▲筆者が中古車千里眼(?)を駆使して1300km彼方の販売店から見つけ出した96年式マツダ ロードスター。納車後あちこち走り回ってみたが、絶好調というほかないコンディションであることが確認できた ▲筆者が中古車千里眼(?)を駆使して1300km彼方の販売店から見つけ出した96年式マツダ ロードスター。納車後あちこち走り回ってみたが、絶好調というほかないコンディションであることが確認できた

絶対に欲しい1台が遠方にしかなかったら、あなたはあきらめますか?

自分にとってかなりドンズバ(どんぴしゃ)な1台をカーセンサーnetで見つけたけど、それが自宅から数百km離れた販売店で……っていうこと、たまにあると思います。そんなときは「遠方だからあきらめる」というのが普通かもしれませんが、もしも「遠方からでも中古車のコンディションを正確に見極められるテク」みたいなものがあったら、かなり便利だと思いませんか? そうすればエリアにこだわらず「コレだ!」と思う1台を買えるのですから。

「そんなテクなんて存在しないでしょ?」と思うかもしれませんが、実はあるんです。いや「100%正確に見極められるテク」と言っては嘘になりますが、「かなり高い正答率が期待できる技術」は確実に存在しているのです。

実際、筆者こと東京在住の中古車評論家・伊達は過去、そのテクを駆使して大阪と広島の販売店から中古車を購入したことがあります。どちらもナイスな個体で、そのうち1台は今もフツーに乗っています(ちなみに車種は先代ルノー カングー)。そしてつい先日は3台目の遠方系物件として、東京から約1300km離れた宮崎県で気になる物件を見つけ、最終的に現地に行って買ってきました。当然ながら(?)素晴らしいコンディションの1台でした。

ここではそんなわたくしが確立した「テク」を紹介するとともに、「遠方の販売店から中古車を買った場合のお金のリアル」をお伝えしたいと思います。

▲約1年前、広島県の販売店から購入した08年式ルノー カングーが東京の筆者自宅前まで陸送されてきた当日の模様。こちらのカングーは今も最高の道具グルマとして大活躍してくれている ▲約1年前、広島県の販売店から購入した08年式ルノー カングーが東京の筆者自宅前まで陸送されてきた当日の模様。こちらのカングーは今も最高の道具グルマとして大活躍してくれている

この順序で情報を精査すれば、あなたも今日から「中古車千里眼」!?

ではさっそくいきましょう。先日、筆者が3台目の遠方系として購入したのは96年式マツダ ロードスター。いわゆるNA、初代の「ユーノス ロードスター」ですね。走行距離9.8万kmのVスペシャルというグレードで、車両本体価格は98.3万円。支払総額は109.7万円とのことでした。

筆者がこれを探していた時期は全国で合計177台もの初代ロードスターが掲載されていましたが、そこからどうやって物件を絞り込み、最終的にこの「アタリの1台」にまで絞り込んでいったのか? その一部始終を以下、披露します。

1:「平均価格以上の物件」に絞る
その車種・年式の平均価格より安い物件が必ずしも悪いわけではありません。中には「メチャ安いのに妙に状態がイイ!」という中古車もあります。しかしそういった掘り出し物は、何軒もの販売店を回る中でたまたま巡り合うことが多いものです。近場の販売店なら見て回ればいいだけの話ですが、遠方の場合は「旅費を使って見に行きました。ダメでした」では悲しすぎます。そこで筆者は遠方系での購入に限り、「平均的な価格か、それ以上の価格」だけを検索対象にしています。

2:「修復歴なし」に絞る
これも平均価格と同じで「修復歴ありだから絶対にダメ」というわけでもないのですが、仕切り直しは避けたい遠方系の場合は、安全策として筆者は除外することにしています。

3:「走行距離」の下限は設定しない
新車から3年落ちや5年落ちぐらいの中古車を狙うなら、なるべく走行距離少なめの物件を選んだ方が、新車時により近いコンディションを味わえると思います。しかし今回筆者が買ったような20年落ちぐらいの旧車や、そこまでいかなくても10年落ち以上ぐらいの物件では、走行距離の多寡だけを物差しにするのは愚の骨頂です。低年式車の場合は、使用も整備もされずの放置プレイな4万km車より、「しっかり乗られてこまめに整備されてきた10万km車」の方が断然イイなんてことも日常茶飯事。今回の筆者は走行距離よりも「整備履歴」を重視しました。

▲筆者が購入したロードスターが、カーセンサーnetに掲載されていたときの画面キャプチャー。車両価格は同モデル・同年式の中では高めで、走行距離も9.8万kmと決して少なくはない ▲筆者が購入したロードスターが、カーセンサーnetに掲載されていたときの画面キャプチャー。車両価格は同モデル・同年式の中では高めで、走行距離も9.8万kmと決して少なくはない

4:写真点数とその内容、キャプションの質で販売店の「熱意」をはかる
ここから先はいよいよ個別の物件情報について。まずポイントとなるのがその物件の「写真点数」と、写真の質です。一般的にいって熱意のあるお店というのは、ユーザーにアピールするため極力多くの写真を掲載するものですので、まずはそこ(写真の点数)をチェックします。写真点数が少ない=ダメということもありませんが、遠方系の場合はなるべく安全策をとりたいため、筆者の場合は写真点数が極度に少ない物件は除外します。

次は「写真の質」です。ピンぼけで、ほとんど似たような画角の写真が何枚も載っているだけでは、本当の意味で「写真点数が多い」とはいえません。ユーザーが気になりそうな箇所を、なるべく多く、写真のプロではないので美しくなくてもOKですが(逆に美しすぎる写真は細部がわかりません)、なるべく見えやすいように撮影している販売店は、ユーザー心理をよく理解しているお店、つまり「自分の商売に熱意と創意工夫をもって取り組んでいるお店」だと推測できます。また細部をよ~く見せているのは、自社商品のクオリティに自信があるからなのかもしれません。

お次はキャプション、各写真の下に付いている説明文です。筆者の経験によれば、キャプションの質が高いお店が販売する中古車は「アタリ」である可能性が高いです(もちろん『可能性』であり、絶対ではありません)。キャプションの質が高いというのは、各写真について具体的なことが個別にこまごまと書かれているということです。

「何を当たり前のことを」と思うかもしれませんが、キャプションをしっかり書くというのはけっこう大変なんです。忙しい業務の中、単に書くだけでも疲れますし、そもそも「書くべきことが何もない(売りとなるポイントがない)」みたいな個体もありますしね。空欄にしたり、全キャプションをコピペで済ませたくもなります。その気持はよくわかりますので、キャプションの質が低い=中古車の質も低いと決めつけることはできません。

しかし逆にいえば、キャプションの質が高い場合はそこに「何か」があるはずなんです。お店の「熱意」かもしれませんし、「商売上手なポイント」かもしれませんし、「この個体の素晴らしさをぜひ多くの人に知ってほしい!!!」みたいなアツい思いかもしれません。そのどれかはわかりませんが、中古車に限らずモノというのはそういった熱意やアツい思い、あるいは商売のツボみたいなものを有している人や店から買った方がいいことは、あなたもよくご存じでしょう。

ちなみに筆者が今回購入した96年式初代マツダ ロードスターが、カーセンサーnetにまだ情報として掲載されていたときの写真とキャプションを下に掲載しておきます(※全部ではなく一部写真の抜粋です)。それを見ていただければ、わたしが言っていることをご理解いただけるかと思います。

▲このような画像とキャプションがびっしり。ちなみに「ブッシュ」というのは、サスペンションアームの可動部などに付いているゴムや樹脂の緩衝材で、古くなると必ず要交換となる ▲このような画像とキャプションがびっしり。ちなみに「ブッシュ」というのは、サスペンションアームの可動部などに付いているゴムや樹脂の緩衝材で、古くなると必ず要交換となる
▲交換しておいてほしい部品が交換されており、その状態がわかる写真があり、そして気になる「アライメント」についても契約後どうなるかが具体的に説明されている ▲交換しておいてほしい部品が交換されており、その状態がわかる写真があり、そして気になる「アライメント」についても契約後どうなるかが具体的に説明されている
▲これもありがたい新品バッテリー。その写真とキャプションもわかりやすい ▲これもありがたい新品バッテリー。その写真とキャプションもわかりやすい
▲いちばん気になるエンジンルームも細部が見やすい写真となっていて、気になる箇所の「対策」についても具体的な記載がある ▲いちばん気になるエンジンルームも細部が見やすい写真となっていて、気になる箇所の「対策」についても具体的な記載がある
▲「雨漏りもございません」と書くだけでなく、その証拠となる箇所をしっかり見せている ▲「雨漏りもございません」と書くだけでなく、その証拠となる箇所をしっかり見せている

最終的には一度電話を入れて、相手の「声」を聴いてみる

で、まだまだ「奥義」は続きます。

5:写真で内外装のコンディションを推測する
最初は大量にヒットした物件情報も、ここまで進めばかなり淘汰されているでしょう。そうしたら後はゆっくりと各部の写真を見て、内外装やエンジンルームなどのコンディションを推測してください。写真ですべてを知ることはできませんが、じっくり見ればなんとなくの見当はつきます。

▲筆者が購入した初代ロードスターの運転席側シート。それなりに黒ずんでいたり使用感があったりもするが、そういった部分は隠すのではなくちゃんと見せてもらった方が逆に安心できるというか、これまでの使われ方みたいなものが推測できてありがたいものだ ▲筆者が購入した初代ロードスターの運転席側シート。それなりに黒ずんでいたり使用感があったりもするが、そういった部分は隠すのではなくちゃんと見せてもらった方が逆に安心できるというか、これまでの使われ方みたいなものが推測できてありがたいものだ


6:カーセンサーnetの「口コミ」を参考にする
5の写真じっくり作戦でさらに淘汰が進み、もう3台ぐらいしか残ってないかもしれませんね。そうしたらその3台を売っている販売店の「販売店情報」のところにある「口コミ」もチェックしてみます。口コミ=絶対正しいとも言いきれませんが、参考にはなるはずです。ちなみに筆者がロードスターを購入した宮崎県の「松元エンジニアリング」さんは口コミ件数は5件と、件数的にはさほど多くはありませんでしたが、一つひとつのコメントから「買った人のかなり高い満足感」「愛」みたいなものが強く感じられました。

▲筆者がこの物件を検討していた時点の松元エンジニアリングの口コミ。それぞれの口コミをじっくり読んでみることで、お店のユーザーに対する「姿勢」のようなものがおぼろげながら伝わってくる ▲筆者がこの物件を検討していた時点の松元エンジニアリングの口コミ。それぞれの口コミをじっくり読んでみることで、お店のユーザーに対する「姿勢」のようなものがおぼろげながら伝わってくる

7:社長または担当セールスに電凸する
ここまでくればもうかなり絞りこまれているでしょう。そしてカーセンサーnetの問い合わせフォームを経由して何店かとは直接やりとりをしていて、追加の画像なども送信してもらっているかもしれません。で、最終的に「たぶんコレだ!」と思う1台が見つかったら、最後は「電凸作戦」です。もちろん電凸といっても相手が迷惑する時間帯に失礼な電話攻勢をするわけではなく、常識的な時間帯に問い合わせの電話を入れてみるのです。

とはいえこれまでの十分な絞り込み作業により、その物件に対して聞きたいことなどもはやゼロですので、電話の本当の目的は問い合わせではありません。その販売店の社長や担当セールス氏の「声」が聴きたいだけなのです。

もちろん、電話を使ったオレオレ詐欺もある世の中ですから、電話で相手の肉声を聴いたからといって相手のすべてがわかるわけではありません。でも、Eメールだけのやりとりと比べればかなり多くの「情報」を、人間の声からは収集することができます。自信を持ってまっとうな商売をしてる人なのか? なんか知らんけど焦ってる感じの人なのか? テキトーっぽい感じか? 地方エリアによくいらっしゃる「マジメを絵に描いたような人物」って感じなのか? ……当然ですが、電話でこれらすべてを断定することはできません。でも、なんとなくの推理はしてみようじゃないですか。

ちなみに例のロードスターを買った松元エンジニアリングの社長さんは、電話では「マジメを絵に描いたような人物」の典型だと筆者には感じられました。そのため、筆者は旅費を使ってでも東京から宮崎県まで実車を見に行く決意を固めました。

▲ということでいざ、飛行機で宮崎へ実車確認に!(マイレージ使ったので0円ですが!) ▲ということでいざ、飛行機で宮崎へ実車確認に!(マイレージ使ったので0円ですが!)

もちろん、そんな筆者の見立ては間違っていて、もしかしたら松元さんは「いい人丸出しなふりをした大悪党」なのかもしれません。ただ、これだけのふるいにかけたうえで残ったお店ですから、はるばる遠くまで行ってみる価値は絶対にあるはずなのです。

このような思考の流れを経て、筆者は全国に散らばる177台の初代ロードスターの中から「たぶんコレ!」という1台にまで絞り込み、最終的には(自宅から見ると)遠方である宮崎県まで実車を見に行きました。その実車は果たしてどんなコンディションだったのか? そして遠方から自宅まで納車してもらうにはどのぐらいの費用がかかるのか? ……長くなりましたので、そのあたりについてはまた次回「後編」という形でお届けしたいと思います。

後編は3月4日公開予定。お楽しみに!

text&photo/伊達軍曹