▲「中途半端」と見る向きもあるが、逆に言えば「ちょうどいい」とも考えられる、3LのV6ツインターボを搭載するC450 AMG 4マチック/C43 4マチック。ホント、何かとちょうどいい車です ▲「中途半端」と見る向きもあるが、逆に言えば「ちょうどいい」とも考えられる、3LのV6ツインターボを搭載するC450 AMG 4マチック/C43 4マチック。ホント、何かとちょうどいい車です

現行AMG C63は確かに素晴らしい……が、速すぎる!

過日の当欄にて筆者は「男は黙って大排気量自然吸気!」というような意味合いで、排気量6.2Lの強烈な自然吸気エンジンを積む旧型C63 AMG エディション507を推奨する意見を述べた。それはそれで嘘偽りなき本心なわけだが、その後冷静に考えると、やはり年額11万1000円にのぼる自動車税はあまりにもあんまりなのではないかとも思うようになった。

となると「強烈なパフォーマンスを発揮する最近のメルセデス Cクラス」のなかでのオススメは、普通に考えて現行型のメルセデスAMG C63 ということになろう。これであれば、V8DOHCの超強烈なエンジンではあるものの、近年のトレンドにのっとって4L+ツインターボにダウンサイジングされているため、自動車税は年額6万6500円で済む。節約精神の大勝利である。

しかし、これも同様にちょっとアレなのではないか……とも思うのだ。

や、もちろん現行C63が素晴らしい超絶ハイパフォーマンスカーであることについて疑いの余地はない。しかし問題は、「その超絶パフォーマンスをどこで発揮させるのよ?」ということだ。

考えてもみてほしい。現行C63が搭載するツインターボ付きV8エンジンの最高出力は476psである。そして0-100km/h加速データは正式には発表されていないようだが、さらなる高性能版である「C63 S クーペ」の0-100km/h加速公表値が3.9秒であることから考えると、おおむね4.1秒とかそのぐらいだろうか。いずれにせよ、鬼神のごときパワーとスピードである。

……そんなモノをですね、高速道路でも表向き100km/hしか出せない日本の道路で使ってもですね、実力の10分の1とか100分の1とかしか出せないためストレスばかりが溜まるのではないかと、不肖筆者は思うわけですよ。だったらば、もうちょい抑えめなパフォーマンスのモデルに乗った方が、結果としてはより楽しめるのではないか……と思うわけだ。

▲写真はメルセデスAMGの現行C63。4Lにダウンサイジングされたとはいえ、ツインターボによるパワーとトルクはほとんど鬼。素晴らしい車だが、日本ではアクセルを深く踏める場所がない? ▲写真はメルセデスAMGの現行C63。4Lにダウンサイジングされたとはいえ、ツインターボによるパワーとトルクはほとんど鬼。素晴らしい車だが、日本ではアクセルを深く踏める場所がない?

C450/C43なら日本でもそこそこ踏めます

無論この考え方には異論反論もあるだろう。だがもしも貴方が「ま、そう言われてみりゃそうだよね」と思うのであれば、ぜひともオススメしたいのが、同じ現行AMG Cクラスのなかでも数字がちょっと小さい方、すなわちメルセデスAMG C43 4マチックないしはメルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチックである。

詳しくご存じの人も多いと思うが、このモデルは15年9月に「メルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチック」なる車名で販売開始された、3L V6ツインターボを搭載するAMGスポーツ。「AMGスポーツ」というのは、「AMGのスポーツパッケージを装着しただけの通常モデル」と「真のAMG製高性能モデル」の中間的な存在として登場した一群だ。しかしその後、「でも結局コレってAMGだよね」ということでメーカー内での枠組みが変更され、16年4月からは晴れて「メルセデスAMG C43 4マチック」という真性AMGファミリーの一員になったのだ。ブランド名と車名にプチ変更はあったものの、両者の中身は同一である。

