▲値上がり必須な三菱 ランサーエボリューションは“日本の宝”でしょう ▲値上がり必須な三菱 ランサーエボリューションは“日本の宝”でしょう

絶版となったことでランサーエボリューションの中古車相場は高止まりする?

三菱 ランサーエボリューション(以下、ランエボ)がついに絶版となりました。ランエボはかつてWRCで活躍した日本を代表するスポーツカーで、海外で「EVO(イーヴォと英語では呼ばれています)」といえば、イギリスの老舗自動車雑誌ではなく、ランエボを指す言葉となっているほどです。

レースでの勝利は自動車メーカーにとって絶好のプロモーションの場となります。三菱は1962年、マカオグランプリを皮切りに世界のレースシーンにおいて常連となっていました。中でも輝かしい歴史を築き上げたのがランエボです。1996年から1999年までランエボを駆るトミ・マキネンは前人未到の4年連続ドライバーズタイトルを獲得し、1998年には三菱にとって初めてとなるマニュファクチュアラーズタイトルをもたらしました。

初代ランエボは1992年にWRCのホモロゲーション(規定)を満たすために市販されました。今よりも車への関心が高かったから、とは言いたくありませんが……テレビCMの類は一切行わず2500台の限定車が3日で完売したんです。

そんなランエボも前述のとおり絶版となりました。いずれはアウディ クワトロ、ランチア デルタインテグラーレEVOといった車のように、ランエボの中古車相場も高止まりとなること間違いありません。

▲初代ランエボのインパネです。ベース車のランサーとさほど変わらないところが“能ある鷹”です ▲初代ランエボのインパネです。ベース車のランサーとさほど変わらないところが“能ある鷹”です
▲初代ランエボのシートです。スポーティなバケットタイプですが、実用性もあります ▲初代ランエボのシートです。スポーティなバケットタイプですが、実用性もあります

手が届く今のうちに狙っておきたい“ベリーベリージャパニーズカー”

原稿執筆時点(2015年8月2日現在)でカーセンサーネットに掲載されている1世代目(I~III)は12台、2世代目(IV~VI)は59台、3世代目(VII~IX)は155台、4世代目(X)は132台。平均車両価格を見てみると、1世代目が約142万円、2世代目が約84万円、3世代目が約161万円、4世代目が約248万円となっています。

いずれの世代も直近3ヵ月の中古車相場は上昇傾向にあり、特に3世代目が顕著です。なにせ5月上旬は約134万円でしたから約27万円も値上がりしています。逆に4世代目の値上がりはゆるやかで、約5万円ほど平均車両価格が上昇しています。ただ、これは単純に平均走行距離が約4万3000kmから約4万kmへと約3000kmほど下落したことが影響しているのかもしれません。

昨今、国産、輸入車問わず、スペシャリティ(特に絶版となったスポーツカー)はネオクラシックになるとグングン相場が上昇しがちです。需要と供給、ノスタルジー、差別化などが要因だと思われます。ランエボに関していえば、もはや“割安感”では車選びがしにくくなっています。

純粋に平均車両価格だけを見れば2世代目がお買い得なのですが、もはや一般的な中古車の割安感はありません。そういう意味では、ランエボに思い入れがある方は、好きなモデルを狙うのがいちばんだと思います。ランエボにさほど興味はないけれども、ちょっと気になる、という方は割安感うんぬんではなく、予算の許すものを狙えばいいでしょう。

▲こちらは第2世代のランエボで投入されたVIベースのトミ・マキネン仕様 ▲こちらは第2世代のランエボで投入されたVIベースのトミ・マキネン仕様
▲第3世代のエボVIIには「GT-A」と呼ばれる初のATモデルを設定。消費者のすそ野拡大が図られました ▲第3世代のエボVIIには「GT-A」と呼ばれる初のATモデルを設定。消費者のすそ野拡大が図られました
▲2015年4月10日に発表された特別仕様車「ランサーエボリューション ファイナルエディション」。このモデルをもってランエボの歴史に幕が下りました ▲2015年4月10日に発表された特別仕様車「ランサーエボリューション ファイナルエディション」。このモデルをもってランエボの歴史に幕が下りました

そして投資目的という意味ではなく、将来的に値上がりして手が届きにくくなると“予測される”のは初代と最終型です。個人的にはまだ絶版間もなく、新車時登録からさほど時間の経っていない最終型を狙います。いずれは日産 スカイラインGT-R(R34型)のように評価される日が来ると思います。「ああ、ちょっと懐かしいし乗りたい」と思った日にはプレミアム価格で取引されて手が出しにくい、なーんてことが容易に想像できます。

ランエボは時代、時代におけるハイテク満載で、外国人にとっては“ベリーベリージャパニーズ”なようです。日本人が気づきにくい「日本らしさ」とはおもてなしもしかりですが、このハイテク武装にあるんです。まだ手が出せるうちに狙っておきたい車です。

text/古賀貴司(自動車王国) photo/三菱自動車、奥隅圭之