ポルシェ911ターボ|伊達セレクション
写真上は空冷時代の名車、930型ポルシェ911ターボ。年式的に綿密なメンテナンスが必要であり、また911ターボは部品自体が高価ではある。が、下世話な話だがこういった「名車」はリセール価格もかなり高いので、トータルで見れば意外とどうにかなるものだ。それは写真下のフェラーリF355でもほぼ同様。リセール価格が恐ろしく高いため、普通の会社員がローンを組んでこれに乗っているケースは非常に多い。
フェラーリF355ベルリネッタ|伊達セレクション
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君よ、一生に一度はアレに乗れ!

「一生に一度は○○に乗る!」的な文言が輸入車雑誌の特集タイトルになることがしばしばある。これが「一生に一度はゴルフに乗る!」では企画にならず、やはり「○○」に入るべきはハードなスポーツカーやクラシカルな車、あるいは非常に値が張る車ということになるだろう。具体的にはフェラーリやポルシェ、タテ目のメルセデス、ランチアデルタHFインテグラーレ、ベントレー/ロールスなどがその代表例であろうか。とにかく、ゴルフでないことだけは確かだ。

さて、上に挙げたような「○○」に入るべき車に共通する特徴についてもう少し考えてみると、「つまりはリスキーな選択である」という一言に集約される。

カテゴリー1の「ハードなスポーツカー」はそもそも基本的にかなり高額であり、お金持ちはともかく、庶民がそれを無理して入手しようとすると、家計および人生が破綻する恐れがある。またカテゴリー2の「クラシカルな車」は(本格的なクラシックカーは別として)さほど高額ではないが、クラシカルゆえの故障頻発により、これまた家計が破綻する危険性を秘めている。カテゴリー3の「非常に値が張る車」については言うまでもないだろう。

ということで「やっぱボクはゴルフだな、うむ」で話を締められればいいのだが、そう簡単にはいかないのが車愛好家の性でもある。ポイントは「一生に一度は」という部分だ。

このままリスクを取らずに車を降りるつもり?

このライトな連載で重い話をするつもりはないが、「一生に一度は」ということは、わたしを含め、すべての人の人生は「いつか終わる」ということである。そして終わりが近づいたとき、「嗚呼、我が車人生に(おおむね)悔いなし!」と思えるかどうかは、車愛好家にとってはかなり重要なポイントだ。

「や、俺はそこは別にどうでもいいや」と思う人も多いだろう。それはそれで正しい。だが、もしも「うむ、確かに今の延長線上では死ぬほど後悔するかもな……」とお思いになるならば、悪いことは言わない、一度はリスクを取ってみるべきだ。

カーセンサーEDGEnetをご覧になっているのは、主には「大人」な方であるだろう。だから、わたしがクドクド言わずとも「リターンは、リスクを取った先にしかない」ということを十分ご存じのはずだ。で、さすがに「普通のサラリーマンがブガッティヴェイロンを買う」というのはリスク取り過ぎだが、中古のフェラーリやポルシェ、あるいはカテゴリー2のクラシカル系程度であれば、適正なリスクでしかない。世の中にはブルジョアゆえにそれらに乗っている人も多いが、ごくフツーの会社員がそれらに乗っているケースも想像以上に多いもの。つまりは「死ぬほどリスキーではない」ということだ。

しかしそれでいて、それを人生のなかで手にしたときのリターンは(愛好家にとっては)ひたすらデカい。リターンの量は、この出版不況にあっても、世間的には「ヘンな車」とされる車ばかりを取り上げるマニアックな車雑誌が今なお存在し、そして町の「ヘンな車を扱う車屋さん」も繁盛し続けていることで証明できるだろう。一度それを手にした者の多くは「なるほど! これはもっと早く買っておけば良かった!」と納得するがゆえの繁盛である。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
「アレに乗っておけば…」と最後に後悔する車人生だけはやめませんか?


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE