▲矢田部明子。アナウンサーやラジオパーソナリティーとして活動後モータージャーナリストの道を歩みはじめた。国立 宇部工業高等専門学校で機械工学や物質工学について学んだ知識を活かし女性の目線から評論している。愛車のランドクルーザー76でオフロードコースを走るのが趣味 ▲矢田部明子。アナウンサーやラジオパーソナリティーとして活動後、モータージャーナリストの道を歩みはじめた。国立 宇部工業高等専門学校で機械工学や物質工学について学んだ知識を生かし、女性の目線から評論している。愛車のランドクルーザー76でオフロードコースを走るのが趣味

新・旧ジムニーを徹底的に比較!

20年ぶりにフルモデルチェンジを行ったジムニー。今年、7月に登場すると売れるは売れるはで生産が追いつかず、納車まで数年待ちという状態。車好き界隈では空前のジムニー祭りの真っ最中。

しかし……

えっ? そんなに人気なの? ぶっちゃけ、どこがどう変わって良くなったの!?

と思っている方も多いはず。そこで、“駆け出しモータージャーナリスト 矢田部明子”が祭りばやしの鳴りやまない、ジムニーがどう進化したのか新旧比較してみました!

▲右が新型ジムニー(JB64)左が旧型ジムニー(JB23)。全幅は同じ1475mm。▲右が新型ジムニー(JB64)、左が旧型ジムニー(JB23)。全幅は同じ1475mm。

まずは見た目

▲後ろから見ると四角く2代前と瓜二つの新型ジムニー。遠くから見ると見分けが付かないかも。一方、旧型ジムニーは投影面積を少なくし空気抵抗を向上させる為にピラー部分からルーフにかけて絞り込んでいます。▲後ろから見ると四角く2代前とうり二つの新型ジムニー。遠くから見ると見分けがつかないかも。一方、旧型ジムニーは投影面積を少なくし空気抵抗を向上させるためにピラー部分からルーフにかけて絞り込んでいます。

車幅は同じですが、並べてみると旧モデルはフェンダーの角が丸くルーフにかけてやや絞り込んでいるので(台形のような形)キュッとしまってコンパクトに見えます。一方新型ジムニーは、少し無骨で先々代ジムニーのデザインを継承したかのようです。

デザインの好みは人それぞれですが、現在の売れ行きを見ていると四角い方がジムニーらしいと思う人が多いのでは?

当時新型だった丸いジムニーより、やっぱり四角い初代ジムニーの方がいいと乗り替えるユーザーがいたほどですから。それくらい四角いジムニーは四輪駆動車らしく、ジムニーが好きな人には親しみのあるデザインだったのです。
 

▲新型ジムニー。端が切れ上がったグリルデザインや独立したターンランプに初代ジムニー(LJ10)の面影を見ることができますね▲新型ジムニー。端が切れ上がったグリルデザインや独立したターンランプに初代ジムニー(LJ10)の面影を見ることができますね

この丸いライト! 個人的にはお洒落で可愛いと思います。ただ、見た目だけではありません! 林道やオフロードなどの道を走ったときに、障害物でライトが割れないように、少し奥まっているんです。
 

▲旧型ジムニー。フラッシュサーフェスされた旧型ジムニーの異形ヘッドライト。ターンランプも内蔵されゴテゴテ感が無くすっきりとした印象です▲旧型ジムニー。フラッシュサーフェスされた旧型ジムニーの異形ヘッドライト。ターンランプも内蔵されゴテゴテ感がなくすっきりとした印象です

続いて内装!

▲新型ジムニーのセンタースイッチ類は、1つひとつのボタンが大きくなっています。これは、林業など常にグローブを着用して作業をする人々のためにグローブをはめたままでも操作しやすいように工夫されているのです。初代ジムニーが発売された時の広告コピー『自然に挑戦する男のくるま』のキャッチフレーズは伊達ではないです▲新型ジムニーのセンタースイッチ類は、一つひとつのボタンが大きくなっています。これは、林業など常にグローブを着用して作業をする人々のために、グローブをはめたままでも操作しやすいように工夫されているのです。初代ジムニーが発売されたときの広告コピー『自然に挑戦する男のくるま』のキャッチフレーズは伊達ではないです

あらゆる環境で使われることを前提として作られているジムニー。使用頻度の高いスイッチ類もひと工夫されています。パワーウインドウのスイッチや、急な坂を降りるときに速度を制御するヒルディセントコントロールスイッチは、グローブをはめていても使いやすいようにボタンが大きくなっています。

また、坂道発進でブレーキペダルからアクセルペダルに踏み替えるときにONにしておくと、2秒ほど自動的にブレーキがかかるヒルホールドコントロールのスイッチもあります。

ちなみにオフローダーでもある矢田部としては、ヒルホールドコントロールが一番気になりました! 実際、オフロードを走っていると楽しすぎて調子に乗って急な坂を勢いよく駆け上がるのですが、途中で上りきれず止まってしまうこともしばしば……。