▲こちらが、15年9月に「メルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチック」として登場し、その後16年4月に「メルセデスAMG C43 4マチック」へと改名されたモデル。わかりやすい特徴は「ダイヤモンドグリル」という名称のフロントグリルだ ▲こちらが、15年9月に「メルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチック」として登場し、その後16年4月に「メルセデスAMG C43 4マチック」へと改名されたモデル。わかりやすい特徴は「ダイヤモンドグリル」という名称のフロントグリルだ

で、このメルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチック/メルセデスAMG C43 4マチックが今、実はいいことづくめな車じゃないかと思うのだ。

まず、その高性能の「高性能ぶり」が非常に妥当であるということ。

最高出力476psの4L V8ツインターボを積む現行C63だと、日本では免許証が何枚あっても正直足りない気がしないでもない。しかし最高出力367psの3L V6ツインターボとなるC450/C43であれば、それなりに「踏む」ことができる。もちろん、それでもアッという間に免許証の効力を失わせるだけの性能は持ち合わせているため、「日本の公道ではさほど踏めない」という点でC63と似たようなものとも言える。しかしそれでも、C450/C43の方が「より楽しめる余地はある」ということだ。

 

▲第三世代の直噴システム「BlueDIRECTテクノロジー」+ツインターボとなるC450/C43の3L V6エンジン。アルミ製クランクケースとシリンダーヘッドの採用で軽量化にも成功している ▲第三世代の直噴システム「BlueDIRECTテクノロジー」+ツインターボとなるC450/C43の3L V6エンジン。アルミ製クランクケースとシリンダーヘッドの採用で軽量化にも成功している

毎日乗るにはちょうどいい性能、そして実にお得な中古車相場

また乗り心地も排気音も、そしてインテリアの造形も、C450/C43は十分以上にAMGしてるというか、有り体に言えば「スポーティ」であり「武闘派」である。しかしそれらすべてがC63と比べてちょっとずつ抑えめになっているのが、普段づかいを重視するうえでは逆に好ましいわけだ。もちろんそのあたりについて「物足りない」と感じる人もいるはずだが、そういった人は素直に現行C63を選べばいいだけの話だ。

そしてその中古車プライスも今、有り体に言えばかなりお買い得である。

メルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチックの新車時価格は863万円だったわけだが、中古車相場は今、おおむね550万~730万円といったところ。ボリュームゾーンは600万~650万円で、その大半が走行数千kmからせいぜい1万km台で、ほとんどの個体に新車装着時25万7000円だった「エクスクルーシブパッケージ」があらかじめ装着されている。ちなみにエクスクルーシブパッケージというのはBurmesterサラウンドサウンドシステムとエアバランスパッケージ(空気清浄機能、パフュームアトマイザー付き)、盗難防止警報システムなどがセットになったものだ。

「武闘派の頂点である現行C63やC63 Sじゃないとどうしても物足りない!」という人は別として、そうではない「程よく超絶性能で上質な車に毎日乗りたい」という人にとっては今、メルセデスAMG C43 4マチックないしはメルセデス・ベンツ C450 AMG 4マチックの中古車は、最高にコスパ良好な選択肢の一つではないかと思うのだが、いかがだろうか。

▲武闘派丸出し(?)なC63と比べると、比較的落ち着いた印象となるC450/C43のインテリア。写真の赤いシートは「クランベリーレッド」だが、市場には「ブラック」の方が多い ▲武闘派丸出し(?)なC63と比べると、比較的落ち着いた印象となるC450/C43のインテリア。写真の赤いシートは「クランベリーレッド」だが、市場には「ブラック」の方が多い
▲適度な高性能(といっても冷静に考えればもの凄い性能だが)を、日頃から存分に味わうことができるこの1台。「特別な日」ではなく「毎日」を優先したい人はぜひ注目を! ▲適度な高性能(といっても冷静に考えればもの凄い性能だが)を、日頃から存分に味わうことができるこの1台。「特別な日」ではなく「毎日」を優先したい人はぜひ注目を!
text/伊達軍曹
photo/ダイムラー