【伊達セレクション】異端の中古車評論家・伊達軍曹、ジャガーFタイプから学ぶ
カテゴリー: クルマ
タグ: EDGEが効いている / EDGE SELECTION
2013/12/05
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「ジャガーFタイプはオススメです!」という机上の空論
「机上の空論」という言葉がある。デジタル大辞泉によれば、「頭の中だけで考え出した、実際には役に立たない理論や考え」ということだ。で、輸入車メディアでは昔からこの「机上の空論」が幅を利かせているような気がしてならない。
例えばジャガーの新型モデル「Fタイプ」だ。筆者はつい先ほどまでジャガーFタイプのベースグレードに試乗していた。素晴らしい車だった。ひたすら優雅にして美しく、しかしほんの少々「じゃ、飛ばそうかな」と思えば、いきなり宇宙レベルのスポーツカーに豹変する。即金でポンと買える人は当然として、残価設定ローンを組めば何とかなる人で、車好きを自認する人であれば今すぐ買ったほうがいい! オススメだ! ……というのが、典型的な机上の空論である。正しい意見であると自負はしているが、まったく意味がない。
どういうことか、筆者個人の例で説明しよう。まず筆者は「残価設定ローンを組めば何とかなる人」にあたる。よくわからないが、頑張ればたぶん払える。
がしかし、Fタイプを買ってどうするのだ? 今現在借りている空き地のような駐車場にFタイプ様を置くのか? で、空き地にFタイプ様を置いた後、しょぼい賃貸住宅に帰っていくのか? 着る物はどうする? まさか今のようにジャージ姿でFタイプを運転するわけにもいくまい。Fタイプに乗って出かけていく場所だって、それなりの場所であることが求められる。いやFタイプで牛丼屋に行くのも日本国民としての自由だが、激しく似合わないのは間違いない。
……これらを元にざっくり計算すると、筆者のような中流ど真ん中な人間の場合、Fタイプのベースグレードを買うには車両価格950万円+諸費用のほかに、ざっと1億円ぐらいの金融資産が必要であることが判明した。……無理である。いくら「Fタイプは素晴らしい車です!」と言われ、実際そのとおりだったとしても、筆者個人には何の関係もない報道なのだ。机上の空論なのだ。
目指すべきは「身の丈に応じたカッコ良さ」じゃないのか?
「お前など相手にしていない。我々はFタイプを買える層に対してのみ報道しているのだ」と、メディアは言うかもしれない。そうなのかもしれない。しかし前述のような「Fタイプが似合うライフスタイル」を実践できる者が、貴メディア読者のなかで何パーセントいるか、きちんと把握しているのだろうか? ていうか、それを書いている記者自身がそもそも「Fタイプが似合うライフスタイル」を持っているのか? ……はなはだ疑問である。
その点、輸入中古車はいい。「身の丈に合ったカッコ良さ、自分のライフスタイルに見合ったステキさ」に満ちた世界が、眼前に広がっている。
もちろん、この「身の丈に合った」という言葉は「正しい上昇志向や努力の放棄」というマイナス行動とセットになってしまうことも多いので、取扱い注意な劇薬ではある。しかしとにかく、無理をして、いらぬ見栄を張って、似合わぬ高級車を買って汲々とするよりは、リラックスした心もちで中古の輸入スポーツを大らかに楽しむほうがナンボも高級なライフであると筆者は確信している。
ジャガーFタイプは確かに素晴らしかった。本当に、素晴らしかった。無理なく買える人にはぜひ買っていただきたい世界の逸品だ。しかし筆者は、200万円ぐらいの、たとえば現行アルファスパイダーなどを、どこかの街道沿いのショップで買うだろう。
それでいいのだ。
ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
ジャガーFタイプと(ある意味)同等に優雅な200万円級オープンスポーツ!
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