▲ワンコのような、あるいはおだんご(?)のようなフォルムの個性派輸入クロスオーバー、プジョー 3008前期モデル。コレが今、かなりお買い得な相場になっています! ▲ワンコのような、あるいはおだんご(?)のようなフォルムの個性派輸入クロスオーバー、プジョー 3008前期モデル。コレが今、かなりお買い得な相場になっています!

今、モテ車の代表格は「クロスオーバー」。しかしその価格は……

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、副菜には格安D.I.Y.で毎日地味に作っているナスのぬか漬けを中心に据えると心に決めながら、ニッポンの中流ド真ん中を生きている。

そんな自分であっても「いい年こいた男がぬか漬け作りなどに精を出しているからモテないのだ。もっと今風でおしゃれなライフスタイルを取り入れた方が良いのではないか?」と自問することはある。……ライフワークであるぬか漬け作りをやめる気はないので、となると自家用車を今風のものに替えるほかないのかもしれない。

で、近年、今風な車と評価されているのは「さほど大柄ではないクロスオーバー」なのではないかと思う。具体的にはアウディ Q3や現行ジープ レネゲード、あるいはマツダ CX-3などが該当する、活況を呈しているあのカテゴリーだ。アクティブでありながら比較的謙虚な、つまりは「健康的な知性」のイメージがそこにはある。いかにもモテそうではないか。

▲こちらは某週刊誌にて自動車評論家の清水草一氏が行った「モテ車テスト」で女子大生やOLさんたちから圧倒的な支持を得た現行ジープ レネゲード ▲こちらは某週刊誌にて自動車評論家の清水草一氏が行った「モテ車テスト」で女子大生やOLさんたちから圧倒的な支持を得た現行ジープ レネゲード

だが問題は、それら今風クロスオーバーは「高い」ということだ。

一例だがアウディ Q3を新車で買うとなるとベースグレードでも車両本体価格379万円で、中古車もボリュームゾーンは290万~380万円付近。ならば国産のマツダ CX-3にするかといっても、マイナーチェンジで足回りがかなり良くなった2016年モデル新車は一番人気のXDツーリング(2WD/6AT)が車両本体259万2000円で、15年式中古車でも中心は車両210万~280万円。

……こちとら自慢じゃないがカネはないため、できれば100万円台半ばぐらいの予算感でモテそうなクロスオーバーを探したいのだが、現実は厳しいようだ。モテへの道はあきらめ、このまま毎晩ナスのぬか漬けを仕込むしかないのか……と絶望していたとき、一つの選択肢に思い至った。

「あ、そういえばプジョー 3008があるじゃないか」と。

プジョー 3008ならかなり好条件な中古車でも100万円台

プジョー 3008とはご存じのとおり10年6月に登場した、プジョーの比較的コンパクトなクロスオーバー。ベースは5ドアハッチバックの「308」で、本国ではディーゼルを含む様々なエンジンが用意されているが、日本仕様は1.6Lの直4直噴ターボのみ。14年3月に外観を中心とするマイナーチェンジが行われ、そして16年3月にはエンジンとトランスミッションを刷新するマイナーチェンジを実施。これによりエンジンは、排気量は1.6Lと変わらないものの最高出力が+9psの165psとなり、トランスミッションも高効率な「EAT6」と呼ばれるタイプに変更されている。

しかし、わたくしが思い至った選択肢はそういったマイナーチェンジ後の3008ではなく、10年6月から14年2月までの前期モデルだ。それが今、車両価格おおむね130万から180万円ほどで走行4万km未満の好条件車を狙える状況になっているのである。

ちなみに、こういったクロスオーバーまたはSUVの中古車相場が安くなるときというのは「走行距離などの条件が思いっきり悪化したから」というのがたいていの場合だが、プジョー 3008前期型は好条件なまま。輸入クロスオーバー/SUVとしては稀有なパターンだ。しかも「使い勝手や走りがイマイチだから」という理由でもない。そして筆者の独自取材によれば「やたらと故障する弱点だらけの車」というわけでも決してない。

▲おだんごのようなフォルムからは想像できないほど安定感あふれる走りを披露するプジョー 3008 ▲おだんごのようなフォルムからは想像できないほど安定感あふれる走りを披露するプジョー 3008
▲グレードにより細かな差異はあるが、3008のインテリアは基本的にはこのような感じの上質感たっぷりなテイストでまとめられている ▲グレードにより細かな差異はあるが、3008のインテリアは基本的にはこのような感じの上質感たっぷりなテイストでまとめられている
▲リアのハッチゲートは上下2分割で開き、荷室床板は3段階に調整が可能 ▲リアのハッチゲートは上下2分割で開き、荷室床板は3段階に調整が可能

この犬系(?)デザインにホレられるかどうかが鍵

ではなぜ「輸入クロスオーバー」という人気カテゴリーの車なのに妙に安いかというと、根本的な理由はなんとも言えないビジュアルだろう。

14年3月以降のモデルはシュッとした感じでイカしているが、前期モデルは「犬系」というのか「おだんごライク」といえば良いのかわからないが、なんとも形容しかねる微妙な造形だ。そして微妙さゆえにある種の人はこれを好まず、その結果として「好条件なのに妙に安い」という数々の中古車を生んでいるのである。

▲こちらが14年2月までのプジョー 3008前期モデル ▲こちらが14年2月までのプジョー 3008前期モデル
▲こちらは14年3月以降。シュッとした「普通めのクロスオーバー」に変わっている ▲こちらは14年3月以降。シュッとした「普通めのクロスオーバー」に変わっている

つまり問題は、ここ(前期3008のデザイン)をどう評価するか? ということに尽きるだろう。

わかりやすくシュッとしてる、人間でいうところの「身長183cmの細マッチョ(そしてイケメン)」みたいなタイプのクロスオーバーをお望みの人は、正直申し上げてプジョー 3008前期モデルは避けた方が無難だ。

しかし世の中の全員が全員、「わかりやすいイケメン」を好むわけではない。シュッとしてる犬よりもフレンチブルドッグを愛する人がいるように、ジャニーズ事務所の美少年たちではなく俳優の遠藤憲一(54歳)に夢中な女性がいるように、人の好みというのは本当に様々なのだ。

そしてもしもあなたが「プジョー 3008の前期モデルって、なんかステキじゃん」と思ったならば、この車は今、とてつもなくお買い得である。……モテるかどうかの責任は取れませんが!

text/伊達軍曹
photo/プジョー シトロエン