▲この「絶世の美女」というか天使が、いよいよ地上に降りてきましたよ! ▲この「絶世の美女」というか天使が、いよいよ地上に降りてきましたよ!

200万円代半ば以上の水準で長らく足踏みを続けていたが

不幸にしてというのか幸いにしてというべきかはさておき、筆者は俗にいう「絶世の美女」的な女性とはお付き合いをしたことがない。例えば北川景子さんとか。それゆえ正味のところは不明なのだが、もしも絶世の美女とお付き合いをしたならば、彼女にちょっとした欠点があったとしてもすべて許せてしまう気がする。

さすがに人格全体がヘドロのようだと(要するに性格が最悪だと)いかな美女とはいえ何かと無理だが、例えば料理がド下手であるとか実は足がクサイとか、そんな程度の欠点であれば「いいよいいよ! そんなの気にしないで!」と心の底から言うことだろう。そしてそんな彼女が、こんなド庶民たるわたくしのところへお嫁に来てくれるとしたら、もはや死んでも本望である。結婚早々死ぬのもどうかと思うが。

なぜこんなしょうもないことをいきなり書いているかといえば、つい先ほど久しぶりに最終型アルファロメオ スパイダーの中古車相場をチェックしたからである。なんと、気がついてみればおおむね200万円以下になっているではないか。……これは個人的な重大ニュースである。

▲同時期にデビューした「アルファ ブレラ」のオープン版。ブレラのデザインはジウジアーロが担当したが、そのスパイダー化はピニンファリーナが行った ▲同時期にデビューした「アルファ ブレラ」のオープン版。ブレラのデザインはジウジアーロが担当したが、そのスパイダー化はピニンファリーナが行った

ご承知のとおり最終型のアルファ スパイダーすなわち通称939型とは、06年10月から11年途中まで販売されたイタリー製のオープン2シーター。パワートレインは同時期のアルファロメオ ブレラと共通で、2.2L直4/FFの2.2 JTSには6MTとセレスピードが組み合わされ、3.2L V6/4WDの 3.2 JTS Q4には6MTと6速ATのQトロニックが用意されていた。これを基本とする様々なグレードがあったが、その新車時価格はおおむね450万~603万円であった。

そしてそのデザインは、内外装とも「美の極致」といえるものだった。これぞオープンカー界の北川景子というか何というか(※北川景子さんが気に入らない場合は、その部分にあなたが好きな美女の名前を勝手に代入してください)、とにかく素晴らしすぎる何かであったのだ。

▲外観デザインだけでなく内装デザインもひたすら美しいアルファ スパイダー。写真は08年モデル ▲外観デザインだけでなく内装デザインもひたすら美しいアルファ スパイダー。写真は08年モデル

当然中古車ハンターである筆者は、その中古車相場下落を待った。まぁあまりにも下落しすぎるとイメージが悪くなるので、200万円ちょいとか200万円弱とか、そのあたりまで程良く下がることを期待した。

が、939型はなかなか下がらなかった。具体的にはおおむね200万円台半ばから300万円台半ば付近で長らく足踏みをしていたように思う。

筆者もド庶民とはいえ別に乞食ではないので、200万円台半ばとか300万円台半ばぐらいのお金が払えないわけではない。その気になれば、やぶさかではない。しかし939型アルファロメオ スパイダーに対してその値段を払うには若干の心理的抵抗があったことは確かだ。

なぜならば、939には少々の欠点もあるからだ。

エンジンに少々言いたいことはあるが、この価格ならノープロブレム!

いや欠点と言っても全然大したものではなく、冒頭の例で言う「(美女だけど)料理がド下手」とか「(美女なのに)足がクサイ」とか、せいぜいそれぐらいのレベルだ。いや、実際にはもっと軽微だろう。

具体的には「決して最高のエンジンフィールではない」ということだ。

939型アルファロメオ スパイダーが開発されたのはアルファロメオが米国GMと提携関係にあった時期だったため、シリンダーブロック(エンジンの下半分)にはGM製のそれが流用された。そしてアルファロメオが開発したとされる「プレミアム・シャーシ」も、アルファらしからぬ重めのシャーシであった。おそらくだが、何らかのGMの影響があったのだろう。

それゆえ、決して悪いエンジンではなく、どちらかといえば他社の凡庸なエンジンと比べればなかなかの快感エンジンなのだが、往年の純血V6やフィアット系ツインスパークと比べると、どうしても「…………」と思ってしまうことは否めなかったのだ。

▲ヘッド部分はアルファロメオのオリジナルだが、シリンダーブロック(エンジンの下半分)はGM製。それもあってか、回転フィールには若干アルファらしからぬ感触も。が、同世代の他社製エンジンと比べれば十分以上にナイスなフィーリングのエンジンであるとはいえる ▲ヘッド部分はアルファロメオのオリジナルだが、シリンダーブロック(エンジンの下半分)はGM製。それもあってか、回転フィールには若干アルファらしからぬ感触も。が、同世代の他社製エンジンと比べれば十分以上にナイスなフィーリングのエンジンであるとはいえる

しかし中古車相場がおおむね200万円以下になったならば、つまり筆者でも十分狙える価格水準になったならば、そんな些細なことはまったく気にならなくなる。「あなた様のような絶世の美女がこんなド庶民のとこへお嫁に来てくださるのであれば、多少のことで文句など言ってはバチが当たります! 来てくださるだけで大満足、大勝利です! 土下座!!!」といった感じであろうか。

そしてもちろん、939型スパイダーはそれなりに故障もするだろう。いや、この年代のイタリア車というのはネットでまことしやかに言われているように「しょっちゅう壊れまくる」ということは基本的にはないのだが、それでも、国産実用車と比べればくだらないマイナートラブルは確実に多いかもしれない。

しかしまぁいいじゃないか。こんな絶世の美女が(そして気立ても決して悪くない美女が)、ド庶民であるわたくしと付き合ってもいいと、まかり間違えば結婚してもいいと、そう言ってくださるのだ。多少のマイナートラブルがどうのこうのと言ってる場合ではない。すべてをありがたく受け入れ、そして幸せで明るいアモーレな毎日を送るべきなのだ。

……と、以上の妄言に対して「なるほど、そうかもしれないな」と感じてくださった奇特な人には、939型アルファロメオ スパイダーの中古車情報チェックを今、強く強くオススメしたい次第なのであります。敬礼。

▲とにかくこのたたずまいとオーラを100万円台で入手可能というのは、イタリア車ファンならびにオープンカー愛好家にとっては朗報。ぜひ注目を! ▲とにかくこのたたずまいとオーラを100万円台で入手可能というのは、イタリア車ファンならびにオープンカー愛好家にとっては朗報。ぜひ注目を!

text/伊達軍曹
photo/フィアット・クライスラー・オートモービルズ