▲グレードは5人乗りの「3.0」、3.0をベースにより上級装備になった「3.0G」、そして6人乗りの「3.0L」の計3グレードでデビュー ▲グレードは5人乗りの「3.0」、3.0をベースにより上級装備になった「3.0G」、そして6人乗りの「3.0L」の計3グレードでデビュー

アメリカ生まれのフルサイズFFセダンはかなりの個性派

今回注目したのは、「最高級FFセダン」という触れ込みで日本に導入されたトヨタ プロナードです。日本導入と記しているのは、北米生産モデルの“逆輸入車”だったからです。ゆとりあるふくよかなボディサイズ、ほどほどにパワフルな3Lエンジンを搭載した、アメリカンなセダンです。

プロナードは日本仕様名で、北米では「アバロン」という名前でした。初代アバロンは日本でもアバロンとして販売されましたが、2代目アバロンはプロナードとして日本に登場したんです。

前述のとおり、プロナードは高級感を謳ったわりに、日本市場ではさほど高級さを感じさせませんでした。デザインの問題なのか、質感の問題なのか……。高級感の演出って実は難しいんですよね。それが短命に終わった理由なのかもしれません。

とはいえ、どのグレードにもサイドエアバッグ、DVDナビ(当時は最先端)、EBD(電子制御力配分デバイス)、VSC(車体安定制御デバイス)などを標準採用し、本革シートや高級なJBLスピーカーがオプション設定されるなど、装備は充実していました。価格も、新車時で315~380万円と安くありませんでした。

プロナードのボディサイズは全長4895mm×全幅1820mm×全高1460mm。大きいといえば大きいんですが、日本の道路でも苦になるほどではありません。FFならではのレイアウトで室内長は当時のセルシオを凌ぐほどで、リアシートで足を組んでもスペースがあるほどでした。トランクスペースも広く、大型のスーツケースを4つ飲み込むほどです。

▲ホイールベースは意外に短く、前後ともにオーバーハングが長め。でも車両重量は1600kg未満で、思いのほか軽快に走ります ▲ホイールベースは意外に短く、前後ともにオーバーハングが長め。でも車両重量は1600kg未満で、思いのほか軽快に走ります

カーセンサー掲載物件の平均価格/平均走行距離は約41万円/9万7000km(2015年10月29日現在)。価格帯もおおむね総額30万円程~90万円未満、とこなれてきています。もっとも、同時期のトヨタ セルシオも似たような価格帯で探せることを鑑みれば、絶対的な割安感には若干乏しいかもしれません。

ただ、今見るとプロナードの異質な雰囲気や、6人乗り仕様が設定されていることなどが気になって仕方がありません。最近では、ベンチシートを持つ6人乗り仕様は珍しい存在ですし、意味もなくフロントに3名乗車したくなります。カップルなら、寄り添って座るのもイイでしょう。そういう意味でプロナードは“フツー”のセダンながら“非日常”を味わえる車、とも言えます。

▲一筆描きをしたようなダッシュボードはモダン。写真は5名乗車仕様ですが、注目はベンチシートをもつ6名乗車仕様です ▲一筆描きをしたようなダッシュボードはモダン。写真は5名乗車仕様ですが、注目はベンチシートをもつ6名乗車仕様です

今となっては、30万円程から狙えるフレンドリーさと、(人によっては)カッコいい車とは呼べない雰囲気に“ハズし”の美学すら漂っているように感じられます。室内の広さやトランクの積載性、使い勝手の良さ、セダンとしての実力は第一線級でしょう。

さらに、トヨタクオリティのアメ車っぽさも、魅力のひとつ。「ベンチシートをもつセダン」という発想は、日本ではなかなか出ないアイデアだと思います。

オススメはやはり6人乗りの「3.0L」ですが、そうでないモデルでも“移動の足”として満足度が高い1台です。原稿執筆時点で22台しか掲載されていない事実を踏まえると、意外と差別化も図れそうです。

text/古賀貴司(自動車王国)