大学病院でシートを研究!? 次期アクセラを筆頭に、次世代の日本車への期待高まる!
2018/03/12
マツダは大学病院と手を組んでシートを開発中
マツダは、2017年8月に次世代テクノロジーの投入を予告した。このときに公開されたのが、次期アクセラのプロトタイプだ。
試乗したスクープ班が「シートのデキが良かった」と話していたので取材したところ、なんとマツダは大学病院まで使ってシートと人間の関係を詰めていることがわかった。
現在販売中の新世代商品群を売り出したときから、マツダはドラポジの重要性を説き、ペダルがドライバーの正面に配置できるように、前輪とフロントシートの位置関係を再構築した。
デミオでは、一般的なコンパクトカーにありがちな、オフセットしたペダルレイアウトを改善すべく、80mmのホイールベース延長幅を、居住性アップではなくドラポジ改善に費やしたくらいだ。
こうした真摯な姿勢で車とドライバーの関係を見つめているマツダが、シート本体の改善に取り組んでいても、何ら不思議ではない。何しろ長時間にわたって、運転を続けても疲れにくいドライビング環境を追求してきたのがマツダだからだ。
一連のスカイアクティブ技術で数々の驚きを放ってきたマツダ。次はシート本体の改善策を打ち出すとなれば、おのずと期待も高まるというものだ。
日産はNASAの技術をシートに採用
日産が、ティアナやエクストレイルで実用化している、スパイナルサポートシートは、大学との共同研究の成果から生み出された。慶應義塾大学との研究で、筋肉や背骨にかかる負担が最小になるよう編み出された形状に基づいている。
その姿勢は、NASAが計測した中立姿勢、つまり無重力状態の脱力した姿勢が発端になっているという。
スズキは、原点回帰のシートをスイフトに採用
現在、国内ではパンと呼ばれる板と、発泡ウレタンをバネに代用する手法が主流になりつつある。
しかし、スズキは「ドライビングの基本はシートにある」と原点に回帰。スイフトスポーツのシートを全バネ式に仕上げた。さらにサポート性を高めるためのパイプも追加されており、いっそう体をサポートする形状に仕立てられている。
また、シートの断面にもこだわって、運転中に姿勢が崩れないよう配慮している点も良心的だ。
なぜ、デンソーがシートを研究?
トヨタグループでもシートの研究が進められている。一見、シートとは無関係に見えるデンソーでも研究が行われているようだ。なぜデンソーが? と、疑問に感じる方も多いだろう。
そこで、イマドキのシートを思い浮かべてほしい。電動調整機能は序の口で、ヒーターやベンチレーション機能、果てはマッサージ機能まで内蔵されているシートもある。
こうした内蔵物が今後ますます普及していくことを考えると、シートも電装系とは切っても切れない関係になっていくだろう。
だからこそ、デンソーのようなシートとは無縁に思えるサプライヤーも着目して、研究開発に取り組んでいるわけだ。
責任の所在が不明だったエンジンマウント
もうひとつ近年になって改良が進んでいるのが、エンジンマウントだ。欧州車と日本車のエンジンルーム内を比べて、一番の違いが見られるのは、エンジンマウントである。
とくに、横置きエンジンでは、回転変動がエンジン全体を前後方向(前進、後退の方向)に震わせ、ハンドリングを邪魔するという現象が起こりやすい。
これほど大事な部分であるにも関わらず、これまで国内の自動車メーカーでは、どの部署がエンジンマウントを設計するのか、あやふやになっているケースが多かった。
同じメーカー内でも、車種によってはパワートレイン開発部門が担当したり、別の車種ではボディ設計部門が担当するといった具合に、責任の所在がハッキリしない部分だった。
これが最近になって、やっと明らかになりつつあるという。逆に言えば、長年にわたって曖昧な状態のまま開発、採用されてきた実態が驚きだが。
エンジンの揺れが止まれば走りが変わる。この考え方が徐々に広まりつつある。このエンジンマウント問題が解決して技術が飛躍的に向上すれば、今後の日本車の乗り味は大きく改善されるかもしれない。
ただし、コスト配分の問題もある。営業部門の発言力が強いこともあってか、ユーザーにわかりやすい装備はコストの振り分けにおける優先順位は高い。
しかし、シート骨格やエンジンマウント改善は効果が体感しにくく、結果的に後回し、もしくは却下されがち。ありがたみがアピールしにくい部分は、従来先送りされる傾向が強かった。今後の日本車がどう進むのか、気になるところだ。
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