こうなるととっても焦ります! 「どうすればいいのよっ!!」と。ですが、この非常事態でもジムニーに付いているヒルホールドコントロールがあれば、心に余裕をもって再発進できそうです。最大2秒間一時的にブレーキが作動するので、ブレーキペダルからアクセスペダルに足を踏み替えるときに、車両が後退せずに発進できるのです。

一般的な道路であれば2秒で十分ですが、オフローダー矢田部としてはこのブレーキのかかる時間を設定できると、なお良し! とわがままをいいたくなりました(笑)。
 

▲ちなみに、これが旧型ジムニーのボタン式▲ちなみに、これが旧型ジムニーのボタン式。

大きなところでは2WDから4WDに切り替える副変速機の操作もボタン式から機械式レバーに変わりました。

旧型ジムニーのトランスファーのセレクトはボタンスイッチで行っていました。この先進的ガジェットは新型ジムニーではレバー式に戻されています。操作性や確実性はレバー式の方が良いというので、あえてアナログな方法に戻したのです。

仲間のオフローダーは、旧モデル型で使われていたボタンだと何回押しても4WDに入らなかったり、2WDに戻らなかったりとストレスを感じたことがあったそうです。セレクトがボタン式から機械式レバーになったのはとても助かると絶賛していました。

いやはや、実に知れば知るほど新型ジムニーの改良には度肝を抜かれます。
 

安全性について

▲カーセンサーの横山さんに新型ジムニーを試乗してもらいました。長方形で見切りのいいボディは車輛感覚がつかみやすく、アイポイントも高いのでなお良し!とのこと▲カーセンサーの横山さんに新型ジムニーを試乗してもらいました。長方形で見切りのいいボディは車両感覚がつかみやすく、アイポイントも高いのでなお良し! とのこと

今では新しく販売される車には必ず付いているといっていい安全運転サポート。新型ジムニーにももちろん設定があります。

ただし、押さえておきたいポイントも……新型ジムニーを購入したら、タイヤのサイズを大きくしてリフトアップしたいと思っている方もおられると思いますが、その前に私の話を聞いて頂きたい!

オフロードではタイヤの直径はとても重要で直径が大きいほど段差や岩などの障害物を乗り越えやすくなり、最低地上高が上がりスタックもしにくくなります。

しかし、もし「スズキ セーフティサポート」を装着したい場合、リフトアップしたりというカスタムは今しばらく待った方がいいかと思います。

理由は単眼カメラとレーザーレーダーの高さが変わり、タイヤの円周が長くなると実際の速度より遅く感知され、正しいデータが取れなくなり、デュアルセンサーブレーキサポートなどの安全システムが正常に働かない可能性が高いからです。

本格的にカスタムするなら現時点では旧型ジムニーがオススメです。

販売されてから20年経ち、たくさんのカスタムパーツが販売されており、カスタムショップさんが持つノウハウもかなり蓄積されているからです。カーセンサーで調べてみると玉数豊富で格安車両もありました。カスタムをするのなら四駆カスタム専門店で組んでもらいましょう。仕上がりも違いますし、アフターケアも万全ですよ。

▲旧モデルではボンネット上にあったインタークーラー冷却の為のエアインテーク。新型シムニーにはこのボコっとした出っ張りが付いていないんです▲旧モデルではボンネット上にあったインタークーラー冷却のためのエアインテーク。新型ジムニーにはこのボコッとした出っ張りが付いていないんです

矢田部が気になったのは、あまり安全とはあまり関係なさそうなボンネット上のボコッとしたエアインテークです。先代ジムニーにはあったのに新型にはないのはなぜ?

答えは、安全性に大きく関連していました。

旧モデルではエンジン中央にドンと鎮座していた、インタークーラーがなくなっていたのです。

新型を見てみるとエンジン前に移動していました。これは冷却効率を上げることが目的ではなく、ボンネット上のエアンテークをなくすためだったのです。

厳しくなっていく安全基準のひとつ、前方視界基準に恐らくエアインテークがひっかかり、それをクリアするためにほどこした処理だと思われます。4WDのように車高の高い車は性質上死角が広くなってしまうので、工夫を凝らさなければならないところなんです。
 

▲安全基準の1つである直前側方運転視界基準をクリアしているのかをチェックするための30cm×100cmのバルーン。2019年以降生産される車は運転席からボディに押し付けられた黄色いバルーンが見えなければ登録することができなくなります▲安全基準のひとつである直前側方運転視界基準をクリアしているのかをチェックするための、30cm×100cmのバルーン。2019年以降生産される車は、運転席からボディに押し付けられた黄色いバルーンが見えなければ、登録することができなくなります
▲新型ジムニーでは、エンジンの真ん中に鎮座していたインタークーラーがフロントの右側に移設されました。これによりボンネット上のエアインテークは不要となって、新型ジムニーからはインタークーラーがなくフラットになったのです▲新型ジムニーでは、エンジンの真ん中に鎮座していたインタークーラーがフロントの右側に移設されました。これによりボンネット上のエアインテークは不要となって、新型ジムニーからはインタークーラーがなくフラットになったのです

新型ジムニーと旧型ジムニー、なにがどう良くなったかとSNSや車が好きな人の間でよく話されています。そのほとんどがスタイリングだったり、新たに導入されたトラクションデバイスだったりします。どうカスタムするかというのもちらほら。

しかし、矢田部が一番進化していると感じたのは、安全性です。車重が40kg増加しているのも、ほとんどがドライバーや同乗者をアクシデントから守るための補強や安全装置に費やされています。新型ジムニーは、より人に優しく安全な車に進化しています。
 

信頼性の充実

ジムニーがリアルオフローダーだといわれているゆえんのひとつに、フレーム形式の車だということがあります。もし人里はなれた場所で障害物にぶつけてしまったり、まさかの転倒をしてしまいボディがボコボコにゆがんでしまっても、足回りとラダーフレームにダメージがなければ自走で帰ってこれます。

オフロードレースで派手に転んでしまったジムニーを見ましたが、大人5人が人力で起こすと、何事もなかったようにコースを後にしていきました。ラダーフレームは、初代ジムニーから採用され途切れることなく伝承されています。

▲ジャッキアップをして下回りをチェックしました。一見ラダーフレームに補強が入った以外は足回りもほぼほぼ旧モデルと変わらないように見えましたが、よく見ると細かい補強が追加されていたんです▲ジャッキアップをして下まわりをチェックしました。一見ラダーフレームに補強が入った以外は足回りもほぼほぼ旧モデルと変わらないように見えましたが、よく見ると細かい補強が追加されていました
▲運転席の下にがっちり溶接されているXメンバー。他に前後にクロスメンバーも追加され旧モデル比150%のねじれ剛性を実現しています▲運転席の下にがっちり溶接されているXメンバー。他に前後にクロスメンバーも追加され旧モデル比150%のねじれ剛性を実現しています

旧型でも十分丈夫だったラダーフレームに、新型ジムニーはさらに前後三つの大きな補強を追加しています。そのうちのひとつは、運転席真下の「X」の形の補強です。これにより、横や縦からの衝撃のみならず、大きくねじれるような斜めからの力にも強くなり、もしもの事故のときに運転席の保護にも効力を発揮します。そう! 新型ジムニー、めちゃくちゃ頑丈になってます!

▲車軸の継ぎ目には前後4ヶ所の補強が入れられていました。旧モデルでもよほどの事が無い限り破損する事はありませんが、更に信頼性を上げる為に追加した処置が感じとれます。写真では1点のみですが4ヵ所しっかり補強されていました▲車軸の継ぎ目には前後4カ所の補強が入れられていました。旧モデルでもよほどのことがない限り破損することはありませんが、さらに信頼性を上げるために追加した処置が感じとれます。写真では1点のみですが4ヵ所しっかり補強されていました
▲旧モデルにはなかったステアリングダンパー。実は、ホイールベースの短いジムニーは直進安定性があまり良くなかったのです▲旧モデルにはなかったステアリングダンパー。実は、ホイールベースの短いジムニーは直進安定性があまり良くなかったのです

旧型モデルには付いていなかったステアリングダンパーが装備されました! これにより、不整地でハンドルを取られたり、高速道路を走行中にハンドルがブルブルする現象を抑制できます。ということは、より正確な運転が可能となり、ドライバーの疲労軽減に繋がります。

実は、旧型ジムニーではハンドルがブルブルするという現象が起きていました。特に高速域での運転……。高速道路をジムニーで走ったとき、ハンドルが小刻みに震えるというか、ガクガク揺れるのです。その現象を改善するために、アフターマーケットのステアリングダンパーを後付けするという人が多かったのです。

ジムニーは世界149カ国で販売され、日本の道路事情と全く違う辺境の地に住む人の生活を支え、過酷な環境で働く人たちの道具となり、無事に帰ってこなければならない使命を持っています。その使命を全うするために、一見すると本当に必要なのか? と思えるほどの補強も追加されています。

■今回、新・旧ジムニーを比較しての矢田部のまとめ

最新のジムニーは最良のジムニーなのか? 私はYesです! みなさんはどうでしょうか?

新旧比較をしてきましたが……

・最近の車にはほとんどついている安全装備も選べるので運転が不慣れな方でも安心
・オフロードなどの過酷な道に挑戦してみたいという人にとってもボディサイズの頑丈さが増しているので扱いやすい
・カスタムしなくても、走破性がある方が良い


こんな方は新型がオススメです。

そして、

・カスタマイズを楽しみたい
・価格を抑えたい


こんな方には旧型がオススメです。

さあ、あなたの希望を叶えてくれるのはどちらのジムニーですか?
 

text/矢田部明子
photo/吉野健一

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支払総額あり×修復歴なし×3万㎞台まで

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