VW ゴルフGTI|伊達セレクション
写真上は向かって右が、日本へは正規輸入されなかった初代VW ゴルフGTI(※GTIではないグレードはヤナセにより正規輸入されました)。左が旧型にあたる6代目ゴルフの、こちらもGTI。代を重ねるたびに大きく・豪華になっていった歴代ゴルフだが、「上質なる中庸」という美点は初代から最新型まで変わっていない。特に直近の6代目はまだまだバリバリの現役を張れる実力あり。写真下はこのたび登場した最新型。
新型 VW ゴルフ|伊達セレクション
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VW ゴルフとは「妻」のようなものである?

過日、7代目のVW ゴルフが日本でも発表され、多数のメディアやSNS住民などの注目を集めた。しかしそんな大注目のゴルフも、車雑誌の巻頭企画で「ゴルフ大特集!」的なモノをやると、なぜか雑誌の売れ行きが鈍る。いや「鈍る」と断言すると問題あるかもしれないが、少なくともそういう傾向は存在すると経験上思う。車自体はナンバーワン級の売れ行きなのに、「センター」として扱うと、いきなり雑誌の売れ行きが鈍る。これはいったいどういうことなのだろうか。

様々な解釈が可能だが、筆者が考えるのは「ゴルフ=奥さん説」である。「奥さん」の代わりに「太陽」とか「空気(酸素)」とかを当てはめてもいいのだが、要するに「普段はあまり意識しないが、なくなってみて初めて、その偉大さがわかるもの」ということだ。

日本人男性は一般的に、自分の妻に対して冷淡である。いや冷淡ってこともないのだが、アメリカ人男性のように1日10回ぐらい「佐代子(←仮名)、愛してるよ」と言う人は少ない。それが遠因で夫の静夫(←仮名)は佐代子から「アタシのこと本当に愛してるの!?」とたまに詰め寄られ、その場はムニャムニャとごまかしつつ、内心「確かに、俺はこの女を“愛している”のだろうか?」と自問する。それが、日本人男性だ。いや断言するのもアレだが、たぶん、そうだ。

だがそんな静夫もいざ佐代子を失ってみれば、佐代子の素晴らしさ、佐代子を愛していたことに、否応なしに気づかされるだろう。それまではあまりにも自然に、まるで空気や太陽のように当たり前にそばにあったため、佐代子という存在の大切さに気づかなかったのだ。

派手な生活にはない「日々の滋味」を味わうべし

これと同様に、(そういったことはありえないが)フォルクスワーゲン ゴルフという車がいきなりこの世から消えてしまい、残った輸入車はやたら高級なものと、そのほかは何かと安手すぎる輸入車ばかりになった世の中を想像してみてほしい。……なんとも微妙な世の中ではないか。

代を重ねるごとに豪華になっていったゴルフだが、その魅力の本質は「上質な中庸」という点にある。それは長年連れ添った夫婦間にある静かな愛にも似た、素晴らしいものではあるが、「中庸」であるがゆえ、どうしても化粧の濃い愛人のような(?)派手な車の陰に隠れてしまう。「雑誌のグラビアでまで妻の顔を見たいとは思わない」という人間心理が、車雑誌の巻頭企画で「ゴルフ大特集!」的なモノをやると、なぜか雑誌の売れ行きが鈍る、のメカニズムである。

しかしここまで暗喩してきたとおり、歴代のVW ゴルフは本当に素晴らしい車だ。最新型が「249万円~」という戦略的な新車価格をとってきたことで、200万円超級の中古ゴルフは存在意義が若干低下するかもしれない。しかし総額100万円台で狙える旧型の好条件物件や、さらに古い世代の大切に扱われたワンオーナー車などは、いまだ十分以上の強烈な商品力を備えている。酸いも甘いもかみ分けた大人の男性に選んでいただきたい逸品なのだ、依然として。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
VW ゴルフとの「静かな愛の日々」を、今こそ体験してみては?


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE