▲ちょっと前までは「中心は140万円ぐらいで、一部に100万円以下の物件もある」みたいな状況だった旧型BMW Z4だが、気がついてみれば「むしろ100万円以下がメイン」という相場に変わっている ▲ちょっと前までは「中心は140万円ぐらいで、一部に100万円以下の物件もある」みたいな状況だった旧型BMW Z4だが、気がついてみれば「むしろ100万円以下がメイン」という相場に変わっている

格安ガイシャの仲間入りはしたが、まだまだ普通に現役

おっさんになると、昔のことを「つい最近のこと」と感じてしまう現象をジャネーの法則と呼ぶらしいことはカーセンサーnetで学んだが(詳しくは下記リンクをご参照いただきたい)、それにしても旧型BMW Z4の相場を久々に調べて驚いた。新車時418万~610万円だったこの車の相場が140万~150万円ぐらいになったのは、割と最近だったと記憶しているのだが、時代はその後筆者が呆けている間にズンズン進んだ模様。今や旧型Z4は「車両価格100万円以下」が当たり前になっているではないか。

3月7日現在の平均価格は100.1万円だが、実際の市場には「06年式BMW Z4 2.2i/走行5.3万km/右H/AT/車両価格89.0万円」みたいな物件が多数流通している。ちなみに車両価格100万円以下となる旧型BMW Z4の流通量は同日現在、全国で99台。こうなると旧型Z4はもう「一大格安商品群」になったと言えるだろう。

しかし格安商品群とはいえ、旧型Z4のモロモロは依然「現役バリバリ」だと筆者は考える。

そりゃもちろん09年4月からの現行Z4とガチで能力比較のようなことを行えば、すべての点で旧型が負けるのは明白というか当然だ。だがもしも旧型Z4だけを単体として評価するなら、それは依然として「シュッとしたビジュアルの、よく走ってよく曲がる、気持ちの良いオープン2シーター」なのだ。

いやむしろ、現行世代の2L版がいわゆる直噴ターボの4気筒エンジンであるのに対し、旧型の2.2L/2.5L/3Lは非直噴の直列6気筒DOHCであるゆえ、「旧型の方がステキじゃん、逆に!」と見ることさえできる。まぁ車の良し悪しというのはエンジンだけで決まるものでもないので、それでも総合力は当然現行が上と見るべきだが、「そういう見方だってある」という話である。

▲それまで販売されていたBMW Z3の後継車種として03年1月に登場した旧型BMW Z4。Z3のクラシカルな雰囲気から一転してモダン系のデザインに。ルーフは手動/電動のソフトトップを採用した ▲それまで販売されていたBMW Z3の後継車種として03年1月に登場した旧型BMW Z4。Z3のクラシカルな雰囲気から一転してモダン系のデザインに。ルーフは手動/電動のソフトトップを採用した
▲2.2L/2.5L/3Lの3種類が用意されたエンジンはすべてBMW伝統の直列6気筒DOHC。現行Z4の2Lグレードは4気筒の直噴ターボエンジンに変更されたため、こちらのエンジンを懐かしむ声もある ▲2.2L/2.5L/3Lの3種類が用意されたエンジンはすべてBMW伝統の直列6気筒DOHC。現行Z4の2Lグレードは4気筒の直噴ターボエンジンに変更されたため、こちらのエンジンを懐かしむ声もある

何かと手間がかかることもある5万~7万kmぐらいという走行距離

ということで、型遅れであることが気にならず、なおかつ電動格納式ルーフではなくソフトトップでも問題ないと思う人は、ぜひぜひ旧型BMW Z4の100万円以下案件にご注目ください……とスピーディに話を終わらせたいところだが、実際はそうもいかない。

U-100万円の旧型Z4には、どうしたって「走行距離問題」がつきまとうからだ。

下記の物件リンクを踏んでいただければおわかりになるとおり、この価格帯の旧型Z4というのは走行5万km台~7万km台あたりのものが比較的多い。なかには「2.7万km」とか、逆に「11.4万km」みたいな物件もあるが、ボリュームゾーンはおおむね5万km台~7万km台だ。

……実は中古車というのは、このあたりの走行距離が一番やっかいといえばやっかいなのだ。

車というものが数万点の部品の集合体である以上、新車時からずっと走らせていれば、いつかは必ず壊れる。壊れるというか、いろいろな部品が交換すべきタイミングを迎える。これはBMW車だろうがトヨタ車だろうがロシアの車だろうが同じ理屈だ。で、いろいろな部品がいろいろなタイミングで要交換の時期を迎えるわけだが、足回りなどの割と重要な部分がことごとく「最初の要交換タイミング」を迎えるのが、一般論としてだいたいこの5万km台~7万km台なのである。

つまり、ここで替えるべきモノをちゃんと替えてやらないとエライことになるかも……ということであり、その交換にはけっこうな金がかかる、ということでもある。それゆえ、この問題を考えずしてU-100万円系旧型BMW Z4のモロモロを語るのは、筆者としては「机上の空論である!」と断じたい。

▲5万km台~7万km台になるといきなり走行不能になるほどどこかが壊れる……というわけでは決してないのだが、各所のブッシュ(ゴム製緩衝材)やショックアブソーバーなどが、厳密に言えば寿命を迎え始めるのが、ちょうどこの5万km台~7万km台ぐらいという走行距離である ▲5万km台~7万km台になるといきなり走行不能になるほどどこかが壊れる……というわけでは決してないのだが、各所のブッシュ(ゴム製緩衝材)やショックアブソーバーなどが、厳密に言えば寿命を迎え始めるのが、ちょうどこの5万km台~7万km台ぐらいという走行距離である

前オーナーまたは販売店がビシッと直した1台を探す!

さて、解決策はどうしたものか。……考えられるのは「奇跡の1台を探す」という作戦であろう。

走行5万km台~7万km台ぐらいの中古車というのは、旧型Z4に限らず「このタイミングで替えるべきパーツは全部替えてますよ!」という物件は正直少ない。前オーナーも交換作業(とそのコスト)を嫌って売却したわけであり、それを仕入れた販売店側も、まだまだ使えるといえばぜんぜん使えるショックアブソーバーなどを、わざわざ新品に交換して展示するお店は少ない。

というか5万~7万kmぐらいというのはホント微妙な時期で、「そりゃ替えた方がベターなのは当然だけど、まだフツーに使えるといえばぜんぜん使えるし」という場合が多いのだ。それゆえ、この問題でもしも中古車販売店を過剰に責める人がいるとしたら、それはそれで間違っている。

で、走行5万km台~7万km台ぐらいの中古車だが、その全部が全部、微妙な劣化具合の主要パーツを付けたまま店頭に並んでいるわけではない。

星の数ほどいる「前オーナー」のなかには、メンテナンスにやたら熱心というか神経質な人もいる。もしかしたらそういった人が、6万kmぐらいの時点でビシッと主要パーツを自腹で交換し、しかし何らかの事情で7万kmぐらいのときに売却した……という旧型BMW Z4も世の中にはあるはず。

また先ほど、販売店側も「まだ使えるといえば使える部品をわざわざ新品に替えたりはしない」という意味のことを申し上げたが、これまた世の中にはメンテナンスに熱心というか神経質なお店さんもあるもので、「このショックアブソーバー、まだ使えるっちゃ使えるんだけど、気持ち悪いから新品に替えちゃおうか!」みたいな販売店も一定の割合で存在する。

我々はそのような前オーナーや販売店が生み出した「奇跡の1台」を、もしくは「奇跡の1台に比較的近い1台」を、整備記録簿を頼りに探せばいいのだ。これが、おそらくはU-100万円系旧型BMW Z4購入における必勝法である。

▲写真は旧型BMW Z4前期モデルのコックピット。「絶対確実」と断言できる判別法ではないが、内装に手荒く扱われた形跡がない中古車は、前オーナーに大切にされていた可能性が高いという「傾向」はある ▲写真は旧型BMW Z4前期モデルのコックピット。「絶対確実」と断言できる判別法ではないが、内装に手荒く扱われた形跡がない中古車は、前オーナーに大切にされていた可能性が高いという「傾向」はある

「奇跡の1台」を探す旅路は、一般的には決してラクなものではない。しかし幸いなことに旧型BMW Z4のU-100万円物件は、前述のとおり3月7日時点で99台も流通している。本稿公開時にその数字がどのくらい変動しているかはわからないが、そう大きな変動はないと見た。それぐらいの数があればきっと奇跡の1台か、それに近い1台は見つかるだろうと、筆者はその経験から断言したいのだ。

ご興味がある各位の健闘を祈ります。

text/伊達軍曹
photo/BMW