M・ベンツ 500E|伊達セレクション
写真上は91年に登場したオリジナルのメルセデス・ベンツ 500E。足回りなどのチューニングやテストにポルシェ社が関与し、初期モデルに関しては生産もポルシェの工場で行われた。写真下は95年のファイナル限定モデル、メルセデス・ベンツ E500リミテッド。正規輸入はされなかったが、並行輸入された個体はマニアの間で高い人気を誇った。
M・ベンツ E500リミテッド|伊達セレクション
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「いつかは500E」の大いなる問題点

子供の頃は当然として、人は20代か30代あたりまで「自分の人生はいつか、100%の確率で終わる」という事実をなかなか実感はできないものだ。しかし筆者のような四十路あたりになると、人間は「人生の有限性」というものを否応なしに実感しはじめる。

人の生が有限であるように、「車の生」も無限ではない。いつか必ず鉄くずになる。いや、ごく一部の名車は博物館やコレクターなどの手で半永久的に保存されるのだろうが、それはあまりにもレアなケースだ。

つまり人と車の生とは“ダブルで有限”なわけで、いつかは……と思っているうちにどちらかが終わってしまい、「一度は乗ろうと思ってたあの車、結局乗れませんでしたわ、たはは……」と空しく笑うことにもなりかねない。

例えばW124型のメルセデス・ベンツ 500E/E500だ。

多くの人がご承知のとおり500Eとは、当時のEクラスに強烈な5L V8DOHCエンジンを搭載し、足回りをはじめとする各部を特別あつらえにした伝説のモンスターセダン。そのチューニングと製造工程においてメルセデスとポルシェとの深いつながりがあった事実も、500Eの神話性を高めている。1991年から1994年まで正規輸入され、当時の新車価格は1550万円だった。

まだ大丈夫だが、タイミリミットは遠い未来ではない

筆者は幸いにして90年代から00年代にかけて、非常にコンディションの良い500E多数に試乗する機会があった。やや大げさに言えば「1m動かしただけでもわかる!」という感じの超オーバークオリティ(過剰品質)っぷりには大いに感銘を受け、「いつかはコレを手にしたいものだ」と強く思ったものだ。

しかし今、伝説の500Eはマーケットから姿を消しつつある。いや「姿を消しつつある」というにはちょっと早いだろうが、その傾向は見て取れる。現存する500Eの一部は確実に、ミュージアムやコレクターの手で半永久的に保存されることだろう。また、下手をすれば新車時以上のプレミアム価格になるだろうミントコレクション的な中古車も、今後長らく売買され続けるはずだ。しかし、そうではない大多数の500Eは、それがいつかはわからないが、この地上から消えていく。わたしやあなたと同じように。

「毎日やってる閉店セール」のような煽り方をするつもりは一切ないが、「いつかは500E」と思っていた人の“いつか”は、そろそろタイムリミットも近いのかなと、経験的に強く思う次第だ。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
どちらかがなくなってしまう前に、伝説の500Eに乗る!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE