分で勝負できるホンダS660は、絶妙なコントロールと変化球で通算173勝を積み重ねた往年の大投手、桑田真澄(読売)のイメージだ。

▲外野の3ポジションは外国人が固める布陣に。華やかさあふれるスター軍団的メンバー▲外野の3ポジションは外国人が固める布陣に。華やかさあふれるスター軍団的メンバー

以上が、自称監督である筆者が考えるチームオーダーだ。なおヘッドコーチには往年の名選手、本田ビート氏を招聘するつもりでいる。

……あなたが考えるオーダーとおおむね一致していただろうか? それとも、まるで異なっていただろうか?

文/伊達軍曹、絵/龍神貴之、写真/マツダ、ポルシェ、ホンダ、BMW、フェラーリ、日産、フィアット・クライスラー、ダイハツ

伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。