マクラーレン MP4-12C|伊達セレクション
写真上手前側がマクラーレン MP4-12C。最高出力600psの3.6L V8ツインターボが圧倒的な直線スピードを生み出すだけでなく、ハンドリング面でも超絶といえる世界最新のスーパーカー。ちなみに奥に写っているのはフェラーリ 458イタリアで、こちらのハンドリングもUFO並みに超絶。が、写真下のフェラーリ F355のエンジンが奏でる快音にも、最新の上2車に負けず劣らずの魅力があることを再発見した。
フェラーリ F355ベルリネッタ|伊達セレクション
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中古のF355はマクラーレン MP4-12Cよりステキだった!?

過日、縁あってマクラーレン MP4-12Cに乗る機会があった。各方面で大絶賛されている英国のスーパーカーだ。乗ったといってもチョイ乗りさせていただいただけだが、そこで気づいたことがある。

我々「勤労系自動車愛好家」にとってマクラーレン MP4-12Cは恐るるに足らずである。

あれならば、(筆者個人にとっては)中古のフェラーリ F355のほうが断然魅力的だ。各方面がMP4-12Cを大絶賛しているからといって、それに惑わされる必要はないし、「今さら中古のF355とか360を狙う俺って…」などと卑下する必要も一切ない。

いやもちろん、チョイ乗りだけでMP4-12Cのすべてを見切ったなどと言うつもりはないし、またチョイ乗りであっても、そのすさまじさのようなものは十分以上に伝わる素晴らしいスーパーカーではあった。

しかし、こと「ビリビリ感」にかけては断然、中古のF355のほうが上だ。人により感じ方はそれぞれかもしれないが、少なくとも筆者はそう確信した。

「ビリビリ感」とは車にとって、特にスーパーカー/スポーツカーにとってはもっとも大切な要素である。

その車のことを考えただけで心の中にビリビリと電流のようなものが流れ、そして見てビリビリ、触ってビリビリ、乗って電流がスパークし、購入して絶頂に達する。そしてまた、「考えただけでビリビリ」という最初に戻る。……この終わりなき循環こそが、スーパーカー/スポーツカーという、基本的には買い物の足にも腹の足しにもならない存在を、あえて高い金出して買う本当の意義なのだ。

性能は言うまでもなくMP4-12Cが上だが

マクラーレン MP4-12Cにおいて決定的にビリビリ感が足りないと思ったのはエンジンだ。いや当然、素晴らしい性能を備えたエンジンであり、10年以上前のフェラーリ F355と最新のMP4-12Cがよ~いドンで加速競争をすれば、F355が大差で敗れるだろう。コーナリング勝負においても同様だ。

しかし、それが何だというのか。我々は誰かと競争をするためにスーパーカー/スポーツカーを買うのではなく、己の人生をビリビリさせるためにそれを買うのだ。異なる意見もあろうが、筆者はそう思っている。

そう考えたとき、フェラーリ愛好家として有名な清水草一氏の表現を借りるなら「オリンピックの男子陸上100m決勝のスタートラインに立ち、パンパカパーン! とファンファーレが鳴ったような興奮」を否が応でもおぼえるフェラーリ F355のV8エンジンの、世界でも類を見ない快感と芸術性は、「速い」とか「よく曲がる」とかいう以上の価値を持つのだ。

マクラーレン MP4-12Cを買えるほどの財を成した人の努力と経験は大いにリスペクトしたいし、またMP4-12Cという車自体を否定するつもりなどあろうはずもない。そうではなく、「F355に代表される手頃な(?)中古フェラーリには、それ固有の大いなる魅力があり、ときにそれは最新スーパーカーをも上回る。だから、自信と確信をもってそこに突き進んでほしい」ということだ。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
自信と誇りをもって中古フェラーリに突撃しよう!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE